「よし。じゃあ、2人とも聞いてくれ」
俺は居住まいを正すと、紅葉と流華に向き直る。
すると、2人はすぐさま姿勢を正して俺に向き直った。
「そろそろ制約条件などについて話していこうと思う」
「はい!」
「お、おう」
2人が頷く。
俺は咳払いを一つすると、話し始めた。
「順を追って説明しよう。魔法には、大別して『基礎魔法』と『独自魔法』が存在することは説明したよな?」
「ああ」
流華が頷く。
紅葉も頷いた。
2人とも、俺が教えたことをちゃんと覚えているようだ。
「基礎魔法は、歴史的・文化的に古くから受け継がれてきたものだ。対して、独自魔法は上級者がこの世に生み出すものだ」
「兄貴も独自魔法を開発できる上級者なんだよな?」
「ああ。そうだな」
俺は頷く。
ステータス画面で表示されているところの『◯◯魔法創造』という項目が、独自魔法を開発する能力だ。
スキルレベルで言えば、各種魔法のレベル5だな。
まぁ、レベル5未満でも他者が開発した独自魔法を教えてもらうことはできるし、基礎魔法を多少応用した程度の独自魔法であれば頑張って開発することもできなくはないのだが……。
複雑な制約や協力な効果を付与したオリジナルの魔法を開発するには、やはりレベル5が必要になってくる感じである。
「開発した独自魔法には、適切な魔法名を付ける必要がある。イメージの補強に繋がるからだ。『言霊』と表現してもいい」
「ふむふむ……」
「桜花城の城下町に来てから、3種類の独自魔法を使用した。覚えているか?」
俺は尋ねる。
一方的に説明するだけでは、理解度が測れないからな。
タイミングを見て、こうして聞いてみるのがいい。
教師にでもなった気分だ。
「ええっと、『エンプフィントリヒ・ユングフラウ』に……」
「『いんびじぶる・いんすぺくしょん』と『でっどりぃ・みすていく』だな」
紅葉と流華がそれぞれ口にする。
ちゃんと覚えていたようだ。
「兄貴、ずっと気になっていたんだ。『いんびじぶる・いんすぺくしょん』とかって、意味のある言葉なのか?」
「当然だ。さっきも説明した通り、魔法名はイメージの補強に繋がる。意味のない言葉なんて、付けるべきではない」
「なら、『いんびじぶる・いんすぺくしょん』の意味はなんなんだ? 全く聞き慣れない言葉なんだけど……」
流華が首を傾げる。
ふむ……?
記憶はあやふやだが、これまでも俺は独自魔法に様々な名前を付けてきた。
それを周囲の人も違和感なく受け入れてくれていたように思う。
しかし、流華や紅葉にとっては『全く聞き慣れない言葉』に聞こえている様子だ。
(これは……どういう理屈だろうか?)
チートスキル『異世界言語』の不調か?
いや、ヤマト連邦が鎖国国家であることが関係しているかもしれない。
このあたりについて、ちょっと整理してみよう。
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