「余は……何も悪いことはしていない! 藩主として適切に統治を行っていた!!」
景春が叫ぶ。
四肢を拘束され、目隠しをされながらも、その叫びだけは力強い。
ギリギリのラインで藩主としてのメッキは保っているようだ。
「ほう? 藩主としての適切な統治ねぇ……」
俺は景春を挑発するように言う。
そのまま、言葉を続けた。
「お前が藩主になってから、思いつきのような増税が繰り返された。そのおかげで、一部の平民は飢えに苦しむことになった」
「そ、それは……」
景春が口ごもる。
これを指摘されることなど、最初から分かっていたはずだ。
幽蓮の生首を見た恐怖から、その場しのぎの言い訳をしようとしているだけ。
「百歩譲って、必要な増税だったのならば仕方のない面もあっただろう。例えば、周辺の藩との戦に備えてだとか……」
「そうだ! 必要な増税だった!」
「だがな、景春。一時的に増えた税収により、お前は贅沢三昧だったそうじゃないか。既に調べはついている。まさにこの大広間で、豪華な宴会を開いたこともあったそうだな」
「ぐ……」
景春が口ごもる。
図星らしい。
紅葉や流華の生活苦も、元はと言えば景春が好き勝手に増税して贅沢三昧をしたからだ。
「そ、それは……謎の事象により余が正気を失っていて……」
「ほう? お前は、正気を失ったまま政治を行っていたのか?」
俺はあえて嘲笑を浮かべながら言う。
そのあたりの調査も終わっている。
景春の話は嘘ではない。
桜花七侍の面々も少なからず心当たりがあるのか、景春に同情的な視線を向けている。
だが、目隠しをされている景春がその視線に気付くことはない。
「まだあるぞ。お前の最大の罪は……弱いことだ。大量の一般侍や桜花七侍との戦闘で、あのときの俺は少しばかり疲弊していた。そんな俺を相手に、お前は無様に敗北した」
「う……」
「優しい俺だったから良かったものの、これが残虐な侵略者だったならどうなっていた? 家臣団や民が皆殺しにされていたかもしれんぞ?」
「だ、黙れ……っ!」
景春が叫ぶ。
しかし、虚勢を張っているだけだとすぐに分かる。
そろそろ最後の仕上げといこうか。
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