「ビッグ……」
ミティが闘気を練り上げる。
ハンマーを振り上げながら、自身の鏡像に突進していく。
「ボンバー!!」
『ボンバー!!』
いつもなら、ミティの剛腕で生み出されたハンマーが相手を粉砕していただろう。
だが、今日は違った。
「っ!?」
ミティは目を見開く。
相手が全く同じ動きを取ったからだ。
その結果、2人のミティの間で鈍い音が響き渡る。
『この程度……タカシ様にいただいた力の前では、どうということはありません!』
「……くっ!」
ミティは歯を食いしばる。
なぜ相手が自分の動きをそのまま再現できるのか。
そんな疑問が頭に浮かぶが、今は戦いに集中すべきだろう。
それに、彼女は難敵に対する苛立ちとは別に、高揚感も感じていた。
「全力を出せるのは久しぶりです。今の私が、どれだけ強くなったのか……。試してみましょう!」
ミティの闘気が膨れ上がる。
彼女はタカシから与えられた加護により、超パワーを発揮できるようになった。
しかし、その力の100パーセントをぶつけられる相手というのは少ない。
相手が自分と同じくらいのパワーを出せるなら、テスト相手としてうってつけだ。
ミティは楽しさを感じていた。
そして彼女の他にも、高揚感を覚えている者たちがいた。
「いいね! その武闘の技術……。とってもいい!!」
『ボクも同じ気持ちさ。ゾクゾクする』
まずはアイリスである。
彼女は卓越した武闘家だ。
かつてはメルビン道場でタカシと共に鍛錬し、ガルハード杯やメルビン杯に出場していた時期がある。
そのときの彼女は敗北することも多く、悔しさで落ち込むこともあった。
しかし、今はどうだろう?
タカシの加護に加え、日頃の鍛錬もあって彼女は急成長した。
もはや、身近な存在で彼女の武闘技術についていけるものはいない。
タカシやモニカあたりでギリギリといったところであろうか。
しかしそんなタカシたちにしても、闘気や魔力による身体強化が前提にある。
純粋な武闘の技術において、アイリスが満足できる相手は身近にいない。
そんな彼女の前に今、自身と対等の技量を持つ鏡像がいる。
嬉しくないわけがなかった。
「ふふっ! ずいぶん速いね! 私の雷速に付いてこれるなんて……」
『これぐらいは朝飯前さ!』
モニカの鏡像と戦うのは、もちろんモニカである。
兎獣人である彼女は、生まれつきスピードや反射神経に優れていた。
近接戦闘においても、そのスピードで技術を補ってアイリスやタカシと互角に戦えるほどである。
だが、彼女の真価は雷魔法を使った纏装術にあった。
雷の速度に付いてこれる者は、そうそういない。
それが鏡像でもない限り……。
モニカもまた、自身の能力を模したアバターに夢中となっていた。
「【ブリリアント・パンク】!!」
『【ブリリアント・パンク】!!』
「【マリア・フレイムバスター・キック】!!」
『【マリア・フレイムバスター・キック】!!』
他の面々の戦いも熾烈を極めていた。
ニムの偽物は、本物と同じく岩の鎧を纏ってタックルをしてくる。
マリアの偽物は、本物と同じく炎を纏って飛び蹴りをしてくる。
それぞれが一歩も引かない、壮絶な戦いとなっていた。
果たして彼女たちは、自身の鏡像との戦いに打ち勝つことができるのだろうか――
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