【コミカライズ】無職だけど転移先の異世界で加護付与スキルを駆使して30年後の世界滅亡の危機に立ち向かう

~目指せ! 俺だけの最強ハーレムパーティ~
猪木洋平@【コミカライズ連載中】
猪木洋平@【コミカライズ連載中】

935話 纏装術

公開日時: 2023年2月17日(金) 12:07
文字数:2,213

 俺はリッカと戦闘中だ。

 こちらの火魔法や水魔法は、なかなか相手に通じない。

 しかし逆に、向こうの攻撃も俺にとってさほど痛手にはなっていない。

 治療魔法『リジェネレーション』や土魔法『硬化』で対処できている。


 このまま長期戦になるかとも思ったが、リッカは新たな技を繰り出した。

 確か『神罰執行・神の雷鳴』とか言っていたか。

 空がピカッと光り、直後ゴロゴロと音が鳴り響いている。


「天候操作……だと? お前、一体どこまで……」


「これで終わりじゃないです。――【神霊纏装・アーティルドラ】」


「うおっ!」


 リッカが詠唱を終えると同時に、彼女の身体から眩い光が溢れ出す。

 あまりの輝きに目がくらむ。

 しばらくして視力が回復した時には、リッカの姿に変化が生じていた。


「これが僕様ちゃんの奥の手です。さぁ、ここからが本番です」


「……」


 リッカが雷光のようなオーラを纏っている。

 これはモニカの『術式纏装・雷天霹靂』、あるいはネルエラ陛下の特殊武技にも似た雰囲気を感じる。

 おそらく、彼女特有の武技なのだろう。

 ……雷系統の使い手、多くね?


「行くです!」


「くっ……」


 リッカの動きが速い。

 目で追えないほどではないが、先程までのスピードとは違う。

 明らかにレベルアップしている。


「――【ファイアー・レーザー】!」


 俺は炎の光線をリッカに向けて放つ。

 リッカはその攻撃に対して、拳を振り上げた。


「――【神の雷槌】」


「なにっ!?」


 リッカの拳に、雷の塊のようなものが出現する。

 それが俺の放ったファイアー・レーザーを飲み込みながら、俺へと向かってくる。

 俺は咄嵯に土の壁を作って防御を試みた。


「無駄です」


「くっ!」


 壁は一瞬にして破壊され、俺は衝撃を受けて吹っ飛ぶ。

 背中から地面に叩きつけられた。


「がはっ!?」


 息ができない。

 肺の中の空気が一気に押し出され、呼吸困難に陥ってしまった。

 視界の端に、アイリスとミティが映る。

 彼女たちが俺の名を呼んでいる気がするが、上手く聞き取れない。

 リッカがゆっくりと近づいてきた。


「君はよくやったです。でも、僕様ちゃんの勝ちです」


「くそっ……。Bランク冒険者にして男爵であるこの俺が……」


「ふん。やはり、そのことで自惚れていたですか」


「なんだと?」


「多少名を上げたところで……ここは世界最弱の『新大陸』です。君は井の中の蛙に過ぎないということです」


「……」


 確かに、俺は調子に乗っていたかもしれない。

 加護の対象者を増やすことに重点を置き、自身の鍛錬が疎かになっていた。


「新大陸の人は『纏装術』を使えないです。だから弱い。僕様ちゃんに勝てるはずがないです」


「……そうかな? 俺はまだ負けたわけじゃない」


「強がりはやめるです。神の力の一端を身に宿した僕様ちゃんに、君はもう敵わないです」


「やってみないとわからない」


 俺は立ち上がり、再びリッカに向かっていく。


「しつこいです! ――【神の雷槌】!」


「ぬおぉおおおっ!!」


 俺は両手に魔力を込めて、リッカの攻撃を防ぐ。

 そしてそのまま、武技を発動した。


「【術式纏装・獄炎滅心】!!」


「なにっ!?」


 リッカが驚いた声を出す。

 俺はさらに魔力を練り上げ、全身に纏うようにイメージする。


「そんなバカな……。なぜ、どうして……。こんなこと、あり得ないです」


「俺の纏装術はどうだ? 中央大陸で開発された最新技術……。俺が使えるとは思っていなかったか?」


「まさか『纏装術』の使い手が既にいたとは……」


「そうだ。まだこの大陸には十分に浸透していないことは事実。しかし、使い手がまったくのゼロというわけではない」


 ミリオンズ内だけで言っても、俺、モニカ、ユナ、マリアが使える。

 水魔法の名門ラスターレイン伯爵家においても、当主のリールバッハが素で使える他、その以外の面々も魔石の補助さえあれば使える。

 さらに、一部の上級冒険者が使えるという情報も聞いたことがある。

 中央大陸で開発されたばかりの新技術とはいえ、有用な情報というのは広まるのも早いものだ。


「お前は俺を甘く見過ぎていた。だが、これで形勢逆転だ」


「くぅ……。しかし、形勢逆転とは言い過ぎです。僕様ちゃんの力には、まだまだ余裕があるです」


「そうかい。じゃあ、遠慮なく行かせてもらうぜ!」


「来いです!」


 俺とリッカの戦闘が激しさを増していく。

 お互いに魔法を使い、剣とレイピアでの攻防を交える。

 リッカの武技は強力だ。

 しかし俺だって負けてはいない。こうしてリッカと互角に渡り合っている。


「――【神の雷槌】!」


「【アース・ウォール】!」


 雷の攻撃に対し、土の壁で対応する。

 土の壁が破壊されるが、俺はその間に距離を取る。


「【ヒール】」


 俺は自分に治療魔法を掛けつつ、次の魔法を発動させる。


「――【ウッドバインド】!」


 リッカの足元に植物魔法を発動する。

 彼女は飛び上がって回避したが、それは想定済みだ。


「――【エアバースト】」


 空中にいるリッカに風魔法をぶつける。

 彼女が空中でバランスを崩す。


「しまっ……」


「もらったぁあああっ!! ――【炎魔煉獄覇】!!!」


「ぐうっ……」


 俺は浮かび上がるリッカに追撃をかける。

 リッカの身体を灼熱の業火が包み込む。


「ぐあああっ……」


 リッカが悲鳴を上げる。

 俺はすかさず彼女に近づき、その身体を殴り飛ばした。


「――【フレアドライブ】!!!」


「ぎゃんっ!!」


 リッカが地面を転がっていく。

 ――少しやり過ぎたか?

 強敵とはいえ、外見は幼女。

 手加減をした方が良かったかもしれない。

 俺はそんなことを思ったのだった。

読み終わったら、ポイントを付けましょう!

ツイート