「「「いっせーのーでっ!!」」」
少女たちが声を揃える。
具体的に何をする気かは、分からない。
だが、ピンチであることは確かだ。
俺は闘気を身にまとって体を硬化し、何らかの攻撃に備える。
これならば、仮に短剣でブスリとやられても致命傷にはならないだろう。
俺はそう思ったのだが、彼女たちは予想外の行動に出る。
「おふっ!?」
少女たちは俺のエクスカリバー……いや、妖刀村雨を掴んできたのだ。
突然のことに、俺は思わず声を出してしまう。
「おっ? なんか今声が聞こえたような……」
「うん、私も聞こえた!」
「やっぱり、この侍装束は服だけじゃないんだ! よし、このまま引きずり出すよ!」
「うん! せーのっ!!」
少女たちがふんどしの山から俺を引きずり出そうとする。
だが、俺はそれを許さない。
(くっ……! ぐぬぬ……!!)
俺はかごの底で踏ん張る。
四隅に手足を突っ張り、体を引き上げられないよう抵抗した。
「あっ、こいつ……! ふんどしの中であがいてる!!」
「この中年侍め! 往生際が悪いよ!!」
少女たちが俺を引き上げようとする。
彼女たちの手は、俺の妖刀村雨をしっかりと掴んでいた。
どうして、そんな敏感なものを掴むんだ!?
「うぅっ……。くっ、くそっ……!」
俺は必死にふんどしの中で踏ん張る。
だが、少女たちの手によって与えられる刺激が、俺をじわじわと追い詰める。
このままでは……まずい!
(なんとかしないと……)
俺は必死に考える。
そして、一つの策を思いついた。
(一か八かだ……!)
俺は『インビジブル・インスペクション』を解除する。
素早く手を動かしてふんどしを頭部に被った。
「とうっ!!」
俺は少女たちの手を振り払い、ふんどしの中から飛び出す。
そのまま、バシッとポーズを決めてみせた。
「げっ!?」
「えっ!? ちょっと、あんた誰よ!」
突然ポーズを決めた俺に驚く少女たち。
まぁ、当然の反応だろう。
「拙者は『ふんどし仮面』! ふんどしを愛するものなり!!」
俺は高らかに宣言する。
そう、今の俺は『ふんどし仮面』だ。
「え? なにこいつ……。頭おかしいの?」
「正体は誰? 城に務めている中年侍の誰かでしょ?」
「いや、でも……。この侍装束には、桜花の家紋が入っていないよ?」
「じゃあ、侵入者……とか?」
少女たちがひそひそと会話を始める。
ふんどし仮面の登場に戸惑っているようだ。
「ふっ! 細かいことは気にするでない! さぁ、ふんどしを愛する者同士で語らおうではないか!!」
俺は少女たちに語りかける。
秘技『インビジブル・インスペクション』を解除した今、『気付かれないまま逃げる』という選択肢はなくなった。
ならば、ここは堂々とふんどし愛を語って、うやむやにするしかない!
「いや……私たちは別に、ふんどしを愛しているわけじゃ……」
「え? そうなのか?」
「うん。だって、ふんどしなんてただの布でしょ? ただの下着として着ているだけで……」
「そうそう。そんなのを愛でるなんて、変態じゃん」
少女たちが口々に言う。
なるほど。
少女たちのふんどしへの愛は、それほど深くないらしい。
ここはしっかりとふんどしの素晴らしさを伝えたいところだが……。
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