明朝、西の門で3人と合流する。
「おうタカシ。なかなか早いじゃねェか。この食料と野営道具をアイテムルームに入れてくれ」
ドレッドに言われた通りにアイテムルームに詰め込んだ。
天幕はやや大きいが、全体的にそれほど量はない。
まだまだアイテムルームに空きはある。
「あら、まだ入るの? じゃあこれも入れてちょうだい」
余裕な顔をしていると、ユナに矢の収納を頼まれた。
2日目以降の分で、今日は使わないらしい。
「…………これも頼む」
さらにはジークからも収納を頼まれた。
替えの革製の鎧だそうだ。
荷物を追加されたが、まだ余裕はある。
アイテムルーム発動分で常時消費するMPよりも、自然回復するMPのほうが多い。
しばらくして周囲を見ると、他にもパーティが2組集まっていた。
4人パーティと5人パーティだ。
出発前に自己紹介タイムが始まった。
個人的には苦手なのだが、やらないわけにもいかない。
まずはうちのパーティからだ。
「“赤き大牙”のリーダー、ドレッドだ。俺の武器はこの大剣だ」
「ユナよ。弓を使うわ」
「…………ジークだ。盾で攻撃を引き付ける」
「タカシです。剣で戦いますが、火魔法も少し使えます」
アイテムルームのことはわざわざ言う必要もないだろう。
どうせこのパーティの分しか運べないし。
火魔法のことは隠さずに話しておいた。
どうどうと使ってガンガンレベルを上げていきたい。
他のパーティの自己紹介も始まった。
4人パーティはDランクの“黒色の旋風”。
20代の男達のパーティだ。
3人が剣士で、黒みがかった鎧を着ている。
1人はポーターだ。
大きなバッグを背負い、簡易の荷車も用意している。
5人パーティはCランクの“蒼穹の担い手”。
男3人と女2人だ。
リーダーの男は30代くらい。
Cランクで、槍を使う。
女の1人もCランクで、中位の水魔法を使えるらしい。
全員の自己紹介が終わったところで、それぞれのリーダーが集まって何か相談している。
どうやら隊列を決めているらしい。
最も戦闘能力の高い“蒼穹の担い手”が先頭。
パーティバランスの良い“赤き大牙”が中央。
そして“黒色の旋風”が後方。
こういうことになった。
森への移動を開始する。
パーティ間の間隔は数十メートルといったところか。
道中にも数匹魔物が現れたが、問題なく討伐された。
2時間ほど歩き、ようやく森の端に入る。
森の中に野営に適した場所があり、まずはそこを目指すようだ。
魔物との遭遇が増えてきた。
ほとんどの魔物は先頭の“蒼穹の担い手”によって無事討伐されている。
彼らはアイテムバッグを所有しているようだ。
素材のほとんどを収納していく。
あまり金になりそうな部位は残されていない。
あわよくば残り物を俺が頂いておこうかと思ったのだが、残念だ。
「戦闘が少ないからって油断すんじゃねェぞ。脇からの襲撃もある」
ドレッドにそう注意される。
しばらく歩いていると、横の茂みからゴブリンが2匹跳びだしてきた。
「さっき“蒼穹”が戦っていた残党かしらね。2匹程度大したことはないわ」
「ちょうどいい。1匹はタカシが戦ってみろ。もう1匹は俺が倒しておくから」
ゴブリンとの初戦闘だ。
見た目が人型なので、ファイティングドッグとはまた違った緊張感がある。
手には木の棍棒を持ち、こちらの様子を伺っている。
よし、相手が動かない内に、火魔法を使ってみよう。
MPにもまだまだ余裕がある。
心の中で詠唱を開始する。
右手を前方にかざし魔法を発動させる。
「ファイアーボール!」
手のひらあたりから火の玉が発射される。
速度は、うーん……まあまあかな。
時速60kmってところか。
油断してたら当たるが、注意してたら避けられてしまいそうだ。
幸い、ゴブリンには当たった。
熱で苦しんでいる様子だが、1発では倒し切れないようだ。
ま、ちょっと距離があったしな。
続けて心の中で詠唱を開始する。
右手の人差し指を前方に伸ばし魔法を発動させる。
「ファイアーアロー!」
指先あたりから火の矢が発射される。
速度はファイアーボールよりも格段に速い。
ゴブリンに見事に命中し、動かなくなった。
ちなみに、発声や手の形はただのイメージ補助だ。
しようと思えば、無言でも剣を構えたままでも問題なく発動できるはずだ。
多少安定感は落ちるが。
周囲を見てみると、ドレッドの戦闘も終わっていたようだ。
「ほう。なかなかの火魔法じゃねェか。それに加えて剣とアイテムルームも使えるとはな」
「ふふん。なかなかの才能ね。ちゃんとアイテムボックスの分のMPは温存しておきなさいよ?」
MPが少しだけ減った感覚がある。
ファイアーボールとファイアーアローの燃費はなかなか良さそうだ。
しかし念のため、しばらくは剣で戦うことにしよう。
その後も数回ゴブリンとの戦闘があった。
クレイジーラビットとは遭遇しなかった。
昼をいくらか過ぎたころに、野営地に到着した。
リーダー達が何やら相談している。
少し離れたところで待機していると、ユナからこう説明された。
「ここを拠点に5日間狩りをするのよ。アイテムボックスのMPがきつければここに出しておけばいいわ。日中は、日替わりで1組のパーティが野営地の番をして、他のパーティは自由に狩りね。夜は協力して夜警。たぶん今ごろ詳しく詰めているんじゃないかしら」
しばらくしてドレッドがこちらに来た。
「夜警について話してきた。各パーティを3組に分けて、分担して警戒にあたる」
詳しい説明を受ける。
整理すると、こんな感じだ。
最初は、蒼穹2人・大牙1人・旋風1人。
次に、蒼穹2人・大牙1人・旋風1人。
最後に、蒼穹1人・大牙2人・旋風1人。
旋風のポーターの人は免除らしい。
どうせ戦えないしな。
軽く腹ごなしをしてから、俺達4人は狩りに出かける。
蒼穹の担い手は、野営地に残るようだ。
しばらく散策し、クレイジーラビットと遭遇した。
可愛らしい生き物だ。
あんまりクレイジーという感じはしない。
「可愛いからって油断したらダメよ。毎年死傷者も出てるんだから」
ユナがそう忠告してくる。
「…………我に任せよ」
ジークが1匹に攻撃を加えた。
するとたちまち、クレイジーラビット達は凶暴で狂ったような顔つきになった。
一斉にジークのもとに向かい、攻撃を加えている。
なるほど、確かにこれはクレイジーだ。
俺が襲われたらと思うと、恐ろしい。
「おう。ボサっとすんじゃねェ。ジークが攻撃を引き付けている今のうちだ」
ジークの周りに殺到しているクレイジーラビットをどんどん討伐していく。
こちらが攻撃を加えてもほとんど見向きもしない。
ひたすらジークを攻撃している。
無事に全て討伐を終えた。
途中でレベルが7に上がった。
ジークを見ると、金属鎧のあちこちに新たな傷ができている。
体に大きな傷はなさそうだが、息があがって疲れている様子だ。
「おう。ジークよくやったな。体は大丈夫か?」
「…………問題ない」
「ふふん。私が数をずいぶん減らしたからね。タカシ、クレイジーラビットの死体をアイテムルームに収納しておいてちょうだい」
クレイジーラビットを収納していく。
恐ろしい形相で死んでいる。
今にも動きだしそうな気配すら感じる。
怖いのでさくさく入れていく。
「今日の狩りはそろそろ終わりにするか。薄暗くなってきやがった。夜の森は段違いに危ねェ。早めに切り上げよう」
「そうね。ジークも疲れているだろうし。初日から無理する必要はないわ」
野営地に戻ってきた。
黒色の旋風もほぼ同時だ。
蒼穹の担い手が出迎えてくれた。
夕飯を食べて横になる。
俺の夜警の担当は最後だ。
それまではゆっくりと寝ておこう。
おっと、その前にスキル振りだ。
今のスキルポイントは20。
「MP強化レベル3」「MP消費量減少レベル1」「MP回復速度強化レベル1」「火魔法レベル3」。
候補はこのあたりだ。
消費するスキルポイントはすべて10。
少し考え、「MP消費量減少レベル1」と「火魔法レベル3」を取得した。
MP消費量減少レベル1は、3分の1の減少量のようだ。
つまり、本来MPを9ほど消費する魔法を発動する場合、このスキルを持っていると6で済むというわけだ。
火魔法レベル3は、「ファイアートルネード」。
指定した点に、5m×5m×10mくらいの火の竜巻を発生させる。
指定する点は、あまり自身から遠くにはできない。
高さのある攻撃だ。
ヘタをしたら森林火災になりそうだな。
使いどころは考えないと。
威力は高いが、消費MPが大きい。
範囲と威力は、多少は自分で制御できるようだ。
MP消費量減少のスキルにより、MPに余裕ができた。
明日はファイアートルネードでどんどんゴブリンを討伐していくのが理想だ。
レベル7、たかし
種族:ヒューマン
職業:剣士
ランク:E
HP:57(44+13)
MP:60(30+30)
腕力:26(20+6)
脚力:25(19+6)
体力:62(27+8+27)
器用:31(24+7)
魔力:27
武器:ショートソード
防具:レザーアーマー、スモールシールド
残りスキルポイント0
スキル:
ステータス操作
スキルリセット
加護付与
異世界言語
剣術レベル3
回避術レベル1
MP強化レベル2
体力強化レベル2
肉体強化レベル3
火魔法レベル3 「ファイアーボール、ファイアーアロー、ファイアートルネード」
水魔法レベル1 「ウォーターボール」
空間魔法レベル2 「アイテムボックス、アイテムルーム」
MP消費量減少レベル1
称号:犬狩り
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