「第6試合を始めます! 東の島国出身のサイゾウ選手対、ディオン道場のストラス選手!」
サイゾウとストラスの試合だ。
優勝予想の倍率は、サイゾウが10倍に対して、ストラスが7倍。
サイゾウは忍者っぽい感じの人だ。
忍術が見れるかもしれない。
ストラスは神脚の勇者とやらをリスペクトしている選手だ。
足技を得意としているらしい。
モニカと同じ兎獣人だ。
「両者構えて、……始め!」
試合が始まった。
まずはお互いに牽制しつつ、互角の応酬をしている。
ストラスの方が移動速度は上だ。
最初に仕掛けたのはストラスだ。
「ワン・エイト・マシンガン!」
ストラスが一瞬の間に無数の蹴りを繰り出す。
技名的に18発の蹴りだと思うが、俺の肉眼では捉えきれない。
「ぬぅ……」
サイゾウはストラスの蹴りを視認できているようだ。
何発かはくらったが、全体として大きなダメージはなさそうだ。
ストラスは、脚力を活かした闘いをしている。
高い機動力と、足技による連打性の高い攻撃。
対してサイゾウは決め手に欠けている印象だ。
数分間の攻防の後、サイゾウが体勢を崩した。
「スキありだ!」
ストラスが大きめのモーションでキックを繰り出す。
キックがサイゾウにクリーンヒットした。
ストラスがにやりと笑う。
「とった!」
ん……?
確かにストラスのキックがサイゾウに当たったように見えたが。
これは……。
「残像だ」
「え? ぐはっ……」
サイゾウがいつのまにか躱していたようだ。
超速で動いたのか。
それとも変わり身の術みたいな技術があるのだろうか。
そういえば彼の名前は忍者っぽいしな。
たまたまか?
ストラスは吹き飛ばされ、大きなダメージを負った。
何とか立ち上がり、戦闘続行の構えだ。
「む? まだ粘るか。なかなかの耐久力だな」
「ちっ。油断したぜ。貴様、力を隠していやがったな」
「奥の手は隠すものだ。それに、力を隠しているのはお主もだろう?」
「ふん。気づいていやがったか。しょうがねえ、見せてやるよ」
ストラスの闘気が足に集中していく。
「いくぜ! 鳴神-ナルカミ-!」
ストラスの姿が消えた。
いや、高速で移動しているだけか。
かなりのスピードだ。
あの足さばきは……。
なるほど。
参考にできるかもしれない。
覚えておこう。
「こ……このスピードは……!」
「今度こそ終わりだ!」
ストラスがサイゾウにキックを繰り出す。
今回は間違いなくヒットした。
サイゾウが吹き飛び、ダウンする。
審判がかけより、様子を伺っている。
「そこまで! 勝者ストラス選手!」
審判がストラスの勝ちを宣言し、試合は終わった。
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「第7試合を始めます! メルビン道場のギルバート選手対、モロゾフ道場のカタリーナ選手!」
ギルバートとカタリーナの試合だ。
優勝予想の倍率は、ギルバートが4倍に対して、カタリーナが11倍。
ギルバートはムキムキの筋肉を活かした闘いを得意とする。
キックや搦め手よりは、パンチが主体だ。
肉体も頑強で耐久力がある。
カタリーナは30代くらいの女性選手だ。
筋肉はそれなりだが、ムキムキというほどではない。
技巧派の選手だろう。
「両者構えて、……始め!」
試合が始まった。
まずはお互いに様子を伺っている。
「直接闘うのは2年振りくらいだな。カタリーナさんよお」
「うふふ。ギルバート坊やは、最近調子いいみたいね? 数年前までは私に歯が立たなかったのにねえ」
「坊やはやめろ。成長した俺を見せてやる。いくぜ!」
本格的に戦闘が始まった。
ギルバートが身体能力を活かしてゴリ押ししている。
カタリーナはうまく躱したりいなしたりしているが、徐々にダメージが蓄積されていく。
10分以上が経過したころ。
ギルバートのパンチがカタリーナにクリーンヒットし、勝負がついた。
「そこまで! 勝者ギルバート選手!」
審判がギルバートの勝ちを宣言し、試合は終わった。
「ガハハ! 我の勝ちだな!」
「強くなったわね。坊や……、いえ。ギルバート」
何かちょっといい雰囲気だ。
ステージの上でいちゃつくのはやめたまえ。
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「第8試合を始めます! 雷竜拳のマクセル選手対、竜人のラゴラス選手!」
マクセルとラゴラスの試合だ。
優勝予想の倍率は、マクセルが2倍に対して、ラゴラスが5倍。
倍率から考えて、強豪の選手同士の闘いとなる。
1回戦で最もレベルの高い試合になりそうだ。
マクセルは10代後半くらいの青年だ。
引き締まった体をしている。
闘気術の達人らしい。
彼は前回のゾルフ杯準優勝者だ。
ギルバートがライバル視している。
賭けの倍率から判断しても、間違いなく最強クラスだろう。
ラゴラスは、竜人の男性だ。
Cランクパーティ竜の片翼の副リーダー。
堅物の武人っぽい雰囲気を感じる。
「両者構えて、……始め!」
試合が始まった。
まずはお互いに様子を伺っている。
「ふん。少しは骨のあるやつがいるかと期待していたのだがな」
ラゴラスが憮然とした表情で言う。
「なんだい? 僕じゃ不服かい?」
「お前みたいな若造が優勝候補扱いされているようではな。この大会もレベルが知れるというもの」
「ずいぶんと自信があるようだね。楽しみだな」
ラゴラスはマクセルを侮っているようだ。
マクセルは前回のゾルフ杯準優勝という実績があるというのに。
実績よりも自分の目を信じるタイプか。
マクセルは侮られていることを全然気にしていない様子だ。
むしろ、楽しげに笑っている。
気楽な感じだ。
「せめてもの情けだ。一撃で終わらせてやろう」
ラゴラスが闘気を集中させていく。
いきなり大技の構えだ。
「だっ」
ラゴラスが掛け声とともにマクセルに接近する。
かなりの速度だ。
「竜闘掌!」
ラゴラスが掌底を繰り出す。
マクセルが体を逸らす。
ラゴラスの攻撃を紙一重で躱す。
「ほいっと」
マクセルのカウンター。
ハイキックがラゴラスにヒットした。
ラゴラスがステージの端まで吹き飛んだ。
…………?
起き上がってこない。
まさかこの一撃で終了か?
審判がかけより、状況を伺う。
「そこまで! 勝者マクセル選手!」
一撃で終わっちゃったよ。
ラゴラスも強そうだったんだけどな。
「なんか気合入ってたみたいだけど。勝っちゃってごめんな。俺も賞金欲しいしさ」
マクセルは涼しい顔をしている。
楽勝といったところか。
彼の実力は出場選手の中でも頭一つ抜けていそうだ。
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