俺は『ナイトメア・ナイト』という偽名の件や地上での俺の立ち位置について、メルティーネに説明している。
「先ほども言ったが、実は俺は貴族なんだ。そんな俺がヤマト連邦に向かっている。そして、サザリアナ王国とヤマト連邦は国交を結んでいない……。この意味が分かるか?」
「ええと、つまり……。貴族としてのナイ様は、何かしらの重要で極秘の任務を遂行中ということですの?」
「そういうことだ」
俺はうなずく。
メルティーネは納得したようだった。
「分かりましたですの……。ですが、それを私などに教えても?」
「メルティーネには知っておいてほしいんだ。俺は、君のことを愛しているからな」
俺が言うと、メルティーネは頬を赤くしてうつむく。
照れているようだ。
「あっ……。あの……わ、私もですの」
メルティーネは消え入りそうな声で言う。
とても小さな声だ。
しかしもちろん、俺は聞き逃さない。
彼女に対する愛おしさが込み上げてくる。
メルティーネは、俺の胸に飛び込んで来た。
俺は彼女を受け止める。
彼女は小さく震えていた。
「ずっと……不安でしたの」
俺を見上げるようにして、メルティーネは言う。
「初めて見たとき、ナイ様のことを運命の人だと思いましたの。でも、私が思ったよりも遥かにナイ様はすごい人で……。きっと、ナイ様は私のことなんてすぐに忘れてしまうだろうと……」
「メルティーネ……」
俺はつぶやく。
メルティーネは、今までずっと不安に思いながら過ごしてきたのだ。
「そんなことはないさ」
俺は言う。
そして、優しく微笑んだ。
「俺にとっても、メルティーネは運命の人だ」
「ナイ様……」
メルティーネは瞳を潤ませる。
俺は彼女にキスをした。
そして、彼女をベッドに寝かせる。
「俺の本当の名を教えておこう。俺の名は『ナイトメア・ナイト』ではない。真の名は……」
「はいですの」
メルティーネはうなずく。
彼女の瞳には期待の色が浮かんでいた。
そんなメルティーネを見下ろしながら、俺は告げる。
「俺の真の名は……『タカシ=ハイブリッジ』だ」
「タカシ様……」
メルティーネはつぶやく。
その瞳には、歓喜の色があった。
「嬉しいですの……。本当の名前を教えてくれて」
「ああ」
俺はうなずく。
転移前の名前としては、『高橋高志』の方が適切だが……。
まぁそれはさすがにいいだろう。
ミティやアイリスにも伝えていないし、そもそもこの世界で元の名を人相手に名乗ったことはない。
海神ポセイドンのような特殊な存在を相手する場合を除けば、『タカシ=ハイブリッジ』が本名と言って問題はないはずだ。
「愛しているぞ……メルティーネ」
俺はメルティーネの耳元でささやく。
そして、彼女の衣服に手をかけた。
彼女は抵抗しない。
――こうして俺たちは結ばれたのだった。
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