「ではこれより、戦犯の審議を行う」
俺は家臣団に向けて宣言する。
ここは桜花城3階にある一室だ。
城内にある部屋の中でも広めに造られている。
俺が桜花城を攻め落とす以前は、景春によって宴会が開かれたりもしていたらしい。
今回は、そこに家臣団100人ほどを集めている。
俺の座る上座から一段下がったところには、並んで座る2人の人物。
桔梗と早雲だ。
近接戦闘のスペシャリストであるこの2人が俺の近くに控えることで、家臣団を牽制している形になる。
少し離れたところには紅葉がいる。
もし俺が曲者によって襲撃されても、桔梗と早雲に足止めされ、紅葉の植物妖術によって無力化されることになるだろう。
流華、黒羽、水無月の姿は見えないが、屋根裏や床下などに隠れているはず。
まさに盤石な体制だ。
「まず、前任の桜花七侍は無罪放免とする。無月、前に出てこい」
「はは!」
俺の言葉を受けて、無月が上座に上がる。
その姿を家臣団の一部が険しい表情で睨みつけている。
無理もない。
桜花七侍と言えば、桜花藩が保有するトップ戦力。
謀反者である俺を排除して景春が藩主に返り咲くためには、七侍を味方に引き入れることが必須だ。
しかし現実は、謀反者の指示に大人しく従い、そのまま家臣に納まる気配を見せている……。
景春に忠誠を誓っていた家臣団の一部からすれば、面白くないだろう。
「お前には、引き続き桜花七侍としての働きを期待している。よろしく頼むぞ」
「はっ! 主の御心のままに!!」
無月が勢いよく頭を下げる。
俺に忠誠を誓っているのは、一目瞭然だな。
さて、次は……
「雷轟、金剛、夜叉丸、蒼天、巨魁。前に出てこい」
「「「はっ!」」」
俺の呼びかけに応じて、5人の男が上座に上がってくる。
一癖も二癖もある連中だが、実力は確かだ。
こいつらが俺に従うか、反目して出奔するか、あるいは面従腹背で虎視眈々と下剋上を狙うか……。
それにより、俺が桜花藩を統治する難易度は大きく変わる。
「お前たちも、無月と同様だ。桜花七侍として引き続き働いてもらう。俺に対して忠誠を尽くすように。いいな?」
「「「御意!」」」
5人が頭を下げる。
彼らの懐柔は少し苦労したりもした。
実利や感情に訴えかける形で交渉を進め、最終的には『とある条件』で俺への忠誠を約束させることができた。
しかし、完全に油断することはできない。
人間なんてものは、状況が変わればいくらでも心変わりをするものだからな。
そういったリスクを限りなく小さくさせるには、大元をしっかりと排除せねばならない。
具体的には……
読み終わったら、ポイントを付けましょう!