【コミカライズ】無職だけど転移先の異世界で加護付与スキルを駆使して30年後の世界滅亡の危機に立ち向かう

~目指せ! 俺だけの最強ハーレムパーティ~
猪木洋平@【コミカライズ連載中】
猪木洋平@【コミカライズ連載中】

1027話 魔法封じの芳香【エレナside】

公開日時: 2023年5月20日(土) 12:03
文字数:1,940

 Cランクパーティ『三日月の舞』は、『三位一体』の魔法によりヨゼフを圧倒した。

 だが、劣勢になった彼は魔道具『魔法封じの芳香』を発動する。

 その効力は――


「ふっ。分からねぇか? だが、すぐに分かる。この俺が証明してくれる。【剛拳流・動かざること山の如し】!!!」


 ヨゼフが再び闘気を開放する。


「同じ手が何度も通用すると思ってんの?」


「思っちゃいねえさ。ただ、今のてめえらがこの技を破るのは難しいと思うぜ?」


「言ってなさい。――みんな! もう一度行くわよ! 『三位一体』!!」


「りょうかいー」


「分かったっす!」


 エレナ、ルリイ、テナが魔力を開放する。

 そして詠唱を進めようとするが――


「なっ……どうして!? 魔力が上手く練れない!」


「なんで? なんでなのー?」


「ま、まさか!?」


 エレナとルリイは混乱し、テナは驚きの声を上げる。

 彼女たちの意識が、周囲に漂う香りに向けられた。


「気づいたみてぇだな? この魔道具の効果によぉ!」


「くっ……! あなた! 私たちに一体何をしたの!?」


「俺のとっておきの古代魔道具、『魔法封じの芳香』だ。この香りを嗅いだ奴は、しばらくの間魔法が使えなくなるのさ」


「そんな……!?」


「ま、厳密に言えば一切使えないわけじゃなくて、出力が大幅に落ちるだけだがな。ほらほら、頑張って詠唱してみな? 3人揃ってたっぷりと時間を掛けて詠唱すれば、俺にまたダメージを与えられるかもしれねぇぜ?」


「くっ……。言われずとも!!」


 エレナたちは必死になって魔法を使おうとする。

 だが、いつもの中級魔法は全く成功する気配がなかった。

 3人揃って詠唱しても、発動するのは初級レベルの簡単な魔法だけになりそうである。


「隙ありだぜ、嬢ちゃん」


「ぐごっ!?」


「エレナちゃん!?」


「エレナっち!!」


 ヨゼフの鉄拳がエレナの腹に突き刺さる。

 彼女はそのまま倒れ込み、苦しそうに悶えた。


「お前らもだ!!」


「あぁっ!!」


「うぎゃあっ!!」


 ヨゼフの攻撃が次々と炸裂する。

 Cランクパーティ『三日月の舞』――彼女たちの戦闘能力は魔法関係に大きく依存していた。

 こうした搦め手を仕掛けられると厳しい。

 為す術もなく倒れ込んだ『三日月の舞』の3人を見下ろしつつ、ヨゼフは勝ち誇ったように笑みを浮かべる。


「ハハッ! ざまぁねえな! 所詮、てめぇらはその程度なのさ! 魔法の才能に恵まれたぐらいで調子に乗りやがって! 身の程を思い知れ、小娘ども!!」


「くうっ……!」


「ははは! 薄汚えガキ1人をさらおうとしただけなのに、思わぬ拾い物をしたな。年頃の魔法使い3人か。販売ルートは限られそうだが、高値で売れそうだぜ。――おい、お前ら! さっさとこいつらを縛っちまえ! アジトに運ぶぞ!!」


「へい!」


「了解ですぜ!」


 チンピラたちがエレナたちを縛り上げる。

 その光景を満足そうに見つめると、ヨゼフはニヤリと笑って周囲を見渡した。


「おっと、いけねぇ。忘れるところだったぜ。――おい、お前もこっちに来な」


「ひぃっ!?」


 少女は恐怖に怯えていた。

 自分を助けてくれたカッコいいお姉さん3人組は、怖い男たちに負けてしまった。

 このままでは自分も捕まってしまう。

 これからどうなるか分からないが、とにかく恐ろしい未来が待っていることだけは間違いなかった。


「安心しろ。別に取って食おうっていうんじゃねぇんだ。俺の言う通りにしてくれりゃ、悪いようにはならない」


「う、嘘です……」


 少女が首を振りつつ、一歩下がる。

 ヨゼフの言うことを素直に聞くことなどできるはずもなかった。


「チッ。逃げるつもりか? 面倒臭せえな。お前を助けようとした奴を見捨てて、自分だけ助かるつもりかよ。オラ! こっちにこい!!」


「ひっ!? い、いやぁっ!!」


 少女は泣きながら走り出す。

 当然、それを大人しく見ているだけのチンピラではないのだが――


「痛えっ!? くそ、このアマ! 噛みやがった!!」


「ぐっ……! こっちもだ!!」


「ちくしょう! ふざけやがって!!」


 エレナ、ルリイ、テナがそれぞれチンピラたちに噛みついたのだ。

 噛まれたチンピラは怒り狂い、彼女たちを殴りつける。


「このクソ女どもが! 大人しくしてろ!!」


「ぐぅっ!」


「あうっ!」


「ぐっ!」


 殴られ、蹴られるエレナたち。

 それでも、決してチンピラたちの怒りが収まることはない。


「ヨゼフの兄貴、あのガキはどうします? 追いますか?」


「……いや、放っておけ。どうせ売れたとしても、はした金にしかならん。それよりも、楽しみができた」


「楽しみ……ですかい?」


「ああ。この生意気な嬢ちゃん3人をどう調教するかだ。俺たち『ダダダ団』に逆らうことがどんな意味を持つのか、骨の髄まで教え込んでやる」


 ヨゼフが舌なめずりする。

 彼の顔には嗜虐的な表情がありありと浮かんでいて、エレナたちは思わずゾクリと身を震わせたのだった。

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