【コミカライズ】無職だけど転移先の異世界で加護付与スキルを駆使して30年後の世界滅亡の危機に立ち向かう

~目指せ! 俺だけの最強ハーレムパーティ~
猪木洋平@【コミカライズ連載中】
猪木洋平@【コミカライズ連載中】

1499話 師範

公開日時: 2024年9月7日(土) 12:30
文字数:1,288

「――はぁっ!!」


「うぐ……!」


 俺は桔梗の木刀をいなす。

 そのまま、彼女の手首に木刀を当てた。


「よし。これで勝負ありだな」


「……はぁ……はぁ……!」


 桔梗は肩で息をしている。

 俺は彼女の手首から木刀を外した。


「大丈夫か?」


「……うん」


 桔梗は頷くが、その呼吸は荒いままだ。

 数日前、俺は彼女に初めて2連勝した。

 そのときは2連勝止まりだったが、その後も少しずつ勝率を上げている。

 そして、今日はついに一日単位での勝ち越しに成功した。

 そのこと自体は喜ばしいことのように思えるが……


「どこか調子が悪いのか? 動きに精彩がなかったが……」


「うん……。ごめん」


 桔梗は申し訳なさそうに言う。

 だが、答えにはなっていない。

 彼女は若い女の子だが、武神流の師範代でもある。

 その誇りや責任感から、他者に相談できないこともあるのかもしれない。

 ここは、強引に話を聞き出すべきだろうか?

 あるいは、詳しい事情は置いておいて、とりあえず治療魔法をかけておくという手もある。


「……」


 桔梗は木刀を握りしめている。

 その表情からは、俺に相談しようかしまいか迷っているという雰囲気を感じた。

 そんな彼女に、俺は声をかける。


「言いづらいことなら、無理して言わなくてもいい。だが、もし困っていることがあるなら相談してくれ。何でも力になる」


「……うん」


「……」


「……」


 2人の間に沈黙が流れる。

 桔梗は迷っているようだったが、やがて意を決したように顔を上げた。

 そのときだった。


「がっはっは! そやつが新入りか!? 桔梗よ!!」


 俺たちの背後から、力強い男の声が響く。

 振り向くと、そこには筋骨隆々の爺さんが立っていた。

 かなり強そうだ。

 しかし、彼の右手は包帯のようなものでグルグル巻きになっているため、その戦闘能力は一時的に低下しているだろう。


「お爺ちゃん!?」


 桔梗が驚きの声を上げる。

 どうやら、彼女のお爺さんらしい。


「ここでは『師範』と呼べ! このバカ孫めが!!」


「ご、ごめんなさい……。お爺ちゃん」


 桔梗は素直に謝る。

 彼は桔梗の祖父であると同時に、武神流の師範でもあるのか。

 まぁ、潰れかけの道場を1人で守り抜こうとしているあたり、桔梗が師範の血縁者という可能性は高いと思っていた。


「まったく、これだから女は……。我が息子夫婦が男児を産んでおれば、武神流も今頃は安泰だったものを……」


「……お爺ちゃん」


 桔梗がうつむく。

 俺は少しムッとした。


「聞き捨てなりませんね」


「なんじゃ、お主? たかが新入りの分際で、口を出すでない!」


 師範は俺を睨む。

 俺は一歩も引かなかった。


「ある程度の事情は知っていますよ。そもそも、あなたが他流派との決闘で大怪我を負ったのが事の発端でしょう? 道場を守れる人間がいないから、桔梗が臨時の師範代になったと理解しています」


「む……。それはそうじゃが……」


「桔梗は頑張っています。道場を守るために、頑張っているんです。敗北者のあなたが『女は……』とか言うべきじゃない」


「ぬぅ……! 敗北者じゃと!? 取り消せぃ!! 今の言葉!!!」


 師範代と俺の視線がぶつかり合う。

 桜花藩の配下以外と争うつもりはなかったが……。

 桔梗のためにも、ここは引き下がれない!

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