「紅葉ちゃん。君は、どうしたい?」
「え……?」
彼女は驚く。
だが、俺はさらに続けた。
「君の本当の気持ちを聞かせてくれ」
「……私の、気持ち……」
紅葉は考える。
そして、ゆっくりと口を開いた。
「私は……村には戻りたくありません。できれば、高志様に付いていきたいです……」
「そうか……」
俺は小さくうなずく。
そして、少年の方を向いた。
「だそうだ」
「な、なんだと!? 紅葉、今までの恩を忘れたのか!?」
「ひっ……」
「おっと、そこまでにしておけ。援助に対して見返りを求めるのは当然だが、あまりカッコよくはないぞ」
少年が紅葉に詰め寄ろうとしたため、俺は背中に彼女を庇う。
そして、刀を抜いた。
「て、てめぇ! 何の罪もない、俺に刀を向けるつもりか!?」
少年が言う。
彼は……12歳ぐらいか?
度胸はさほどないらしく、俺の刀を見て動揺している。
そんな彼に対して、俺は静かに答えた。
「別に、罪の有無は関係ないな」
「なんだと!?」
少年の表情が怒りに染まる。
だが、俺は構わず刀を突き刺した!
「がはっ!?」
少年の腹に刀が突き刺さる。
俺は刀を捻り、傷口を抉った。
少年は悶え苦しむ。
そして、その場に倒れた。
「……ふぅ」
「え? ま、まさか殺してしまうなんて……」
紅葉は震えながら言う。
俺はそんな彼女に笑いかけた。
「心配いらないさ」
「……え?」
「峰打ちだ」
「いや、もろに刺さってましたけど!?」
紅葉がツッコむ。
確かに、思い切り刺さっていたな。
「殺してはいないってことさ。俺が彼を突き刺したことには、事情がある」
俺は言う。
そして、少年に治療魔法をかけた。
「彼には闇の瘴気が取り憑いていた。俺の刀でそれを祓ってあげたんだ」
「闇の瘴気……ですか?」
「ああ。放っておけば、彼はさらなる暴走状態になっていただろう」
俺はそう説明する。
そして、少年を担いで歩き始めた。
「あの、高志様? どこに行かれるのですか?」
「ん? ああ、村に行くんだ。さすがに放っておくわけにはいかないからな」
「でも……その……」
「紅葉ちゃん、俺を信じてくれ。決して悪いようにはしないから」
「は、はい」
少女はうなずく。
そんな少女に、俺は言った。
「俺が瘴気を祓ったことで、これから少年の暴走状態は緩和されるはずだ。しかし、根本的解決にはなってない」
「根本的……ですか?」
「ああ。君の村は食料不足なのだろう? そして、君は村での立場が低い。違うか?」
「は、はい……。その通りです」
少女はうなずく。
俺はさらに続けた。
「闇の瘴気は、そこらの魔物から伝染することもある。一時的に少年が大人しくなっても、いずれまた君に迫ってくる可能性は高い。村での環境がそれを後押ししてしまう」
「そんな……」
少女の顔が暗くなる。
そんな少女に、俺は微笑みかけた。
「だから、問おう。気絶しているこの少年を村に返したあと……君さえよければ、俺と共に来てくれないか?」
「えっ……?」
「俺は城下町に向かおうと思っている。道案内は欲しいところだったんだ」
「えっと、その……」
少女は返答に困っているようだ。
そんな彼女に、俺は言った。
「もちろん、無理にとは言わない。だが、俺は君を見捨てたくない。だから、できれば一緒に来てほしいんだ」
「高志様……」
少女の顔が明るくなる。
彼女は満面の笑顔を俺に向けた。
「はい! 私を、高志様の旅に連れて行ってください!!」
こうして、俺は新たな仲間を手に入れたのだった。
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