【コミカライズ】無職だけど転移先の異世界で加護付与スキルを駆使して30年後の世界滅亡の危機に立ち向かう

~目指せ! 俺だけの最強ハーレムパーティ~
猪木洋平@【コミカライズ連載中】
猪木洋平@【コミカライズ連載中】

937話 聖女からは逃げられない

公開日時: 2023年2月19日(日) 12:03
文字数:2,291

 俺は『フィナーレ・フラッシュ』をぶっ放した。

 聖女リッカは大ダメージを受けている。


「どうした? もう終わりか?」


「う、うう……」


「はっはっは! 口ほどにもないな! 聖女だかなんだかしらんが、所詮は子どもだ!!」


「く、くそぉ……です……」


「この俺、タカシ=ハイブリッジこそが勝者だ! Bランク冒険者にして、サザリアナ王国の男爵家の当主でもある! 俺に楯突いたのが間違いだったのだ! ふはははは!!!」


 俺は高笑いをする。

 これで勝利確定だ。

 やはりチートを持っている俺に勝てる存在など、世界のどこにもいない。


「…………」


「……ん?」


 すると突然、リッカが俯いて沈黙してしまった。

 なんだ……?

 もしかして、怖すぎて泣いちゃったのか……?


「おい、なんとか言ったら――」


「なんちゃって、です。ふふっ」


「!?」


 思わず絶句する。

 リッカの顔が不気味に歪んでいたからだ。


「ふふふっ、あはははっ!! あーっはっはっは!!!」


「な、なんだ!?」


「すごいです! すごいです! すごいです! これがタカシ=ハイブリッジの実力ですか! 素晴らしいです! あはっ、あははっ!!」


 リッカが狂ったように笑っている。

 俺は彼女から距離を取る。


「お前、一体何がおかしいんだよ……」


「あはっ、あははっ! 君がおかしくさせたんですよ! 僕様ちゃんをここまで追い詰めた人間は、これまで一人もいなかったです! 君は間違いなく強い! だからこそ、ここで敗北の味を覚えておくといいです!!」


「なにを言ってるんだお前は……。その傷でまだ戦うつもりか?」


「――【リペア・ライフ】」


 リッカが魔法を唱える。

 彼女の身体が淡い光に包まれたかと思うと、その身体にあった火傷が一瞬のうちに完治する。


「なっ!?」


「僕様ちゃんは聖女ですよ? 当然、上級の治療魔法も使えるです」


「……ちっ」


 お互いに治療魔法を使えるから、互角か。

 これは持久戦になる。


 ――いいや、違う。

 俺は今の『フィナーレ・フラッシュ』でかなりのMP・闘気・聖気を消費してしまった。

 対して、リッカの消耗度はそれほどでもなさそうだ。

 これはマズイかもしれない……。


「くっ……。まだだ! 【エターナル・タカシ・フィーバー】!!」


 俺は再度魔法を発動させる。

 フレンダからはボツを喰らったが、今はなりふり構っていられない。

 リッカを倒せる可能性があるのはこの魔法だけだ!


「【ホーリー・クロス】!!」


 リッカが聖気を十字架状に変えて飛ばしてくる。

 それは不十分な威力だった俺の魔法を切り裂き、そのまま俺へと着弾した。


「ぐあああっ!!」


「タカシ様!!」


「タカシ!!」


 俺は膝をつく。

 痛い……。

 苦しい……。


 これほどのダメージを負ったのはいつぶりだろう?

 チートにあぐらをかいて、自己研鑽を怠った結果がこれか……。

 先ほど発動しておいた『ハイ・リジェネレーション』によって何とか回復はしているが……。


「本当にタフな男ですね。戦闘不能に追い込むには、念入りに聖なる力を叩き込まなければならないようです」


 リッカがゆっくりと近づいてくる。

 俺は必死に立ち上がろうとするが、上手く力が入らない。

 くそっ、なんでだよ……。

 なんでこんなに弱いんだ、俺は……!


「さぁ、とどめです。気を楽にするです」


「くそっ……」


「タカシ様! お逃げください!」


「相手が悪すぎるよ! 逃げて!!」


 ミティとアイリスの声が聞こえる。

 逃げる?

 彼女たちを置いて逃げるわけにはいかない。


 ……いや、待てよ?

 リッカの口ぶりでは、最も重視しているのはミティやアイリスではなく、俺だ。

 ならば、逃亡も一つの選択と言えるのではないか?

 俺は考える。

 そして結論を出す。


「ふ、ふはは! あばよっ!!」


 俺は重力魔法『レビテーション』を使い、その場から離れる。


「なっ!?」


 驚くリッカ。

 俺は全力で空へ舞い上がる。

 そして、その場から高速飛翔で逃げ出した。


「ふん……。パワーや耐久力がリッカなら、スピードは俺だ! 一生かけても追いつけまい!!」


 俺は振り返らずに前だけを見て飛ぶ。

 背後から追いかけてくる気配はない。


 勝った……!

 逃げるが勝ちというやつだ。

 置いてきたミティやアイリスとは、後で慎重に合流すればいい。

 こうして、俺はリッカとの勝負に勝利することができ――


「おやおや。また会ったですね、タカシ=ハイブリッジ君」


「なっ……!」


 俺の目の前に、リッカがいた。

 彼女は宙に浮かびながら、悠然と微笑んでいる。


「ど、どうして……」


「知らなかったです? 聖女からは逃げられないです」


「……」


 どこの大魔王だよ。

 聖女どころかラスボスじゃねぇか。


「ふふふっ。君がどこに行こうが関係ないです。僕様ちゃんにかかれば追いつくことなど造作もないことです。むしろ、この程度で僕様ちゃんを出し抜けると思っていたなんて、ちょっと甘く見過ぎではないです?」


「うっ……」


 聖ミリアリア統一教会の聖女リッカ。

 確かに舐めていたかもしれない。

 そこらのBランクやCランクの冒険者などとは比較にすらならない。

 Aランク冒険者以上の力を持っていると想定しておくべきだった。

 しかし、まさか空を飛ぶ俺に追いついてくるとは。


「仲間を置いていくなんて、君はひどい奴です。ほら、さっきの場所に戻るですよ」


「ぐおっ!?」


 俺は彼女に殴り飛ばさる。

 そのまま地面に叩きつけられ、ゴロゴロと転がった。


「タカシ様!?」


「タカシ!?」


 ミティとアイリスの声が聞こえる。

 リッカの言葉通り、さっきの場所に戻ってきたようだ。

 仕切り直しだが……。

 もう打つ手がない。


 ――いや、まだだ。

 俺には『ハイ・リジェネレーション』を始めとする治療魔法があるし、土魔法『絶対無敵装甲』を始めとした防御手段も持っている。

 こうなれば、粘るだけ粘るしかない……。

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