【コミカライズ】無職だけど転移先の異世界で加護付与スキルを駆使して30年後の世界滅亡の危機に立ち向かう

~目指せ! 俺だけの最強ハーレムパーティ~
猪木洋平@【コミカライズ連載中】
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1583話 不死鳥伝説【マリアside】

公開日時: 2024年11月30日(土) 12:10
文字数:1,183

「……お主、その翼は」


「あ、うん。マリアはね、回復能力がすごいらしくて――」


「炎と共に再生したぞ!? まさか……不死鳥!?」


「不死川に伝わる数々の伝承……。その中でも特に有名な不死鳥伝説! あれは本当だったのか!?」


 老人と少女――マリアの会話に割り込むようにして、若者たちが騒ぎ出す。

 実際には、回復したのは自前の驚異的な自己治癒能力であり、火を纏ったのは火魔法のアレンジだ。

 基本的には別個の能力である。

 ただ、どちらも『不死鳥』の伝説と合致するため、若者たちの勘違いも無理からぬことではあった。


「……若造たちが騒がしいの。ところでお主、行く宛はあるのか? 中州なんかで居眠りしておったようじゃが……」


「えっとね。南の方に行きたいんだけど……もうちょっと元気になってからかなっ。なんか、上手く飛べなくなっちゃって……」


 マリアが告げる。

 大和連邦の各藩は、多かれ少なかれ結界妖術で守られている。

 桜花藩に降り立ったタカシの重力魔法が不調だったように、不死川藩にいる彼女の重力魔法もまた不調だった。

 また、生来の飛行能力も阻害されている。

 ハーピィとオーガのハーフである彼女にとって、飛行ではなく徒歩で遠路を行くのは現実的な選択ではなかった。


「そうか。ならば、村へ来られるか?」


「えっ!? いいの!?」


「うむ。儂の命の恩人じゃし、若造の怪我を治療してもらった恩もあるからの」


「ありがとうっ!」


 マリアは満面の笑みを浮かべた。

 彼女や老人たちは川の中州から、村へと向けて移動を始める。

 空を飛ばずとも、数分から数十分ぐらいの徒歩移動ならば今の彼女にも可能だ。


「む? そういえば、まだお主の名をちゃんとは聞いとらんかったの。確か、まりあ……とか言ったか。漢字は……」


「マリアの名前は漢字じゃないよ?」


「漢字ではない?」


「あっ! 違った! ええっと……漢字では……そう、こう書くの!!」


 マリアはそう言いつつ、地面を指でなぞる。

 サザリアナ王国から大和連邦までの移動中やそれ以前に、彼女は蓮華などから漢字を習っていた。

 簡単な漢字はマスター済み。

 その他、自分や仲間の名前に当てる漢字も読み書きできる。

 彼女が地面に書いた漢字は……『舞燐亜』だ。


「なるほど、舞燐亜……か。まりあという名前はたまに聞くが、少し珍しい当て字じゃな。ま、火を纏って空を舞うお主にはぴったりの名前じゃが」


「ありがとうっ! それで、お爺ちゃんの名前は?」


「そうじゃな。では、こちらも自己紹介しておこうか。儂は――」


 マリア改め舞燐亜は、老人たちの案内に従って村へと向かっていく。


 ――その後、彼女は村人たちの傷や病を治療して回り、大いに感謝された。

 元『不死武士隊』の老人の古傷も、例外ではない。

 マリアは全盛期の力をいくらか取り戻した老人と共に、近場の妖獣を討伐して回り……。

 不死鳥伝説を体現した少女として名を馳せるのだが、それはもう少し先の話である。

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