「う、うわあああっ! ひぃいいいいいっ!!」
景春は悲鳴をあげて、尻餅をつく。
そのまま後退りをして逃げ出そうとするが……。
「逃さんよ」
俺は素早く景春に近付き、その腕を掴む。
「は、放せっ!」
景春が暴れるが、俺はそれを力ずくで押さえつける。
そして……
「どうだ? これがお前への『贈り物』さ。お気に召したか?」
「こ、これが……。余への贈り物だと……? ふざけるなぁあっ!!」
景春が箱の中身を見て絶叫する。
そこには、少女の生首が入っていた。
白目をむき、舌を出している。
これは、まぎれもなく……
「幽蓮という女の首さ。俺に反逆した、愚かな小娘だよ」
俺は冷淡に告げる。
生首の正体は、闇忍三人衆の一人・幽蓮だ。
俺に楯突いてきたあとは無月に処遇を任せていたのだが、懐柔や再教育に手こずっていたため俺が直々に活用することにした。
その結果、こうして景春へのプレゼントになったわけだな。
「そ、そんな……そんな馬鹿な! 貴様は、死を異常に忌避する半端者で……。特に女子供には手出しできない甘い男だったはず……!」
「くくくっ。ずいぶんと見くびられたものだな」
俺は思わず苦笑する。
そんな俺の反応を見て、景春は顔を引きつらせた。
「貴様、まさか……っ!」
「その『まさか』さ。俺の呪いは、既に解けている。女子供であろうと容赦するつもりはない。当然、前藩主であるお前の処遇にも手心を加えるつもりはないぞ」
「ふ、ふざけるな!! 貴様……っ。余にこのような真似をして、ただで済むと思っているのか!? 無礼にも程があるぞ!?」
景春が唾を飛ばして叫ぶ。
しかし、その程度の反応は予想の範囲内だ。
お子様相手にムキになるつもりはない。
「無礼? それはこちらのセリフだな」
「なんだと……?」
「既に謀反は成った。今の藩主は俺だ。権威を失ったお前に許されている選択肢は二つだけ……。大人しく恭順するか、この俺に逆らって処されるか」
「く……っ! 貴様ぁ!!」
景春が俺を睨みつける。
しかし、その瞳には怒りだけでなく恐怖も混じっているように感じる。
「これが生き延びるための最後の機会だ。慎重に答えた方がいいぞ」
俺の言葉を聞いて、景春は歯ぎしりをしたのだった。
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