ミティと初めて1つになった次の日。
今日も冒険者活動は休みとした。
やることがあるのだ。
具体的には、借金返済の件と、転移魔法陣の件がある。
まず、ラーグ奴隷商会への借金の返済の件だ。
今の俺たちの資金は、金貨200枚ほど。
ここで、俺たちの所持金の推移を整理しておこう。
この街に帰ってきた時に所持していたのは、金貨200枚ほどだった。
その後、バルダインからもらった魔石を金貨200枚ほどで売却した。
モニカに金貨200枚を貸し出した。
モニカとニムの装備費などに金貨数十枚を使った。
普段の生活費で少しずつ使用した。
普段の冒険者活動で少しずつ稼いだ。
俺の治療回りで多少の稼ぎを得た。
そしてつい先日、潜入作戦の報酬を受け取ることができた。
俺、ミティ、アイリスで金貨150枚ほどだった。
潜入作戦の依頼を受けたのはゾルフ砦でだったが、受け取りはラーグの街でもできる。
各地の冒険者ギルドは提携しているからな。
その結果、今の俺たちの所持金は金貨200枚になっているというわけだ。
正直、資金の管理の仕方をまちがえた気がする。
誰の活躍によりどれだけの報酬金を得たか。
誰のためにいくら金を使ったか。
そのあたりがごちゃごちゃになっている。
把握しきれない。
これはリーダーである俺のミスだ。
幸い、ミティ、アイリス、モニカ、ニムの4人からは特に不平不満が出ていないが。
ミティとは昨日確かな絆を結んだし、もはや家族といってもいいだろう。
ミティと俺の財布をいっしょにすることには問題ない。
他の3人はどうか。
パーティとして活動しているし、加護もついている。
家族に近い存在といえるだろう。
彼女たちも、俺やミティと財布をいっしょにしてもらってもいいかもれない。
そのほうがスッキリする。
懸念事項としては、モニカへの貸し出し金の扱いだ。
家族になって貸し借りを帳消しにすることは、俺は構わない。
また、ニムは当時はパーティに加入していなかったので、モニカへの貸し出し金ついては関係がない。
アイリスがどう思うかだ。
モニカへの貸し出し金は、パーティ資金から出している。
そこはアイリスも同意してくれていた。
とはいえ、その貸し出しの返済を免除するとなると話は別だろう。
そのあたりは、一度パーティのみんなで話し合う必要がある。
うーん。
まあ、俺の考えすぎかもしれないが。
細かい貸し借りや報酬の差額など気にならないほど、稼げばいいのだ。
ステータス操作のチートの恩恵がある俺たちなら、それも可能だろう。
金貨の100枚や200枚などはした金と言える日が来ることに期待しよう。
とりあえず、ラーグ奴隷商会への俺の借金はいくらか返済しておきたい。
返済の意思を示すためだ。
利子もあるしな。
●●●
奴隷商会に到着した。
怖い顔のいつもの門番がいる。
「いらっしゃいませタカシ様。武器はこちらでお預かり致します」
武器を預け、店内に入る。
若い店員に案内され、応接室に通される。
ソファに座る。
お茶が出される。
「お待たせしましたタカシ様。この街へ戻って来られたのですね」
店長が部屋に入ってきて、そう言う。
「はい。1か月ほど前に戻ってきました。少しゴタゴタしていて、こちらに来るのが遅れてしまいました」
「噂は聞いておりますよ。この短期間でCランクになられたとか。ゾルフ砦のほうであった戦闘でも、大活躍だったそうではないですか」
「いえ。たまたま活躍の機会に恵まれただけです」
さすが、大きな奴隷商会の店長をしているだけはある。
なかなかの情報網を持っているようだ。
この様子だと、俺がこの街に戻ってきていたことも事前に知っていたのだろう。
「ミリオンズの皆さまが、Cランク、Bランクへと昇格されていくことを期待していますよ。……ところで、本日はどのようなご用件でしょうか?」
「借金の返済にきました。まだ全額ではありませんが……」
「かしこまりました。着実な返済、ありがとうございます。今回はいかほど返済されるおつもりでしょうか?」
手持ちの金貨は200枚。
日本円でいえば、200万円ほどだ。
パーティが5人になったし、余剰資金は多めに残しておきたい。
近いうちに、ガロル村とやらに行くつもりだしな。
どういう状況で金が要りようになるかわからない。
「今回は、金貨100枚を返済したいと思います」
俺の残りの借金は、利子を含めて金貨300枚になっている。
キリがいいので、今回は金貨100枚を返済しておくことにする。
このあたりは、パーティのみんなにも相談済みだ。
「かしこまりました。タカシ様のご活躍は、私どもの想像以上ですな。この調子ですと、3年と言わずに今年中の完済もありえますな。いえ、別に急かしているわけではありませんが」
以前返済したのは、確か5月初旬だった。
今日は9月2日。
4か月経っている。
その結果金貨100枚を返済しているのだから、月々金貨25枚以上を稼いでいることになる。
改めて計算してみると、それほど稼いでいるわけでもないな。
まあモニカへ大金を貸し出したし、日々の生活費や冒険者としての必要経費もあるしな。
店長が、若い店員と何やら話す。
若い店員が部屋から出ていった。
「ただいま、返済証明書の発行の手続きをしております。しばらくお待ちください」
「わかりました」
このあたりは以前も同じ流れだった気がする。
しばらく待つ。
店長と情報交換を兼ねた雑談をしているうちに、若い店員が部屋に戻ってきた。
若い店員が店長に書類を渡す。
「では、準備が整いましたので、返済の手続きに入りたいと思います。まずは、今回返済されます金貨100枚をお出しいただけますか?」
「わかりました」
アイテムボックスから金貨100枚を取り出す。
机の上に置く。
「こちらで金貨100枚になります」
「はい。……確かに、100枚ありますな」
店長が金貨を数える。
無事に数え終えると、書類に何やら書き込み、印鑑を押した。
「では、こちらが返済の証明書になります」
1枚の紙を渡された。
重厚感のある特殊な紙だ。
内容を読む。
俺が金貨100枚を返済し、残りの借金が金貨200枚になったことが記されている。
店長のサインと、ラーグ奴隷商会の印鑑も押してある。
以前もらった証明書と同じような様式だ。
「そちらにタカシ様のサインをお願いいたします」
拒否する理由もないので、サインする。
「それでは、以上で一部返済の手続きを終了とさせていただきます。この度は、迅速な返済、ありがとうございました」
「いえ。今後も確実に借金を返済していくつもりですので、よろしくお願いします。またこの街を離れる予定ですので、次回の返済はしばらく後になるかと思いますが」
「承知しました。私どもとしましては、タカシ様の完済は確信しておりますので、全く問題ありません。ご活躍をお祈りしております」
店長がそう言う。
無事に借金の一部返済が終わった。
ラーグ奴隷商会を後にする。
次の用事を済ませよう。
転移魔法陣の件だ。
読み終わったら、ポイントを付けましょう!