「――様!」
「…………」
「高志様!!」
「ん? おお、紅葉か。どうした?」
「高志様こそどうされたのですか? 考え事をされるとのことでしたが、ちょっと長くて心配しましたよ?」
「ああ、すまない。考えることが多くてな……」
俺は素直に謝る。
そんな俺の様子を見ながら、流華と桔梗が会話に加わる。
「それで、兄貴? 俺たちの目指す方針だけどさ」
「……私、うずうずしてる。技量は鍛錬で伸ばすものだけど、高志くんの役に立つことの方が大事……。早く新たな力が欲しい……」
「ああ、そうだったな」
俺は頷く。
加護を付与された彼女たちのステータスを操作し、スキルを取得して戦力アップを図る。
それが高橋家の影響力や安定度を高めることに直結するのだから、決して手を抜いてはいけない。
「3人とも、今の得意分野を伸ばしていく方向で良いのか?」
「はい。私は『植物妖術』を伸ばして……。あとは、何らかの内助の功でお役に立ちたいと思います」
「俺は諜報活動系の能力だな! 怪しい奴らは兄貴に近づけさせないし、逆に怪しい奴らを調査してやるぜ!!」
「……私は『剣術』だね。高志くんは強いけど……ずっと気を張っているわけにはいかないでしょ? 強くなった私が傍にいることで、少しでも負担を和らげてあげたい……」
紅葉たちが言う。
「そうか……分かった。得意分野を集中的に伸ばすのは良いことだ。いろんなスキルに手を出すと器用貧乏になってしまうからな」
俺は告げる。
器用貧乏……つまりは俺のことだ。
特定分野の技能に特化すれば、より高みに登れる。
しかし、俺は様々なスキルを満遍なく伸ばした結果、器用貧乏な状態になってしまった。
記憶を失う前の俺は、スキルの強化方針をどのように考えていたのだろう?
今となってはよく分からない。
ステータス画面に表示されている『スキルリセット』の存在を前提にして気軽に強化してきたのかもしれない。
だが、それも今は『削除処理中』だ。
スキルをリセットして再振り分けする……という行為はできなくなってしまった。
何らかのペナルティか、あるいは代償か。
代わりに『ハーレム・スタイル』という謎のスキルが『付与処理中』となっている。
ハーレム・スタイル……一体、どんな能力なのだろう?
「高志様?」
「ああ、悪い。また少し考え事をな」
紅葉に話しかけられ、俺は我に返る。
……いけない、いけない。
ハーレム・スタイルについては保留だ。
考え事ばかりしていては、話が進まない。
それよりも今は彼女たちの強化方針について話を進めよう。
誰からでもいいが……やはりここは、古株の紅葉からだな。
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