【コミカライズ】無職だけど転移先の異世界で加護付与スキルを駆使して30年後の世界滅亡の危機に立ち向かう

~目指せ! 俺だけの最強ハーレムパーティ~
猪木洋平@【コミカライズ連載中】
猪木洋平@【コミカライズ連載中】

732話 借金完済も夢じゃない!?

公開日時: 2022年7月27日(水) 12:18
文字数:2,319

 引き続き、過去の話である。

 とは言っても、時は既に現在に迫りつつある。

 タカシが王都周辺にて『黒狼団』や『白狼団』を捕らえる少し前ぐらいの話だ。


 『闇蛇団』の男によって、闇カジノへと連れて行かれたノノン。

 だが、彼女の前に広がっていたのは想像を超えた光景であった。


「なに……これ……」


 思わず呆然と呟く。

 そこは薄暗い部屋であり、テーブルの上にはカードが置かれている。

 そして、ディーラーがカードをシャッフルしているところだった。


「おう。今、ちょうど始まったばかりみたいだな。まずは見学しつつ、ルールを説明してやろう」


「は、はい……」


 闇カジノでゲームを行うには、最低限のルールを知っておく必要がある。

 だが、ノノンは知らない。

 こういうことに無縁だったのだから当然だ。

 男は、そんな彼女に丁寧に説明を始めた。


「……と、こういうわけだ。理解したか?」


「はい、なんとか……。でも、わたしには難しそうです。やっぱり帰らせてください」


「おいおい、ここまで来てそりゃ無いだろ? 大丈夫だって。やってみろよ」


「ですが……」


「もし負けても、嬢ちゃんは痛くない。なぜなら、元々が降って湧いた金だからだ。そうだろう?」


「うっ……」


 そう言われてしまうと、ノノンとしては言い返せなくなる。

 今日持ってきたお金は、そもそもこの男から無償でもらったお金なのだ。

 ギャンブルに参加せずに帰るなら没収すると言われても、素直に渡すしかない。


 参加してもしなくてもお金がなくなってしまうなら、参加した方がいい。

 ひょっとすると勝てるかもしれないからだ。


「まぁ、心配すんな。客は皆、金を持っているヤツらだ。案外、嬢ちゃんみたいな子供でも簡単に儲かるかも知れねぇぞ?」


「……」


「さてと、今の勝負が一段落したようだな。そろそろ嬢ちゃんも参加するといい」


「え? で、でも……」


「心配いらない。ここは闇カジノだが、イカサマの類はしていない。純粋に実力と運だけの世界なんだ。むしろ、嬢ちゃんのような初心者の方が向いているかもしれん」


「……」


「ほれ、見てみろよ」


 男が指差す先を見ると、そこには大量の金貨の山があった。


「もし勝てれば、あの全てがお前のものになってもおかしくはないんだぜ?」


「……分かりました。やります」


「そうこなくちゃな!」


 こうして、ノノンは人生初のギャンブルに挑戦することになった。

 彼女は席に着き、ディーラーによってカードが配られるのを待つ。


 ちなみにこのカードは、地球で言うところのトランプに近いものだ。

 そして行っているゲームは、ポーカーに近しいものである。

 絵札の種類や枚数、カード自体の品質、ルールの差異などは当然存在するが、今は置いておこう。


「さぁ、始めようか。最初の手札を確認しろ」


「えっと、はい」


 男の指示に従い、ノノンは自分のカードを確認する。

 その様子を見ていた他の客が口を開く。


「おいおい、参加者以外が口出しするのはマナー違反だろ?」


「そうね。ズルいんじゃないの?」


「勘弁してくれよ。コイツは初心者なんだ。アドバイスぐらいいいじゃねえか」


 男がそう答える。


「なあ、ディーラーさんもいいだろ?」


「……他の方がよろしいのであれば……」


「ほら、カジノ側の人間もいいと言ってるし、いいじゃないか」


「仕方ねえな」


「ま、初心者だっていうのなら、カモらせてもらおうかしら」


 参加者の男女があっさりと引き下がる。

 本当に初心者なら、多少のアドバイスを受けたところで大して変わらない。

 下手にアドバイスを禁止すれば、せっかくのカモが別の場所に行ってしまう。

 だから彼らは、ノノンへのアドバイスを認めることにした。


「パス」


「コール」


「レイズ」


「……えっと、コールです」


 ノノンがチラリと男に視線を向けつつ、手番を終わらせた。


「よし、次は手札交換だ。その手札なら……」


「ええっと、これですよね?」


「ああ、それだ。それを場に出せば、また新しいのと交換できるぞ」


 ノノンはカードを2枚捨て、新たなカードをディーラーから受け取る。

 そして2回目の賭けを行い、各自が手札を公開する。


「ワン・ペア」


「スリーカードよ」


「くそっ! ブタだ!!」


「へへっ。今回は俺の勝ちだな。なんと、フルハウスだ!」


 ノノン以外の参加者が次々にハンドを公開していく。


「……」


「どうした嬢ちゃん。俺の手には勝てないだろ? 悔しかったら何か言ってみな!」


「……」


 ノノンは何も言わず、ただ自分の手札を見つめているだけだった。


「ははは! やっぱりまだ早かったか。悪いな。初心者にはまだ早いゲームだった」


 フルハウスの男が勝ち誇った表情でそう言う。

 しかし……。


「……フォーカードです」


「な、なに!?」


 ノノンの手札を見て、男は驚愕した。

 なぜなら、彼女の手元には同じ数字の4枚のカードがあったからだ。


「そ、そんなバカな……」


「今回の勝負はそちらのお客様の勝ちとなります。それでは、こちらがお客様への配当でございます」


 ディーラーがノノンの前に、大量のチップを置く。


「こ、これって……」


「ああ。全てお前のものだ。やるじゃねえか! お前には才能があるかもな。これなら、借金完済も夢じゃないぜ!」


「……は、はい。ありがとうございます!」


 ノノンは、自分が勝ったことを未だに信じられなかった。

 しかし、目の前にある大量の金貨を見ると、これが現実だと認識させられる。


(ひょっとすると、本当に借金を返せるかも……。そうしたら、お父さんもお母さんも喜んでくれるはず……)


 現実離れした額を一瞬で稼いだことにより、ノノンは正常な判断力を失っていく。

 その傍らでは、アドバイスをしていた『闇蛇団』の男、そして他の参加者たちまでもが不気味な笑みを浮かべている。

 だが、勝利の余韻に浸るノノンがそれに気付くことはなかった。

読み終わったら、ポイントを付けましょう!

ツイート