【コミカライズ】無職だけど転移先の異世界で加護付与スキルを駆使して30年後の世界滅亡の危機に立ち向かう

~目指せ! 俺だけの最強ハーレムパーティ~
猪木洋平@【コミカライズ連載中】
猪木洋平@【コミカライズ連載中】

1670話 歌声

公開日時: 2025年2月26日(水) 12:10
文字数:910

「これは……」


「……どうやら歌声のようですが」


 謎の声に導かれるように、俺たちはゆっくりと歩き出す。

 神社の敷地の奥へと歩を進めると、視界が開けた。


 広大な広場。

 そこには大勢の人々が集まり、中央には、幾人もの巫女たちが並び立っていた。


「……あれは、巫女か」


「そのようですね……」


 白と赤の衣をまとった彼女たちは、一糸乱れぬ動きで儀式の舞を舞いながら、透き通るような歌声を紡ぎ続けている。

 荘厳な旋律が、空間を支配していた。

 澄んだ声が幾重にも折り重なり、まるで天と地を結ぶ糸のように響く。

 聞いているだけで、心の奥が揺さぶられるような感覚に陥る。


「一体、これはどういう状況だ?」


 思わず呟いた。

 目の前に広がるのは、炎の灯る祭壇と、静かに揺れる幾重もの白布。

 空には薄い雲がたなびき、月光が柔らかに差し込んでいる。

 周囲を取り囲むように立つ巫女たちは、まるで時間そのものに溶け込んでしまったかのように、無言のまま佇んでいた。

 その中心で、荘厳な唄が紡がれていく。


 この儀式は何を意味するのか?

 偶然の巡り合わせか、それとも俺たちを迎え入れるためのものなのか――。

 だが、そんな疑問を抱くよりも早く、俺はただ目の前の光景に圧倒されていた。


「高志様……」


 紅葉の声が微かに震えている。

 彼女の瞳は、炎のゆらめきを映しながらも、何かに強く惹かれているようだった。


「わかっている。もう少し様子を見てみよう」


 巫女たちの歌声は、まるで一つの波となって空間に広がっていく。

 その音は、澄み切った水のように透明で、耳に届くと同時に心の奥底まで染み込んでくるようだった。


 それは、ただの歌ではない。

 何かに強く干渉する力を持っている――そう直感した。

 周囲の木々や山々が、その響きに共鳴するかのように、風がさざめく。


「これは……なんだか……」


「……ああ、アレだな……」


 紅葉と俺は、ほぼ同時に呟いた。

 考えていることは同じらしい。


「心が洗われる気がしますね」

「気に食わない歌声だな」


「「……え?」」


 俺たちの間に、微妙な空気が流れた。


 おかしいな?

 これまでの旅で、俺と紅葉は何度も同じ景色を見て、同じ感動を分かち合ってきたはずだ。

 なのに、今この瞬間、俺たちの心は明確に分かたれている……。

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