【コミカライズ】無職だけど転移先の異世界で加護付与スキルを駆使して30年後の世界滅亡の危機に立ち向かう

~目指せ! 俺だけの最強ハーレムパーティ~
猪木洋平@【コミカライズ連載中】
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925話 謎の聖気

公開日時: 2023年2月7日(火) 12:05
文字数:2,501

 リンドウの古代遺跡の入口で、アダマンタイトの巨石を粉砕しようとしているところだ。

 この場にいるのは俺、ミティ、アイリス、ジェイネフェリア、ブギー頭領、ジョー副頭領の6人である。


「ふぅー……」


 ジェイネフェリアが目を閉じ、集中力を高める。

 そしてアダマンタイト粉砕機を慎重に操作し、起動させた。


 グイィィンッ!!

 鈍い音が響き渡ると同時に、アダマンタイト粉砕機が動き出す。

 俺が注ぎ込んだ魔力によって無事に動いているようだ。


「ちゃんと起動したんだよ。これなら、あとは……」


 粉砕機の先端ドリルが回転を始める。

 すると、徐々にアダマンタイトの巨石が削られ始めた。


「ハッハ! いい感じに削れてるな!」


「はい、あれほど硬いアダマンタイトが……!」


「さすがネフィだ!」


 ブギー頭領、ジョー副頭領、俺がそれぞれの反応を見せる。

 アダマンタイト粉砕機の威力は凄まじく、瞬く間にアダマンタイトの巨石が削り取られていく。

 これなら無事に穴をあけられそうだ。


 いくつかの穴をあければ、そこを基点にして砕くことも可能なはず。

 そうなれば、あとは簡単だ。


「――ん?」


 俺は違和感を覚えた。

 どこからともなく流れてきた謎のオーラが、アダマンタイトの巨石に流れ込んだように感じられたのだ。


「なぁ、アイリス」


「うん。さっきのは聖気……それもとびきり強いやつだよ。限界まで凝縮して、目立たないように偽装されていたけど」


 俺がアイリスに話を振ると、彼女はそう答えてくれた。

 腕力で頼りになるのはミティだが、気配察知や聖魔法関係のことならばアイリスが頼りになる。


「聖気か……」


 一流の魔法使いであっても、聖魔法を使えるとは限らない。

 単純な力量や適性のみならず、本人の精神的な資質が大きく影響するからだ。


 信心深い者は聖なるオーラ――つまり聖気を扱うことができる。

 それは魔力や闘気と組み合わせることで、より強力なものへと姿を変える。

 ざっくり言えば、魔力と聖気を組み合わせたものが聖魔法、闘気と聖気を組み合わせたものが聖闘気だ。


 俺とアイリスは、それぞれ聖魔法も聖闘気も使うことができる。

 聖気の出力が増せば、それ単体でも戦えるレベルになるらしい。


「どう思う? タカシ」


「うーむ……。何か嫌な雰囲気を感じるな」


「ボクもだよ。こんなところにあれほどの聖気の使い手がいるとは思えない」


「そうなると、考えられるのは……」


 俺とアイリスが話し合っている間にも、アダマンタイト粉砕機による作業は進んでいた。

 ガリゴリと音を立てて、アダマンタイトの巨石を削っていく。


「おかしいんだよ。切削速度が落ちているんだよ」


「どういうことだ? 粉砕機自体の動作不良か?」


「違うんだよ。明らかにアダマンタイトの硬度が上がっているんだよ。……あ」


 ジェイネフェリアがそこまで言ったところで、アダマンタイト粉砕機に変化が現れた。

 鈍い音とともに、粉砕機が止まったのだ。


「うーん……一度動力を切ってメンテナンスをするんだよ。男爵さん、粉砕機をこっちに運んでほしいんだよ」


「ああ」


 俺はアイテムルームを利用して、粉砕機をアダマンタイトの巨石から離したところに運んだ。

 ジェイネフェリアは首を傾げながら、粉砕機を調べ始める。

 残された他の面々は、先ほどまで削られていたアダマンタイトの巨石に視線を向ける。


「ハッハ! 途中までは順調だったんだがなぁ!」


「ここまで削れただけでも素晴らしい魔道具だったと言えます。ただ、これではやはり先へは進めませんね」


 ブギー頭領とジョー副頭領が巨石の加工跡を見ている。

 超硬度を誇るアダマンタイトを削れたのは、さすがジェイネフェリアが作り出した魔道具といったところだ。

 ただ、それでもアダマンタイトの巨石は健在である。

 このままでは、先には進めない。


「うーん……。やっぱり聖気が影響してるみたいだね」


 アイリスがアダマンタイトに手のひらを当てて、内部の様子を探っている。


「そうだな。これは相当な出力だぞ」


 俺は同意を示す。

 彼女が指摘した通り、アダマンタイト巨石には何者かの聖気が纏わりついており、それがアダマンタイトの巨石を硬くしているようだ。


 しかし、これはいったい何者の仕業なのだろうか?

 ラーグ周辺に聖気の使い手はほとんどいないはず。

 それなりのレベルにあるのは俺とアイリスだが、もちろん俺たちが犯人ではない。

 というか、俺とアイリスでさえ、聖気単体でこれほどの効果を発揮することはできないし。


(……諦めるです。君たちはまだ、そこへ行くべきではないです。先にヤマト連邦に向かうです……)


「ん? なんだ?」


 俺の脳内に声が響いた。

 幼女くらいの声質ではあるが、どこか威厳を感じさせる不思議な響きがあった。


「どうされましたか? タカシ様」


「いや、今誰かが話しかけてきたような……」


 俺がそう言うと、他のメンバーが周囲を見回し始める。


「……誰もいねぇな」


「はい。ここには俺たちしかおりませんが……」


 ブギー頭領とジョー副頭領が言う。

 確かに周囲には人影はない。

 俺たちの他にあるのは、アダマンタイトの巨石や粉砕機だけだ。


「ボクも何も聞こえなかったよ。タカシの勘違いじゃないのかな」


「うーん……。確かに聞こえたんだがなぁ……」


 俺はアイリスの言葉を聞いて、考え込む。

 先ほどの声の主が誰かは分からない。

 だが、言っていることにも一理はある。

 アダマンタイトの巨石をどうにかできない以上、古代遺跡を先へ進むことはできない。

 粉砕機を改良して再チャレンジする時間もない。


 巨石をどうにかできれば、その先は当然まだ見ぬ景色が広がっていたはず。

 古代遺跡の謎を解き明かしたり、アーティファクトを手に入れたり、実は出口が山脈の向こう側に通じていたり、その先の地域に住む部族と交流を深めたり……。

 そんなイベントが発生する可能性があったのだが……。


「ヤマト連邦の件があるので、どちらにせよ深入りはできない。しかし、一目ぐらいは見ておきたかったな……」


 俺は残念に思う。

 まぁ、ヤマト連邦の件を片付けてから、ゆっくり取り組めばいいか。

 今日のところは撤収することにしようかな。

 俺がそんなことを考えているときだった。

 とある人物の提案により、膠着した状況に変化が訪れることになるのだった。

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