雷鳴流の道場は、町外れにある。
周囲は人通りも少なく、静かだ。
俺は道場の門前に立っていた。
「門は閉まってるな……」
門は固く閉ざされている。
だが、この程度で諦めるわけにはいかない。
「【一刀流居合・獅子奮迅】」
俺は居合の構えを取り、一閃する。
すると門が真っ二つに切断された。
「よし……!」
これで中に入れる。
そう思ったのだが……。
「む?」
中から、一人の大男が姿を現した。
男は鉄製の棍を持っている。
「何者だ?」
「我が名は金剛。桜花七侍の一人、金剛だ」
大男が名乗る。
桜花七侍とは、桜花藩の藩主に仕える武闘派の七人衆のことだ。
その中の一人が、この男らしい。
「そうか。俺の名は――」
「興味はない。聞くまでもない」
金剛と名乗る男は、棍を振りかぶる。
「我は駒。ただ、主の命に従うのみ」
「そうか……。なら、押し通る!」
俺は刀を構え、金剛に突撃する。
そして、すれ違いざまに一閃を放った。
「……その程度か?」
金剛が笑う。
俺の一撃は、彼の頑強な肉体の前に弾かれた。
「なん……だと……?」
「我の鋼の肉体には、貴様の刀など通用せんわ!」
金剛が棍を振り下ろす。
その一撃を俺はバックステップで回避した。
「ふむ……。身のこなしは悪くないな」
金剛は棍を構え直す。
そして、俺に向けて再び突進してきた。
「はあっ!」
俺は刀を振り抜く。
だが、その攻撃も鋼の肉体に阻まれてしまった。
「く……」
「無駄だ! 貴様の攻撃など、我には効かん!!」
金剛は棍を振り回す。
俺はその攻撃を刀で受け止めた。
「ぐっ……!」
重い一撃だ。
近接戦では分が悪いな……。
桜花七侍とやらの強さは未知数だったのだが、ここまでの強さとは……。
「ふん!」
金剛がさらに力を込めてくる。
俺はその勢いに押され、後方に吹き飛んだ。
「っ……!」
「どうした? もう終わりか?」
金剛は余裕の表情を浮かべている。
だが、俺は諦めない。
「まだだ……!」
俺は立ち上がり、刀を鞘に収めた。
そして、闘気を開放する。
「【一刀流居合・師資相承(ししそうしょう)】!!」
「む……?」
俺の刀に、闘気が纏わりつく。
そして、俺は抜刀した。
「……っ!」
金剛が咄嗟に防御態勢を取る。
だが……。
「ぐはっ……!」
金剛の体が吹き飛んだ。
俺の居合斬りが、彼の肉体を斬ったのだ。
「な、なんだ……!? この力は……?」
「これこそが武神流の秘奥義の一つ。師資相承だ」
俺は言う。
一刀流居合・師資相承……。
この技は、武神流の歴史の中、師から弟子へと受け継がれてきた。
長い年月をかけて練り上げられてきた、武神流の秘技だ。
「師資相承……!? そんな、馬鹿な……!!」
「この技は、長い歴史の中で磨き上げられてきた。お前に破れるものか」
俺は再び剣を構える。
今の一撃で、金剛の体には大きなダメージが入ったはずだ。
しかし……。
「甘いな……! 貴様の実力は認めよう。武神流の歴史もな。だが、やはり時間が足りなかったようだ。歴史を積み重ねた技を十全に活かせておらん……!!」
金剛が叫ぶ。
彼の言うことにも一理はある。
この技は歴史の積み重ねによって磨き上げられたものだ。
だが、それは裏を返せば、長い年月をかけなければ完成しないということでもある。
俺は桔梗や師範と出会ってから、まだ1か月も経っていない。
その程度の時間で完成する技ではないのだ。
「ぬぅん!」
金剛が棍を振りかぶる。
それを見て、俺は迎撃の態勢をとるのだった。
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