【コミカライズ】無職だけど転移先の異世界で加護付与スキルを駆使して30年後の世界滅亡の危機に立ち向かう

~目指せ! 俺だけの最強ハーレムパーティ~
猪木洋平@【コミカライズ連載中】
猪木洋平@【コミカライズ連載中】

1215話 くやしく説明してくれ

公開日時: 2023年11月25日(土) 12:07
文字数:2,182

 密航者の正体が判明した。

 Cランクパーティ『雪月花』の三姉妹だ。


「長期依頼の約束を反故にしたのは悪かった。しかし、どうしてそれがヤマト連邦に関するものだって分かったんだ?」


 俺はそう問う。

 彼女たちには、王都への護衛をしてもらったこともある。

 また、最初に出会った場所はラスターレイン伯爵領のルクアージュだ。

 長期依頼と聞いたなら、王都やルクアージュ、あるいはその他の街の依頼を想像するのが自然だろう。


 俺が疑問に感じていると、三姉妹が顔を見合わせた。

 そして次女の月が代表して答える。


「話の流れで分かったわよ……」


「そうか?」


「だって、私の故郷がヤマト連邦だって話を聞いた直後に、長期の護衛依頼をするかもって言い出したんだもの。普通に考えたら、ヤマト連邦の話だって分かるじゃない」


「あー……」


 確かにそうだ。

 少し油断していたかもしれない。

 しかし、普通はそれだけでヤマト連邦に関係があるとは思わないだろう。

 Cランクパーティ『雪月花』は、戦闘能力や美貌だけでなく、頭の回転も優秀なようだ。


「まったく、ハイブリッジ男爵も迂闊ね。機密性の高い情報は、推測させる材料さえ与えないことが重要よ」


「申し開きもない。……しかし、『ハイブリッジ男爵』呼びとは他人行儀だな。あの夜みたいに『旦那様』と呼んでくれてもいいんだぞ?」


 俺は月と深い仲になっている。

 肩書き付きで呼ばれると、距離を感じてしまう。


「っ……。そ、そんなことよりも、これからのことについて話しましょう」


 月が顔を赤くしながら話題を変える。

 彼女にしては珍しい反応だ。

 そんな俺たちの様子を、花は羨ましそうに、雪は静かに見つめている。


「それで、密航した理由は何だ? 里帰りか?」


 俺は話題を逸らす月の話に乗ることにした。

 長期依頼の約束が反故にされ、それについて文句を言うのは分かる。

 だが、勝手に船に乗り込むのはやり過ぎだろう。


「ええっと……」


「黙秘権はないぞ。食べた分は話してもらうからな」


 俺はそう告げる。

 食料に余裕はある。

 だが、長い船旅において無断で食料を食べられるのは看過できない。

 場合によっては、しっかりとお仕置きする必要があるだろう。


「花ちゃんはね~。純粋に里帰りだよ~」


「……そうなのか?」


 自分で候補に挙げたことではあるが、本当に里帰りだとは思わなかった。

 普通、ただの里帰りで密航するか?


「いや待て、『花ちゃんは』って言ったな? 他の2人は違うのか?」


 彼女たちは三姉妹でパーティを組み、普段からほとんどの行動を共にしている。

 当然、密航の目的も同じだと思っていた。

 しかし、実際は違うのかもしれない。


「……ボクは2人の付き添いだね。それに、実家からお宝でもくすねられたら、それで満足……」


 雪はそう言う。

 俺は雪の理由に納得した。

 彼女は金銭欲が強いタイプだ。

 実家に帰って、何らかの資金援助を受ける計画だろう。

 その『実家からお宝をくすねる』という表現には不穏当さがあるが、この際置いておこう。


「……はぁ。2人とも、本当に自由人ね」


 月が溜め息を吐く。

 花と雪の自由人っぷりに呆れているようだ。


「それで? 月はどうしてだ?」


 俺は再度尋ねる。

 彼女の口ぶりからすると、また別の理由がありそうだ。


「神宮寺家の責務を果たすためよ」


「責務?」


 俺は首を傾げる。

 三姉妹の出身はヤマト連邦だが、育ちはサザリアナ王国だ。

 そんな彼女らが責任を負うような事柄とは何か?


「名家に生まれた私たちが、他国に逃げざるを得なくなった理由……。成長した私たちなら、きっと解決できるはずだわ。ハイブリッジ男爵の後ろ盾もあるし……」


「名家? ……いやそれより、『ハイブリッジ男爵』呼びは他人行儀だからやめないか?」


 俺の要望を、月は華麗にスルーした。

 彼女はそのまま話を続ける。


「ヤマト連邦の平和は、私たち神宮寺家が守るわ」


「……なるほど?」


 俺はとりあえず納得した。

 詳細についてはまだ分からないが、全体像は見えてきた。

 神宮寺家は、ヤマト連邦内で何かしらの影響力を持つ名家らしい。

 しかし、何らかの理由で幼少期の彼女たちが他国に逃がされたようだ。

 成長した彼女たちは、責務とやらを果たすためにヤマト連邦に帰ることにしたと……。


 責任感の強い月らしい行動だ。

 彼女が権力や名声を求めることとも無関係ではあるまい。


 一方、花と雪はあまり気にしていない様子だ。

 彼女たちは自由なタイプだからな。

 家の責務なんて、知ったことではないのかもしれない。

 ……いや、月に付き合っているあたり、多少は気にしているのか。

 いずれにせよ、現状の情報だけでは不足だ。


「くやしく説明してくれないか?」


「はぁ? えっと……。ヤマト連邦の平和は、私たち神宮寺家が守るわ!」


(# ゚Д゚)ムッキー

( `Д´)フォオオオオオオオオオ!


 月が激おこ状態になった。

 いかにも悔しそうだ。

 俺は続ける。


「違う違う。もっとくやしく頼む」


「ヤマト連邦の平和は、私たち神宮寺家が守るわ!!!


(ノ#`Д´)ノ⌒┻━┻

ヽ(`(`(`(`ヽ(`Д´)ノ ファ・フォァ・フワォオオオオオオオオオオオン!!


 月が俺の要望に従い、渾身の力を込めて叫んでくれた。

 素晴らしい熱演だ。

 意外にノリが良いな……。

 俺は満足する。


「いや、間違えた。『くやしく』じゃなくて『くわしく』だ」


「はぁ? ……今の茶番は何だったのよ?」


(#^ω^)ビキビキ


 月が俺を睨む。

 俺は彼女をなだめつつ、話を聞いていくのだった。

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