【コミカライズ】無職だけど転移先の異世界で加護付与スキルを駆使して30年後の世界滅亡の危機に立ち向かう

~目指せ! 俺だけの最強ハーレムパーティ~
猪木洋平@【コミカライズ連載中】
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291話 記憶を取り戻せ! ナーティア編

公開日時: 2021年5月7日(金) 21:24
文字数:3,245

 盗掘団の捕縛作戦の後処理中だ。

ソフィアたちの睡眠魔法により眠らされていた俺たち先遣隊は、無事に目を覚ました。

まだ状況を完全には把握できていないが、捕縛作戦は無事に成功したようだ。


 ブギー頭領やジョー副頭領、それに下っ端戦闘員たちの多くは縄で拘束されている。

一方で、ナディアやパルムス、それに下っ端戦闘員の一部は拘束されていない。

何やら、ラーグの街の元住民で今は記憶を失っている人たちらしい。


 ナディアの本名はナーティア。

モニカの母親だ。


 パルムスの本名はパームス。

ニムの父親だ。


 モニカの父ダリウスや、ニムの母マムの口ぶりからは、死別してしまっているような雰囲気を感じたのだが。

どうやら、ここ西の森の奥地で生きていたようだ。

ただし、彼女たちは記憶を失ってしまっている。

何かの事件にでも巻き込まれたのかもしれない。


 生きていてよかった。

それは間違いない。

しかし、ダリウスとマムの再婚話はどうなるのだろう?


 彼らは、ナーティアやパームスが死亡してしまったものと思っているはずだ。

やることはやってしまっているかもしれない。

これは浮気になるのか?


 ラーグの街に帰ったら、修羅場になる可能性がある。

いや、それよりも生きていた喜びのほうが大きいか?

まあこの辺は俺が考えても仕方ない。

なるようになるだろう。


「それで、ボクとタカシが治療するのはどの人なの? 重傷者はいないみたいだけど」


 アイリスがマリーにそう問う。


「外傷の治療というわけではない。治療してほしいのは、記憶喪失者たちだ。高度な治療魔法は、失った記憶を取り戻す効果もあるとされているのだ」


 マリーがそう言う。

彼女が事情を話し始める。

俺たちが眠っている間に、ブギー頭領などから事情を聞き出していたようだ。


 今から数年前に、ラーグの街から王都へ向かう馬車が何者かに襲われる事件があった。

乗客や護衛の冒険者が全員行方不明になったらしい。

その乗客の中には、ナーティアとパームスも含まれていた。


 馬車自体は、全壊した状態で見つかったそうだ。

ただし、おびただしい血痕といっしょにだ。

王国の調査隊は、乗客たちは死亡した可能性が非常に高いと判断して、乗客の家族などに通告した。


 この判断は、ある程度は妥当だろう。

”死体がなければ死亡を認めない”とすると、相続などがいつまでも行えないことになるからな。

どこか一定の基準でそういう判断も必要だ。

現代日本の法律で言うところの、失踪宣告というやつである。


 ただし、今回の件に限って言えば、それは早とちりだったようだ。

馬車を襲ったシルバータイガーは、ブギー盗掘団によりかろうじて撃破されていたのである。


 ちなみにシルバータイガーは、災害指定生物第2種に指定される強力な魔物だ。

討伐には、本来であればBランク冒険者クラスの実力者が必要らしい。

おそらく、ホワイトタイガー、ジャイアントゴーレム、ミドルベアあたりよりも強いだろう。

キメラと同格ぐらいかもしれない。


 ブギー盗掘団がシルバータイガーを撃破したことにより、乗客たちの命は助かった。

だが、シルバータイガーの魔力波という攻撃により乗客たちは脳にダメージを負い、記憶を失ってしまった。

そんな彼らを一度街に帰すという話もあったそうだ。

しかし、本人たちが命の恩人であるブギー盗掘団の面々に恩を返したいと言ったため、彼らは盗掘団の一員として活動を始めることになったとのことだ。


「話が本当ならば、盗掘の罪を減じる余地がある。シルバータイガーを倒してくれたとなると、ちょっとした英雄だからな。だが、現時点で話を鵜呑みにするわけにもいかん。何とか記憶喪失者たちの記憶を取り戻して、より正確な情報がほしいのだ」


 マリーがそう言う。

シルバータイガーを撃破した功績により、盗掘の罪が減るわけか。

まあ、盗掘は殺人などと比べると軽い罪だしな。


「もちろん僕たちも試したことがあるけど、僕たちレベルの治療魔法では効果がなかったんだ。悪いけど、任せたよ」


 ソフィアがそう言う。

彼女たちの中には、治療魔法を使える者が複数人存在する。

まだ10代という年齢を考慮すれば、十分に優秀だ。


 しかし、上級の治療魔法は残念ながらまだ使えないらしい。

聞いたところ、中級のエリアヒールの合同魔法は使えるそうだ。

広範囲の治療をすることには長けているが、重傷者や記憶喪失者の治療には不十分といったところか。


「わかった。では、俺たちの治療魔法を試してみよう」

「そうだね。まずは……」


 アイリスが候補を探す。

ナーティア、パームス。

他にも、元冒険者やその他同行していた人など、記憶を失っている人はたくさんいる。

あと、犬のリックにも余裕があればかけておきたいところだ。


 ただ、最初の1人に名乗り出るには少し勇気が必要だ。

だれか名乗り出る者はいないものか。


「……うん。最初は私にかけてもらおうかな」

「お母さん!?」


 最初の1人に立候補したのは、モニカの母ナーティアであった。

なかなか度胸がある。

モニカも、時おり男勝りな面を見せることがあった。

母親譲りの性格だったか。


「はやく、かわいい娘との記憶を思い出したいしね。もう少しで思い出せそうな気もするんだけど……」

「お母さん……。うん、はやく思い出してね。お父さんのことも……」


 ナーティアとモニカがそう言う。


「では、さっそく。いくぞ、アイリス」

「うん。いつもどおりに息を合わせよう」


 俺とアイリスで、治療魔法の詠唱を始める。


「「……彼の者に安らかなる癒やしを。リカバリー」」


 大きな癒やしの光がナーティアを覆う。

そして、しばらくして。


「……ううっ!」


 ナーティアが頭を押さえ、よろける。

しばらくして、彼女の目に涙があふれてくる。


「お母さん!? だいじょうぶ?」

「……うん。だいじょうぶよ。私のかわいいモニカ。……すべて思い出したわ。ずいぶんと待たせてしまったね」


 ナーティアがそう言う。

無事に記憶を取り戻したようだ。

モニカがナーティアに駆け寄り、抱きつく。


「私ね……。料理がすごくうまくなったんだよ。お父さんもよく褒めてくれるんだ」

「まあ、そうなの。モニカは小さい頃から、料理の練習をがんばっていたものねえ。お父さんも、鼻が高いだろうね」

「うん……。それでね。この人と今度結婚するんだ。タカシっていうんだけど。優しい人なの」


 モニカが俺のことをそう紹介する。

優しい……か。

それはどうだろう。


 今回のブギー盗掘団の捕縛作戦では、俺の本性があらわになってしまった気がする。

闇の瘴気は、人の負の感情を増幅させて暴走させる効力を持つ。

つまり、その人の負の本性があらわになるのだ。


 俺が優しいのは、あくまで忠義度稼ぎなどの打算によるところが大きい。

チートにより強大な力を手に入れつつある今、好き放題に振る舞ってしまいたい欲はある。

闇の瘴気のようなきっかけがあれば、その欲が出てしまうこともあるかもしれない。

今後は注意しないとな。


 一般市民や同業である冒険者たちに対して、横暴な態度で接しないのは当然のことだ。

そして、盗掘団のような犯罪者に対しても同じである。

人殺しレベルの犯罪者はともかく、盗掘ぐらいの犯罪者であれば、更生の余地は十分にある。

俺はステータス操作のチートにより抜群の戦闘能力を持つし、余裕を持って接していくべきだろう。

人に優しくあろう。


「それはいいことね。……タカシさん。娘をよろしくお願いね」

「ええ。もちろんです」


 俺はナーティアに対してそう答える。

そして、モニカとナーティアは母娘で積もる話を始めた。


 長い間離れ離れになっていた親子の感動的な再会シーンだ。

俺もその感動を共有したいところだが、俺にはまだやるべきことがある。


「ナーティアさんの記憶の復元はうまくいったな。よかったよ」

「そうだね。次の人は……」


 アイリスが次の候補者を探す。

ナーティアという成功例が1人出たことで、ハードルは下がっただろう。

みんな、前向きに考えているような顔をしている。


 ただし、アイリスのMPを考慮すると、今治療できるのは後1人ぐらいだろう。

さて、だれを治療するか。

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