「あー……。それでは、これより第3回ビーチバレーボール大会を開催します」
俺は宣言した。
現在、俺たちがいるのは浜辺だ。
ちなみに、サーニャちゃんとエレナのバトルはまだ続いている。
2人は、『ビーチバレーボール大会で優勝した方が相手の言うことを聞く』という賭けをしているようだ。
「第3回ですかにゃ? にゃぁたちがビーチバレーをするのは初めてですけどにゃ?」
「ふんっ! 変態のカスは、数もまともに数えられないのかしら?」
「あー、うん。俺の勘違いです。気にしないでください」
俺視点では第3回だが、このメンツで行うビーチバレーは初めてだ。
第3回とか言われても混乱するよな。
ちなみに第1回はハガ王国のスプール湖で、ミティ、アイリス、マクセルたちと行った。
第2回は……ラスターレイン伯爵領のルクアージュの浜辺で行ったはずだ。
こちらは他にもいろいろと印象深い出来事があり、ビーチバレー自体の記憶はややあやふやだが……。
「一応言っておくけど、こちらのチームは『三日月の舞』で組ませてもらうわよ!」
「にゃにゃっ! 望むところですにゃ! こっちは、お客様の奥様や妹さんと力を合わせて戦うにゃ!!」
エレナ、ルリイ、テナの3人は、冒険者パーティ『三日月の舞』として普段から活動している。
冒険者活動とビーチバレーでは必要とされる能力が違うとはいえ、その連携力は侮れないだろう。
一方のサーニャちゃんチーム。
それに参加するのはモニカとニムだ。
付け焼き刃の連携では苦戦は必須。
しかし、サーニャちゃんはノリノリだ。
「ふふふー。仲良くやろうねー」
「うん。ほどほどで頼むね」
「はいっす! しっかり頑張るっす!!」
「わ、わたしも頑張ります!」
ルリイは、いつも通りマイペースだ。
彼女は、こういうイベント事になるとテンションが上がるタイプではないらしい。
モニカも手抜きモードかな。
まぁ、彼女が本気を出したら雷速で移動して無双するだろうし……。
テナとニムはほどほどにやる気があるようだが……。
やはり、鍵を握るのはやる気満々のエレナとサーニャちゃんだろう。
「では、さっそく試合を――ん? どうしました?」
「ふんっ! 試合の前に……あんたを拘束しておこうと思ってね!」
試合開始を宣言しようとした俺だったが、エレナに遮られた。
見ると、彼女が険しい顔でこちらに近づいてきている。
「な、なぜ?」
「理由は簡単よ! 変態のあんたがまた暴走なんかしたら大変だからでしょうが!!」
「暴走って……。俺は暴走なんかしませんよ。それに、変態でもありません。事実無根ですよ」
「はぁ!? この期に及んでまだそんなことを……! さっきから私たちの水着をジロジロと見ているじゃない! 獣のような視線で!!」
「うっ……!?」
バレていたのか。
くそっ!
こっそりと見ているつもりだったのに……。
「それに、ナス事件もあったでしょ! 忘れたとは言わせないわよ!?」
エレナの表情が鬼の形相に変わる。
ナス事件……。
あー、あれのことか……。
「にゃ? にゃす事件って、何の話にゃ?」
「いいわ! あんたにも教えてあげる! この変態は、こともあろうかナスをテナの股間に――」
「わあぁっ! そ、それは言っちゃダメっすぅぅ~」
エレナが言いかけたところで、テナは顔を真っ赤にして叫び声を上げた。
ルリイは、苦笑いしている。
モニカとニムは、なんとなくの事情を察したのかエレナやテナに同情的な視線を送っていた。
さすがは俺の妻たち。
俺のことをよく分かっていて嬉しくなる。
だがそれはそれとして、夫である俺の味方はしてほしいところなのだが……。
場が一時的に騒然とする。
一方で、当の質問者であるサーニャちゃんはよく分かっていないようで首を傾げていた。
「にゃにゃ……。よく分からないですが、何かの事情がありそうですにゃ」
「分かればいいのよ! なら、あんたも手伝いなさい! この男を拘束するのを!!」
「了解ですにゃ!!」
エレナとサーニャちゃんが俺に向かってくる。
ビーチバレー対決が立ち消えになったわけではないだろう。
だが、その前に俺を拘束するという点では合意してしまったようだ。
「ふふふー。仕方ないねー。わたしも協力するよー」
「でも、どうやって拘束するっすか? タケシさんはDランク冒険者とはいえ、パワーはとてつもなく強いっすよ?」
ルリイとテナが参戦する。
何ということだ。
これで4人が俺の敵になってしまった!
「確かに、ダーリンは力が強いね。そこらの縄で縛るぐらいじゃ、簡単に抜けてしまうと思う」
「わ、わたしに考えがあります! 任せてください!!」
モニカとニムがそんなことを言い出す。
俺の愛する妻たちも敵に回ってしまった!!
エレナ、ルリイ、テナ、サーニャちゃん、モニカ、ニム……。
6人の美少女に取り囲まれる俺。
これはおいしい――じゃなくて、マズイ状況だぞ……。
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