「第5試合を始めます! 武闘神官のエドワード選手対、素性不明のマスクマン選手!」
エドワードとマスクマンがステージに上がる。
エドワードとマスクマンの体格差はそれなりに大きい。
エドワードの身長は185センチくらい。
対するマスクマンの身長は165センチくらい。
マスクマンは、武闘家としてはやや体格に恵まれなかったといえよう。
優勝予想の倍率は、エドワードが9倍に対して、マスクマンが19倍だ。
エドワードは、中央大陸を拠点とする聖ミリアリア統一教会の武闘神官だ。
予選免除での出場となる。
その肩書と実績により、初出場ながらも一定の評価は得ているといえる。
ただし、中央大陸では有名らしい教会の威光も、この街ではそれほどでもない。
そのため、ゾルフ砦を拠点に活動している武闘家たちと比べて、やや低評価になっているといったところか。
マスクマンは、非常に判断に困る。
実績は不明。
顔を隠しているので性別も不明。
体格はやや低身長で恵体とはいえない。
ただし、予選を突破したのは事実なので、最低限の実力はありそう。
判断材料に乏しい中で、面白半分に彼に賭けた観客もいるかもしれない。
「両者構えて、……始め!」
「神の導きを……」
「…………」
エドワードの挨拶(?)に対して、マスクマンは無言だ。
無言のまま、攻撃を繰り出す。
闘いが始まった。
エドワードは挨拶を返されなかったことは気にしていなさそうだ。
10分ぐらいが経過しただろうか。
互角の闘いを繰り広げている。
今までの試合と比べると、見た目の派手さは欠ける。
ただし、お互いに技術を活かし、小回りをきかせて闘っている。
闘気術も、移動時に足に集中させるなど、要所でうまく使っている。
なかなか参考になる闘いだ。
ややエドワードが優勢だろうか。
しかし、決め手に欠けているようだ。
「君、けっこうやるね」
エドワードがマスクマンに話しかける。
「…………」
「このままでも8割方はこちらが勝つだろうが、取りこぼしが怖いな。予定より早まったが、この技を披露するとしよう」
エドワードが纏う闘気が変質していく。
「右手に闘気。左手に聖気」
「むっ!?」
エドワードの雰囲気が変わった。
マスクマンが駆け寄る。
これを機に攻めるようだ。
「全身が隙だらけだ。甘いな」
マスクマンが大ぶりの回転蹴りをエドワードに叩き込んだ。
結構な大技だ。
これは決まってしまったか。
「はっ!」
「なに!? ぐっ」
エドワードが掛け声を発したかと思えば、マスクマンが弾き飛ばされていた。
マスクマンの表情は仮面で見えないが、少し動揺しているような雰囲気だ。
「これは……、いったい? 闘気ではない……?」
「確かに、純粋な闘気ではない。これは聖闘気、守護の型だ。またの名を聖闘衣という」
「……ふん。闘気術の応用か? ここは曲芸を見せる場じゃねえぜ」
「曲芸かどうかは闘えばわかるだろう。いくぞ!」
エドワードとマスクマンの攻防が激しさを増す。
エドワードが優勢だ。
防御力が格段に向上している。
加えて、攻撃力や敏捷性も少し向上している。
「ぐ……。なるほど。確かに曲芸ではないようだ」
マスクマンは攻めあぐねている。
徐々にエドワードが優勢になっていく。
マスクマンが体勢を崩した。
すかさず、エドワードが近寄っていく。
「爆撃連拳!」
エドワードのラッシュだ。
連続でパンチをマスクマンに叩き込む。
これは決まったか。
マスクマンは大ダメージを受けている。
ボロボロで、立っているのがやっとのようだ。
「聖闘気に聖闘衣……? なんだ、その技術は……?」
マスクマンはそう言い残して倒れた。
「このレベルの選手でも、やはり聖闘気を知らないか。まあそれでこそ来たかいがあるのだが」
「そこまで! 勝者エドワード選手!」
エドワードが控室に戻ってくる。
序盤は接戦に見えたが、聖闘気とやらを使用した後は圧倒的だったな。
「お疲れ様です。エドワードさん」
「ああ、ありがとう。アイリスにいいところを見せられなかったのが残念だがね」
アイリスは帰ってしまったからな。
実は観客席で見ているかもしれないが。
「最後の技はなんでしょう? アイリスさんも同じような技を使っていたようですが。見慣れない技でした」
「あれは聖闘気だ。練習すればタカシ君やミティ君も聖闘気を使えるようになる可能性はある。今度、時間が合えば教えてあげよう」
願ってもいない提案だ。
「ありがとうございます。ぜひ、お願いします」
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