冒険者ギルドにて、俺たちミリオンズの冒険者ランクやギルド貢献値の情報を受け取っているところだ。
俺、ミティ、アイリス、モニカ、ニム、ユナ、リーゼロッテの報告は受け取った。
残るは、サリエ、マリア、蓮華あたりだ。
受付嬢が口を開く。
「次は、サリエ様です。新たに特別表彰制度の対象者となりました。二つ名は”過剰治療”。ギルド貢献値は2000万ガルです」
受付嬢がそう言って、特別表彰の写真をこちらに見せてくる。
笑みを浮かべたサリエの写真だ。
可愛く柔らかい微笑みだが、よく見ると若干の迫力も感じる。
「過剰治療ですか……。何だか、物騒な二つ名ですね……」
サリエがそう言う。
彼女の治療魔法はレベル5。
抜群の回復力を誇る”オールヒール”や、過剰な治療の力により相手にダメージを与える”オーバーヒール”などを使える。
その中でも、過剰治療の力に着目された形だ。
「確かにな。完全治療や、聖女とかでもよかったかもしれないが」
「ええっと。確かに、ギルドでもそのあたりは候補に上がりました」
受付嬢がそう言う。
「それでも、最終的には却下されたと? 何か問題が?」
「はい。完全治療だと、不治の病に侵された者が押しかけてくる可能性がありますので」
ふむ。
俺がこの世界に来て治療魔法をなかなか強化しなかったのも、似たような理由だ。
治療魔法を目当てに押しかけれれると、困る。
「なるほどな」
治せるレベルの者ばかりであれば、手間はかかるが金は稼げるだろうし、大きな問題はない。
問題があるのは、治せないレベルの難病患者が来たときだ。
治療魔法レベル5のサリエとはいえ、何でもかんでも治せるわけではないだろう。
国中、大陸中から難病患者が押し寄せれば、サリエでも治療できない者が何人もいてもおかしくない。
その者たちに治療に失敗して死に至らしめたりすれば、サリエにとって大きな精神的負担となる。
彼女はまだまだ成長途上の身だし、過剰なストレスを与えることは百害あって一利なしだ。
”完全治療”の二つ名を避けた冒険者ギルドの判断は、一理あるだろう。
「また、聖女という名称を使うと聖ミリアリア統一教会がうるさいので……。アイリス様の”武闘聖女”のときにもひと悶着ありましたが、アイリス様ご自身がもともと聖ミリアリア統一教の信徒ということで事なきを得ました」
サリエは、聖ミリアリア統一教の信徒ではない。
確かに、彼女が聖女を名乗るとマズイかもしれないな。
「事情はわかった。サリエも、納得してくれたか?」
「はい。いずれは堂々と”完全治療”の二つ名を名乗れるように、今後もがんばりますね」
サリエがそう意気込む。
「さて、次に行きましょう。マリア様も、新たに特別表彰制度の対象者となっております。二つ名は”不死鳥”。ギルド貢献値は1400万ガルです」
受付嬢がそう言って、特別表彰の写真をこちらに提示した。
マリアが赤い炎……『不滅乃炎』を纏った写真だ。
翼を広げて、楽しげな顔をしている。
「わあい! ふしちょー? よくわからないけど、何だかカッコいいね!」
マリアが無邪気に喜ぶ。
「不死鳥だ。死なない鳥と書く。致死級のダメージを負っても炎とともに再生すると言われる、神秘的な鳥だな」
俺はそう補足説明をする。
不死鳥は、マリアのイメージにピッタリの二つ名だ。
冒険者ギルドのセンスも侮れない。
彼女は、HP強化レベル3、痛覚軽減レベル2、HP回復速度強化レベル5、自己治癒力強化レベル4のスキルを持っている。
彼女は生半可な攻撃では戦闘不能に陥ることはない。
また、彼女は治療魔法もレベル3にまで伸ばしている。
魔法による自身や他者の治療もお手の物だ。
加えて、火魔法は集中的に伸ばしてレベル5に達している。
本人の練度としては俺やユナに一歩劣るが、それでもスキルの補正力は偉大だ。
そこらの火魔法使いよりははるかに強力な攻撃魔法を扱える。
さらには、ファイアードラゴンのドラちゃんのブレスを受けた際に、術式纏装”不滅之炎”を習得した。
回復力と火魔法耐性が格段に向上する他、身体能力や魔法攻撃力などが全体的に向上する。
俺の”獄炎滅心”やモニカの”雷天霹靂”に負けず劣らずの、強力な技である。
ドラちゃんのブレスや、リカルロイゼのレインレーザーを食らっても無事に復活した実績がある。
「ふーん。”不死鳥”だね! 今度パパにも言ってあげようっと!」
彼女の父バルダインや母ナスタシア、それに兄のバルザックあたりはどういう反応を示すだろうか。
バルダインとナスタシアはかなりの放任主義だし、普通に喜んでくれそうだ。
バルザックはやや心配性でシスコンなところがあるので、”危ないことをさせるな”と文句を言ってくるかもしれない。
あと、ハーピィを”鳥”扱いするのはだいじょうぶなのだろうか。
人族を”猿”扱いしたり、犬獣人を”犬”扱いするのと同じ様な気がするが……。
冒険者ギルドが堂々と不死鳥の二つ名を付けているあたり、そのあたりはタブー視されていないのかもしれない。
実際にマリアも気にしていないしな。
一応、バルダインやナスタシアに報告するときには慎重に様子を見ることにするか。
「さて。ミリオンズの皆さまに関する報告は以上です。ところで、そちらの蓮華様は……」
受付嬢が蓮華に視線を向ける。
「ああ。彼女は新たにミリオンズに登録してもらうことになったのだ。なあ? 蓮華」
「うむ。たかし殿たちに同行すれば、拙者もより高みを目指せるでござるからな」
彼女には加護(小)を付与済みだ。
それだけでも十分な強化量だが、通常の加護を付与できればさらなる強化が見込める。
彼女とは今後も末永く仲良くしていきたい。
この場でミリオンズに登録してもらおう。
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