「諸君の疑問はもっともだ。だが、桜花城はこの俺――高橋高志のものとなったのも事実! 今、証拠を見せてやる!!」
「な、何をする気だ!?」
「証拠って……いったい何を……?」
民衆たちがざわつく。
俺は彼らの反応に満足しつつ、左右の手で魔力を操作し重力魔法を発動する。
自分自身を浮かせるわけではない。
天守閣の部屋の内部で意識を失っている者たちを、ぷかぷかと宙に浮かせて運んでくるのだ。
その先頭はもちろん……
「な、何だ?」
「人……? 遠くてよく見えないが……あれはまさか……!?」
「か、景春様では……!?」
民衆たちが騒ぎ始める。
俺がいるのは、天守閣の屋根の上。
景春はその近くの宙に浮いている。
城下町の民衆から見てそこそこ遠いため、分かってくれるか微妙だったが……。
大丈夫だったらしい。
まぁ、景春は藩主として立派な衣服を身に纏っているし、その中性的な顔も目立つからな。
しかも……
「あれは……妹君たちでは?」
「本当だ……。ま、間違いない……」
景春とよく似た双子まで近くにいれば、さすがに分かるだろう。
これで、とりあえずの証拠は十分だ。
「この通り、桜花家の血を引く者たちは俺の手中に落ちた! 生かすも殺すも俺次第! 今日からは俺がこの桜花藩を統べる者となるのだ!!」
「な、なんだって!?」
「そんな馬鹿な……」
民衆が騒ぎ始める。
一部には、俺の言葉を信じられない者もいるようだ。
「嘘だろ……!? そんなはずがない!」
「桜花七侍の連中は何をしている!? 今代の七侍はいけ好かない奴らだったが……確かな実力が持っていたはず!」
「ま、まさか……桜花七侍までやられちまったってのか!?」
民衆がざわめき続ける。
自分たちで正解を導き出してくれるとは、実にありがたい。
「そうだ! 桜花七侍の連中は俺が始末した! 見ろ、こいつらの情けない姿を!!」
俺は引き続き重力魔法を発動し、桜花七侍を空中に浮かべる。
樹影、雷轟、金剛、無月、夜叉丸、巨魁、蒼天。
全員が意識を失っており、無抵抗にぷかぷかと宙を浮いている。
「ま、まさかそんな……」
「あり得ない……」
「大軍が桜花城に攻め入ったなんて話、聞いていないぞ!?」
「混乱さえ気取られぬほど……わずかな手勢で攻め落としたとでも……」
「こ、これは……現実なのか……?」
民衆の混乱がピークに達する。
だが、疑う余地はない。
藩主、その妹たち、そして桜花七侍。
全ての人間が、俺の制御下に置かれているのだ。
誰が支配者か、一目瞭然である。
これらの証拠でもう十分だろうが……。
せっかくだ。
さっき取得した『とあるスキル』を見せて、ダメ押ししておくか。
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