「はぁ、はぁ……。ひ、ひどい目にあったぜ……」
流華が肩で息をする。
新技『エンプフィントリヒ・ユングフラウ』の効果を確認できたのは良かったのだが、あまりにもくすぐったすぎて体力を消耗してしまったようだ。
最後の気力を振り絞って服を着たあと、力なく座り込んでしまった。
「流華、大丈夫か? 少しやり過ぎたな。すまない」
俺は謝罪する。
だが、流華は首を横に振った。
「いや……。兄貴が謝ることはないよ。これも、必殺技の効果を検証するためなんだろ?」
「まぁ、そうだが……」
微風に悶える流華は美しかった。
俺はその光景を存分に楽しませてもらったが……。
あくまで、主目的は新技の効果を確認することである。
「だったらいいよ。オレが望んだことだし……。それに、こんなスゲェ必殺技が使えるなんて、ちょっとワクワクしてるっていうか……。むしろ、感謝しているくらいだ」
「そうか……」
どうやら流華は満足したようだ。
通常ではほとんど何も感じない程度の微風でも、彼はくすぐったさに身をよじっていた。
紅葉も、背中に指で文字を書かれただけで盛大に悶えていた。
そういった反応は、『エンプフィントリヒ・ユングフラウ』のマイナス効果であると同時に、プラス効果でもある。
突き詰めていけば、戦闘中に相手の動きを先読みできるというメリットにも繋がり、それは紅葉や流華にとって大きな武器となるだろう。
「お疲れ様、流華くん」
「おう。ありがとよ、紅葉」
紅葉が流華に水筒を渡す。
彼はそれを受け取ると、ゴクゴクと飲み干した。
そんな2人のやり取りを見て、俺は少し疑問を感じた。
(仲がいいのは結構なことだが……。お互いにもっと意識するのが普通じゃないか?)
俺は首を傾げる。
紅葉と流華は、なんというか……完全にお友だちのノリだ。
もちろん、それはそれで良いことなのだが……。
年頃の少年が全裸でくすぐられていたのだから、見学者の紅葉だって多少の恥じらいを見せてもいいように思う。
しかし、彼女はまったくそういう素振りを見せない。
流華の方も似たようなものだ。
同性の俺に対する羞恥心はあるようだったが、同年代の異性である紅葉の存在はほとんど気にしていなかった。
まぁ、新技の検証をそっちのけでおっぱじめられても困るので、とやかく言うつもりはないが。
「兄貴?」
流華が俺の顔を覗き込んでくる。
おっと、いかん。
考え事をし過ぎたようだ。
もう、必殺技『エンプフィントリヒ・ユングフラウ』の効果は確認できた。
そろそろ、制約の内容についても話す頃合いだろう。
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