「ねぇ、タカシ。私がどうして怒っているか分かる?」
「……ああ、分かっている」
雪月花との昼寝から目覚めた後。
俺はモニカに正座させられていた。
彼女は俺を見下ろすような形で、俺の目の前に立っている。
近くにはミティ、アイリス、ニムもいた。
「本当に分かってる? ねぇ?」
モニカが繰り返し問う。
俺は視線を彼女から逸らして答える。
「まぁ……、あれだ。さすがに節操なしが過ぎたかもしれん。反省している」
俺は素直に答えた。
三姉妹との仲を深めていたことが、彼女の逆鱗に触れたことは想像に難くない。
モニカは俺の第三夫人であり、モコナという子までいるのだ。
他に女が増えれば増えるほど、俺がモニカやモコナに費やせる時間や金は減っていく。
彼女の不満ももっともな話だろう。
「はぁ……。今さらそんなことに怒らないよ。ただ、今回は仕事を放り出して昼寝してたじゃない。さすがに一言ぐらいは言いたくなる」
「む……」
モニカの指摘に俺は押し黙る。
怒っているのはそっちか。
確かに、俺たちは共同で『食料の減りが早い』事件を調査していた。
モニカとニムが食料の残量を再確認し、ミティがデッキを見回り、アイリスがデッキと船内の出入り口を見張る。
そして俺は、船内をざっと見回っていたのだ。
そんな中、俺は途中から仕事をサボって昼寝……。
「タカシ様……」
「さ、さすがにどうかと思いますけど」
「本当に女好きなんだから……」
ミティ、ニム、アイリスまで呆れ顔で俺を見ている。
怒られて当然の行為だ。
「いや、本当に申し訳ない。すまなかった」
「……まさかとは思うけど、遊びで彼女たちと関係を持ったんじゃないよね?」
モニカが聞いてくる。
目が笑っていないのが恐ろしい。
(……どっちだ? どっちが正解なんだ?)
妻から『あの女との関係は遊びなの?』と聞かれた場合、何と答えるのが正解なのか?
普通に考えて、『あの女はただの遊びさ。俺の本命はお前だよ』と返すのが正解だろう。
妻からすれば、自分や子に費やしてもらえる時間や金が減ることは面白くない。
新たな女がただの遊び相手なのであれば、その心配度合いは下がるはずだ。
しかし、今回の場合は――
「俺は彼女たち『雪月花』を愛している。モニカやモコナをないがしろにする気は一切ないが、『雪月花』も幸せにしてやりたいと思っている」
俺はモニカにそう伝えた。
三姉妹との関係は遊びではない。
俺としては、あくまで真剣に接しているつもりだ。
まぁ、現状の加護(小)に加えて通常の加護を与えられたら便利になるという考えもなくはないが……。
「やっぱりね」
俺の言葉を聞き、モニカの表情が少し柔らかくなる。
彼女は俺の返答を予想していたようだ。
「『雪月花』さんたちとは知らない仲でもないし……。タカシが彼女たちと仲良くしていること自体は、別に文句はないの。ヤマト連邦でも役立ってくれそうだしね」
「そう言ってもらえると助かる」
俺は安堵の息を漏らす。
モニカが分かってくれたのなら良かった。
ミティたちも、特に異論はないようである。
ひとまず安心だ。
「……でも、食料を勝手に食べるのはもうやめてね? あなたたち」
モニカは三姉妹にも注意した。
3人とも、ややバツの悪そうな顔をしている。
「申し訳ありませんでした」
「ごめんなさい~……」
「……ごめん……」
月、花、雪がモニカに謝罪した。
3人の顔には反省の色が見える。
さすがに反省したようだ。
今回は、俺たちに空間魔法やアイテムバッグがあったので問題なかったが……。
一歩間違えれば、航海中に食料不足に陥り、大惨事になっていたかもしれない。
「次はないよ? 反省してね?」
モニカが念を押すように言う。
3人は神妙な面持ちで頷いた。
「……話は変わるんだけど」
モニカが話を変える。
「あなたたちは、『人魚』って呼ばれる種族を知ってる?」
彼女の口から三姉妹に向けて、質問が飛び出した。
人魚。
この世界には、種族として実在する。
そう言えば、俺も出会ったことがあったな。
龍神ベテルギウスとの戦闘中に、人魚メルティーネと会話をした。
それだけでなく、彼女のファーストキスまで受け取ってしまった。
モニカが三姉妹に質問した意味。
そして、三姉妹が持つ人魚に関する知識。
しっかりと把握していく必要がありそうだ。
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