「はああああぁっ!! 【聖・裂空脚】!!!」
『【十七乃手・紫蓮華(しれんげ)】』
アイリスと千手観音菩薩像の戦いは、熾烈を極めていた。
全力のアイリスに対し、超常の存在である千手観音像も全力で応える。
両者一歩も譲らない展開だ。
しかし……
『【十九乃手・傍牌(ぼうはい)】』
「うぐっ!?」
千手観音像の掌が、アイリスを弾き飛ばした。
その威力は凄まじく、アイリスは大きく吹き飛び壁に激突する。
「ぐっ……う……」
『汝の力、見切ったり』
「……!?」
『これにて【右手乃試練】は終了である。汝ほどの実力者は、百年に一人出るかどうか……。特に、その格闘術は見事なり。よくぞここまで練り上げた』
「そう……。お褒めの言葉、ありがとう。これでもう満足した――」
千手観音像の講評を受け、アイリスはよろよろと立ち上がる。
激戦の結果、確実にダメージや疲労は蓄積していた。
「――なんて言うわけないでしょ! ボクはまだまだやれる!」
『なぬ?』
「ほら、行くよ? はぁぁぁぁっ!!」
アイリスが気合いを入れると、その体が光を放つ。
底力だ。
彼女は限界を超えようとしていた。
『【左手乃試練】に臨むか……。下手をすれば再起不能になるが、覚悟はあるのか?』
「愚問! だよ!!」
『よかろう』
千手観音菩薩像が動き出す。
アイリスもそれに合わせて駆け出した。
「【聖・爆撃正拳】!!!」
『【弐乃手・月輪(がちりん)】』
ドゴォォン!!
アイリスと千手観音像の攻撃が激突する。
その威力は凄まじく、周囲に轟音が響いた。
「攻撃力は凄いけど……ボクなら受け流せる!」
『そのようだな。しからば……【陸乃手・経箱(きょうばこ)】』
千手観音像の攻撃が、左右から挟み込むように繰り出される。
アイリスはこれを後退しつつ躱す。
激しい攻防だ。
――後半戦に入ってからも、彼女は善戦を続けた。
そして、数十分後……。
千手観音像の攻撃も出尽くしつつあり、そろそろ試練も終わるかもしれない……。
そう思われた矢先だった。
『【拾捌乃手・胡瓶(こへい)】』
「あぐっ!?」
千手観音像の掌底が、アイリスの左足に直撃する。
そして、それは……
バキィッ!!
「う、うあああああぁっ!!」
『……終わりだ。骨が粉々になっておろう……。よくぞここまで耐え抜いたものだ。ただの人間にしておくには勿体ないほどなり……』
アイリスの左脚を砕く一撃だった。
彼女はその場に崩れ落ち、痛みに悶え苦しむ。
「うぐっ……! ま、まだまだ……!」
『諦めよ。試練の完全突破は、さしもの汝にも荷が重かったのだ……。この【千手の間】は妖術の類が封じられている故、痛みを和らげることも叶わぬ。諦めれば楽になるぞ?』
「諦める……? …………」
アイリスが沈黙する。
左足の骨が砕けた状態で、彼女は――
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