ミティがポーカーで一般客を相手に無双した。
そして、『闇蛇団』の幹部らしき変態五人衆が登場した。
カジノの用心棒的な存在だろう。
彼らは1人ずつ、ミティにポーカー勝負を挑むようだ。
ミティのパワフツかつアグレッシブな賭け方にどう対応するか、見ものである。
「5試合だ。5試合以内に嬢ちゃんの資金をゼロにすると予告してやろう」
幼女に踏まれるのが趣味の男が、堂々とそう宣言したのだが……。
「ぐあああぁっ! ば、バカなあああぁっ!?」
逆に5試合目でミティにトドメを刺され、資金がゼロになった。
「ふんっ!」
倒れ込んだ彼を、ミティが踏み付ける。
「はあ、はあ……」
彼はミティに踏まれて嬉しそうな顔をしていた。
ミティは呆れたように息をつく。
「変態の相手は疲れますね。次はあなたの番です」
「へえ……。思ったよりもやるじゃねえか。リミッターを3……いや4まで外してみるぜ」
好きな幼女は7歳と断言する、生粋のロリコン男が得意げに言った。
彼は腕に付けていたブレスレットのようなものを外すと、それを地面に放り投げた。
ドスッ!
小さな腕輪には不釣り合いな落下音が響く。
「それは……」
ミティが目を見開く。
「『重石の腕輪』というマジックアイテムでな。こんな小さな腕輪でも、重さは10キロ以上。普段はこれで力を制限してるってわけだ」
「なるほど……」
ミティが納得した様子で言う。
「んじゃあ、いくぜ!」
男がそう言ってミティにポーカー勝負を挑む。
だが……。
「ぎゃあああぁっ!?」
数試合目後、男は床に転がっていた。
「あなたはバカですか? ギャンブルに腕力は関係ないでしょう」
「そ、そうか! しまったああぁ……」
男は無念そうにうなだれた。
(だいじょうぶか? この組織……)
もうちょっと悪どい組織をイメージしていたのだが。
今のところ、ロリコンの変態しかいないじゃねぇか。
(いや、さっきトパーズから引き出した情報によれば、昨日も1人の幼女が奴隷に堕とされたらしい。こんな奴らでも、一般市民からすれば脅威の存在だ。しっかり摘発してやろう)
俺はそんなことを考えながら、引き続きミティの活躍を見届けることにした。
「ここまでの戦いでデータが揃いました。僕の勝率は96パーセント。なぜならあなたの戦法には致命的な弱点があるからです!」
3人目の変態……写真でしか幼女を愛でられない少年が、自信たっぷりに言う。
「ほう……。どんな弱点です?」
「勝負で思い知らせてあげます。いきますよぉっ!」
ミティと少年の戦いが始まる。
「僕はこの日のために、幼女の写真を集め、研究しました! そして、幼女の魅力を最大限に引き出すポーズも! 笑っている幼女、泣いている幼女、恥ずかしがっている幼女! この愛がある限り、僕は負けません! うおおおぉっ!!」
「……」
熱くなっている変態に、ミティが絶対零度の視線を向ける。
そして……。
「ぐはあっ!?」
数試合後、少年は床に倒れ伏していた。
「ば、バカな……。なぜ勝てないんだ……」
「幼女とやらへの愛が、ギャンブルにどう関係するのです……」
「ぐぬっ! ぼ、僕の愛が足りなかったというのか……。しかし、ノノンちゃんの写真を撮るまで、僕は負けるわけには……」
「変態の敗者はさっさと失せなさい! どりゃぁっ!!」
「ぐへあっ!」
少年はミティに投げ飛ばされ、壁際に転がった。
これで3人目。
幹部は残り2人か。
「素晴らしい……。しかし悲しいかな、嬢ちゃんは後悔することになるぜぃ。俺と戦う前に負けておけばよかったとな!」
幼女を泣かせるのが趣味という男が、不敵に笑う。
「……」
「やや年増だが、嬢ちゃんでも十分に許容範囲だ。さぞかしいい顔で泣いてくれそうだ。くくく……」
男が嬉しそうな表情を浮かべる。
そして……。
「いくぞ! これが俺の究極奥義……」
「うるさいっ! 死ねえええぇっ!!!」
ミティが容赦なくポーカーで瞬殺した。
「お前とは話す気にもなりませんっ!」
「ぐっはああぁっ!?」
ミティはとりわけこいつが気に入らなかったようだ。
まあ、踏まれるのが好きとか写真が好きなのはまだギリギリなくもないかもしれないが、泣き叫んでいる幼女が好きというのは、完全にアウトである。
「やれやれ。俺以外は全滅……まさか俺が引っ張り出されることになるとはな。こんなときのために”あれ”を温存しておいてよかった……」
最後の幹部がおもむろに立ち上がる。
「変態どももやっと最後ですね。覚悟してください!」
ミティの宣言通り、ついに戦いが始まった。
のだが……。
「うわああぁっ! こ、こんなハズではあああぁっ!」
男が叫び声を上げる。
ミティがあっさりと勝った。
奥の手がありそうな雰囲気はなんだったんだよ。
「ふんっ! 変態どもは滅びました! 正義の勝利です!!」
「「「「「く、くそぅ……」」」」」
ミティに言い負かされ、5人の幹部は悔しげにうつむいた。
(なんか思ってたより、ショボい連中だな……。その変態性は別として……)
俺は少し拍子抜けしてしまう。
戦闘能力では俺たちが勝っているので、いざとなれば武力行使するつもりで控えていた。
しかし蓋を開けてみれば、相手の土俵であるギャンブルで圧勝してしまったのだ。
これには拍子抜けせざるを得ない。
(いや、もしかすると闇の瘴気の影響か……?)
少しだが闇の瘴気の気配を男たちから感じる。
闇の瘴気に侵されると、自らの感情や欲望を増幅されてしまう。
それに伴い、正常な判断能力が低下する。
闇の瘴気の影響で、温厚なバルダイン陛下が人族の領域に侵攻した。
その際の彼の戦闘能力は低下していた。
だからこそ、当時Dランク冒険者だった俺でも勝てたわけだが。
こいつらも、闇の瘴気の影響で、ギャンブルに対する思考能力が低下していたのかもしれない。
(ま、だからと言って摘発することに変更はないわけだが。罪状や量刑は、捕らえた後にネルエラ陛下や騎士団が適切に判断してくれるだろ)
俺はそんなことを考えつつ、倒れ伏す幹部5人を眺める。
これで、総支配人のロッシュも出てくるはずだ。
「面白くなってきたな。おい、酒を追加だ! トパーズも飲め! 俺の奢りだ!!」
「も、もうほれ以上はぁ……」
「んん? 俺の酒を断るのか?」
「い、いただきまひゅぅ……」
トパーズはすでにベロンベロンに酔っている。
俺は彼女の胸と尻に手を回しながら、酒を楽しむ。
アルハラで彼女を行動不能にする作戦もそろそろ終わりでいいか。
あとは、総支配人のロッシュにミティが勝てるかどうかだな。
酒を飲みながら観戦させてもらうことにしよう。
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