孤児院を訪問しているところだ。
ミティとロロから、孤児院の冒険者志望の少年少女たちにプレゼントがある。
「これは、ロロちゃんが作ったものです」
「…………(コクッ)」
ミティが子どもたちに説明し、ロロが無言でうなずく。
ミティが鍛冶を行う際は、基本的に実家があるガロル村に帰る。
慣れ親しんだ炉の方が良質な武具が打てるからだ。
しかし、それが必須の条件というわけでもない。
ハガ王国やリバーサイドでも、炉を借りて武具を作成したことはある。
ミティの腕なら、あまり慣れていない武具でもきちんとしたものを仕上げることができる。
”弘法は筆を選ばず”というやつだ。
「では、布を取りますね」
「…………(こくっ)」
子どもたちが固唾を飲んで見守る中、2人が包んでいた布を取り去る。
「おぉ~!?」
「わぁ!」
「すげえ!」
中から現れたのは、いくつかの武具である。
このラーグの街には少し前にミティ用の炉を確保した。
そこを使って、ミティの指導のもとロロがこれらの武具を作成したのだ。
ロロは幼い割に力が強いとは思っていたが、どうやら少しドワーフの血が混じっているらしい。
遺伝なのか偶然なのかはわからないが、彼女には鍛冶の適正もありそうだったので、ミティの下で鍛冶師見習いとして鍛えているところだ。
ミティの作ったものに比べるとまだまだ粗削りだが……。
それでも、しっかりとした作りの武器に仕上がっている。
「これって……」
「うん……、剣だよね?」
「こっちにはハンマーや防具もあるぜ」
「こんなすげえ装備を使えたら、ファイティングドッグなんてイチコロだろうなあ」
子どもたちが目を輝かせてそう言う。
「ロロちゃん、みんなに言うことがあるでしょう?」
ミティがロロにそう促す。
「…………(こくっ)」
彼女が真剣な表情をして、一歩前に出る。
そして、みんなの方へ向き直る。
「…………これは、みんなのために用意した。ぜひ使ってほしい……」
ロロがそう言う。
それを聞いていた子どもたちは、目を見開いて驚いた。
「ええっ!? ロロちゃんが、私たちに用意してくれたの?」
「ロロ、すげえじゃねえか!」
子どもたちが口々にそう言う。
「…………うん。みんなが武具を欲しがっていたのは知っていたから……」
ロロがそう言う。
武具を揃えて冒険者として働くのは、子どもたちにとって1つの憧れの職業らしい。
しかし、実際にはいくつかの問題点や障害があり、冒険者として活動を始める者の比率はそれほど高くない。
問題点の1つは、もちろん危険度の高さだ。
俺たちミリオンズはチートの恩恵を受けているので比較的安全に活動しているが、普通はもう少し危険な職業である。
ファイティングドッグなどの低ランクの魔物ばかりを狙えば安全だが、その場合は稼ぎが少なくなる。
駆け出しの頃に実戦経験を積む目的であればともかく、稼ぎを目的としたファイティングドッグ狩りは微妙だ。
安全な街中でも、同等かそれ以上に稼げる仕事はいくらでもあるしな。
他の問題点もいくつかあるが、孤児院出身の少年少女にとっての最大の障害は初期費用の高さだろう。
剣や防具を揃えようとすれば、安価なものでも金貨10枚以上はかかる。
彼らにとっては非常に重い負担だ。
もちろんファイティングドッグ相手なら格闘やその辺の木の棒で倒せなくもないが、それはチートの恩恵を受けている俺だから可能なことである。
駆け出し冒険者がまともな装備を整えない場合は、ファイティングドッグ相手であってもそれなりに危険である。
今回はロロからの希望とミティの許可により、冒険者志望の孤児院の少年少女たちに武具を用意してあげることにしたのだ。
「やったー!」
「ありがと!」
「嬉しいです!」
「ありがとうございます!」
少年少女が口々にそう言う。
「みんな、ロロに感謝するようにな。それに、ミティもありがとう」
「いえ、私はやり方を教えただけですので」
ミティがそう謙遜する。
確かに、彼女からの技術指導や炉の貸し出しはあったものの、材料費や実作業はロロが負担した。
少年少女からの感謝は、基本的にロロに向けられるべきだろうな。
「よし! 今日はロロの武具完成を盛大に祝おう! みんな、パーティの準備だ!」
俺はそう言って、アイテムバッグの中から食材やジュースを取り出す。
シスターや子どもたち、それにミティやアイリスたちにも手伝ってもらいながら、みんなでお祝いの準備をした。
さっそくみんなで飲み食いを始める。
「ふふ。ハイブリッジ騎士爵様からこんなにご配慮をいただけるのも、ロロちゃんががんばってくれたおかげねえ」
シスターが微笑みながら、ロロの頭を撫でる。
「ロロちゃん、ありがとうね!」
「ロロ、お前はすげえよ!」
「見てな。もらったこの剣で稼いで、俺もここにお金を入れられるようになっからよぉ!!」
少年少女たちが口々にロロに声を掛ける。
「…………(にこにこ)」
ロロは非常に嬉しそうだ。
彼女はシスターのことを親同然に思っているようだし、孤児院の仲間たちのことは兄弟姉妹のように思っているようだった。
みんなの笑顔が見れて、大満足といったところだろう。
シスターや少年少女たちの感謝の心は概ねロロに向けられているが、間接的に俺にも向けられている。
それぞれの忠義度が増加傾向だ。
忠義度30超えをチラホラと見かける。
今後に期待だ。
そして、張本人のロロの忠義度は……。
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