エレナたちの三位一体のサーブにより、弾き飛ばされたサーニャちゃんたち。
その衝撃で、水着までズレてしまった。
事故とはいえ、羞恥プレイを強要されたサーニャちゃんが怒る。
「にゃにゃっ! 風の精霊よ! にゃぁに力を貸すにゃーっ!!」
サーニャちゃんが叫びながら、右手を掲げる。
すると、その手に装着されていたブレスレットが輝きを強めた。
「な、何なの!? そのブレスレットは!?」
「ふっふっふ! これがにゃぁの切り札にゃ!! パパとママから貰った古代魔道具――『ケットシーの腕輪』にゃ!!」
「『ケットシーの腕輪』……?」
「聞いたことがないねー……」
「オレっちも知らないっす」
エレナ、ルリイ、テナが困惑している。
彼女たちはCランク冒険者パーティである。
それなりに多くの知識や経験を持っているはずだが、その彼女たちですら知らないとは。
もちろん、俺も知らない。
「細かいことはいいにゃ! この風の力で、必殺のサーブをくらわせるにゃよー!!」
サーニャちゃんが叫んだ。
彼女自身の魔力はそれほどでもない。
だが、あのブレスレットには魔力を増幅させる効力があるようだ。
油断できない。
「くっ……。仕方がないわね……。みんな、全力を出し切るわよ!」
「了解ー!」
「分かったっす!」
エレナの指示に従い、ルリイとテナが魔力を高める。
普通のサーブなら、あれで十分に対応できるはずだが……。
「いくにゃ! 【サイクロン・インパクト】にゃ!!」
サーニャちゃんが渾身の一撃を放つ。
先ほどのエレナたちにも引けを取らないほど強烈なサーブだった。
まるで竜巻のような暴風が吹き荒れる。
「くっ……。なんてパワーなの……!」
「こ、これは受け止めきれないよー」
「オレっちでも無理っす!」
3人は必死に耐えようとするが、耐えきれなかった。
そのまま、大きく後方に弾かれてしまう。
「「「きゃあああっ!!」」
悲鳴を上げ、エレナたちが砂浜に倒れる。
風にやられただけなので、大きなケガはないはずだが……。
「うぅー……! つ、強い……」
「もう魔力が限界っすよ……!」
ルリイとテナが悔しそうな表情を浮かべている。
彼女たちの魔力が尽きかけているのだ。
まぁ、素の身体能力はさほどでもないもんな。
それを魔力で増幅させていたのだから、当然といえば当然の結果だろう。
「ふふーんにゃ! 負けを認めるのにゃ!?」
「ま、待ちなさい! 私はまだ諦めてないわよ!!」
エレナが立ち上がる。
しかし、魔力切れを起こしていては勝ち目はない。
このままでは、サーニャちゃんの勝利が確定するだけだ。
「にゃにゃっ! まだやるのかにゃ!?」
「えぇ、そうよ! 私は誇り高き『三日月の舞』のリーダー! やがてAランクにまで上り詰める実力の持ち主なのよ! こんなところで、簡単に引き下がるわけにはいかないわ!!」
エレナが叫ぶ。
ビーチバレーボール勝負くらい、どうでもいいような気もするが……。
彼女にとっては、負けられない一戦のようだ。
「にゃにゃっ!? 敵とはいえ、その意気込みは見事にゃ!!」
「ふんっ! 当然よ!!」
エレナが宣言する。
彼女の慎ましい胸が張られ……て……?
「にゃっ!? にゃにゃ……」
「どうしたのよ? ははーん……。さては、私の気高さに見惚れちゃったのね! 分かる、分かるわ! 今の私は、まさに気高く美しいものね!!」
エレナが調子に乗る。
だが、サーニャちゃんは言葉を失ったままだ。
少し離れたところから見ている俺も、同じだった。
(エレナの水着が……ズレている……)
しかも、さっきよりも被害は大きい。
胸だけでなく、下側も……。
「あ、ああっ!? エレナちゃん、水着がズレてるよー!!」
ルリイが気づいたようで、声を上げる。
ドヤ顔を決めていたエレナだが、すぐに顔を真っ赤にした。
「ちょっ……!」
「って、ああっ! ルリイっちもズレてるっすよ!!」
「うそー!? は、恥ずかしいーっ!!」
エレナ、テナ、ルリイが騒ぎ出す。
おいおい、見られる覚悟とかはどうなったんだよ。
俺は思わぬ眼福を味わえて嬉しいが……。
砂に埋められた俺の体の一部が、またさらに大きくなったような気がした。
読み終わったら、ポイントを付けましょう!