【コミカライズ】無職だけど転移先の異世界で加護付与スキルを駆使して30年後の世界滅亡の危機に立ち向かう

~目指せ! 俺だけの最強ハーレムパーティ~
猪木洋平@【コミカライズ連載中】
猪木洋平@【コミカライズ連載中】

1504話 ある日の夕暮れ【桔梗side】

公開日時: 2024年9月12日(木) 12:06
文字数:1,348

 数日後。

 その日の稽古が終了し、タカシが帰途についたあと――


「がっはっは! 良いことが続くのう!!」


 道場の師範が大笑いをしている。

 孫娘である桔梗も上機嫌だ。

 しかし同時に、彼女の表情には少しだけ心配の色があった。


「お爺ちゃん、本当に大丈夫なの? 随分と張り切って稽古していたけど……。怪我の具合は……」


「なぁに、平気じゃよ。高志坊の治療妖術で、すっかり治ったわ! 見てみろ、この右腕を!!」


 師範は右腕をブンブン振り回す。

 どうやら、完治したというのは本当のようだ。


「良かった……。高志くんの治療妖術は本当にすごい。感謝してもしきれないね……」


 桔梗が微笑む。

 タカシは治療魔法の使い手だ。

 このあたりの地域では魔法よりも妖術の方が一般的であるため、治療魔法の使い手はやや珍しい。

 そのため、無闇に目立たないよう『治療妖術』と誤魔化して使っている。


「がっはっは! しかし、ほぼ我流とはいえ実戦的な剣術を会得している上、凄まじい闘気を持ち、さらには『治療妖術』をこれほどの精度で使いこなすとは……。末恐ろしいな、高志坊は……」


「ふふ……! 凄いでしょ……」


 桔梗がペッタンコの胸を張る。

 まだ12歳ということもあり仕方のない面もあるのだが、彼女はあまり胸が成長していない。

 タカシが宿屋で待機させている紅葉と比べると、大きく差をつけられている。

 だが、桔梗はまだその事実を知らないこともあってか、特に焦ってはいないようだ。


「ところで、本当に高志坊とは何もないのか?」


「な、ないよ……! 高志くんは、私の弟子ってだけ!」


「そうか……。それは残念じゃな……」


「残念って……。どこの生まれかも分からない人なのに、いいの?」


「構わん。儂は、強い男が好きなのじゃ! それに、桔梗もベタ惚れじゃろ?」


「べ、別にベタ惚れってわけじゃ……」


 桔梗は顔を真っ赤にする。

 そんな孫を見て、師範の口元が緩んだ。

 そのときだった。


 バァンッ!!

 道場の扉が乱暴に開け放たれた。


「何者じゃ!? こんな夕暮れ時に……」


「おやおや、本当に治ってるじゃありませんか。まさかとは思いましたが、これは驚きですねぇ」


 道場に現れたのは、これまでも桔梗にちょっかいをかけてきていた男たちだった。

 人数は10人以上。

 いつもよりも多い。


「……他流派の奴らか。何の用じゃ?」


「いえね? せっかく道場が潰れる寸前まで追い詰めたのに、師範の復帰が早まったと聞きましてね? これは、私どもとしても看過できませんから」


「はっ! 裏でコソコソ、ご苦労なことじゃのう! 返り討ちにしてやるわい!!」


 師範は鼻を鳴らす。

 だが、次の瞬間――


「きゃあ!?」


 桔梗が悲鳴を上げた。

 彼女が視線を向けると、数人の男たちが彼女を取り押さえている。


「き、貴様ら……!!」


「おっと! 動かないでくださいねぇ?」


 男の一人がナイフをちらつかせる。

 師範は歯ぎしりした。


「卑怯な真似を……!」


「何とでも言いなさい。『裏でコソコソ』、あなたが言ったことでしょう? 長期の療養で、勘が鈍っていたのではありませんか?」


「ぐぬぅ……」


 師範は唇を噛む。

 リーダー格の男が、勝ち誇った笑みを浮かべた。


「さて、あなたにはもう一度大怪我を負っていただきましょうか。……やれ」


 リーダー格の男が、仲間に向かって指示を出す。

 彼らはニヤニヤしながら、師範に襲いかかったのだった。

読み終わったら、ポイントを付けましょう!

ツイート