【コミカライズ】無職だけど転移先の異世界で加護付与スキルを駆使して30年後の世界滅亡の危機に立ち向かう

~目指せ! 俺だけの最強ハーレムパーティ~
猪木洋平@【コミカライズ連載中】
猪木洋平@【コミカライズ連載中】

1432話 増税

公開日時: 2024年7月2日(火) 12:11
文字数:1,394

「うっぷ……。ふ、ふざけやがって……」


 最初の団子を食い終えた少年は、俺を睨みつけた。

 叫びだしそうな雰囲気はそのままである。


「次は白いソースがかかった団子を食うといい」


「あ? 食うわけねぇだろ。そんな得体の知れねぇモン……」


「遠慮するな。お前のために追加で頼んだものだ。残したらもったいないだろうが」


「むぐ!? お、おごっ!!」


 俺は少年の口を無理やり開かせる。

 そして、そこに白いソース付きの団子を突っ込んだ。


「あぐぐ……。んぐ……。んぐ……」


「どうだ? うまいだろう?」


「……団子は悪くはねぇ。だが、この白いやつは……。ちょっと変な味が……」


「好き嫌いは良くないぞ。全てを飲み干せ」


「んぐっ!? ううっ!!」


 俺は少年の口に手を当て、強引に白いソースを飲ませる。

 少年は抵抗しようとするが、俺はそれを許さなかった。


「おごっ……。うげ……」


「よし。全部飲み干せたな」


 俺は少年の口から手を離す。

 そんな俺に、少年は怒鳴った。


「こ、この野郎!! てめぇ、何しやがる!?」


「食べ物を無駄にするわけにはいかないからな。このあたりは不作で困っている人も多いらしい。せっかくの団子を残すなんて、もってのほかだ」


「……ちっ」


 少年は大きく舌打ちをする。

 そして、俺を睨んだ。


「別に……不作なわけじゃねぇ。城下町じゃ、食料に困ってるヤツなんて一人もいやしねぇよ。それに、この街の侍連中もな」


「ふむ? そうなのか?」


「ああ。けど……」


 少年は悔しそうに言う。

 彼は言葉を続けた。


「オレたちみたいな子どもには、まともな食いモンなんて回ってこねぇ」


「ん? どういうことだ?」


「詳しいことは知らねぇ。税がどうとか、年貢がどうとか……。ここ最近、負担が増え始めた。そしてそのしわ寄せは、下っ端のオレたちに回されるわけだ」


「なるほど。そういうことか」


 俺は納得する。

 この少年は、おそらく孤児だったりするのだろう。

 そんな彼が俺の財布を盗んだ理由は……まぁ、想像に難くない。

 生活苦だ。


 おそらくだが、桜花藩の藩主が大幅な増税でもしたのだろう。

 その影響は、まずは侍や大商人などの上級階層に及ぶ。

 だが、彼らはその負担を中級階層に押し付けることが可能だ。

 中流層はそれなりに苦しむことになるが、その負担の一部は下級階層に回される。

 最終的に最も困るのは孤児などの末端層……というわけだな。


「お前に同情する気はない。だが、事情は分かった」


 俺は少年の頭に手を置く。

 そして、ぐしゃぐしゃと頭を撫でた。


「なっ!? て、てめぇ! 何しやがる!!」


「お前みたいなガキは嫌いじゃない。俺の財布を盗んだことは許してやろう」


「はぁ!? お、おい! ふざけんな! オレを子ども扱いすんじゃ……」


「だが、スリは犯罪だ。そのことは忘れるな」


「うぐ……!?」


 少年は言葉に詰まる。

 俺はさらに続けた。


「食うに困って餓死するよりは、マシな選択かもしれない。しかし、いつまでもこんなことを続けられると思うな。……いいな?」


「わ、分かったよ! もうしねぇって!!」


 少年は叫ぶように言う。

 そんな彼の頭を、俺はもう一度くしゃっと撫でた。

 とりあえず、これで一件落着か?

 根本的な解決には至っていないが……。

 これも何かの縁と思って、多少の金銭援助でもしてあげようか。

 俺がそんなことを考え始めたときだった。


「そこまでだ! 大人しくせよ!!」


「ん?」


 突然、そんな声がかけられる。

 声の方を見れば、そこには数人の侍たちがいたのだった。

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