【コミカライズ】無職だけど転移先の異世界で加護付与スキルを駆使して30年後の世界滅亡の危機に立ち向かう

~目指せ! 俺だけの最強ハーレムパーティ~
猪木洋平@【コミカライズ連載中】
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1340話 強制転移【ミティたちside】

公開日時: 2024年3月31日(日) 12:52
文字数:1,749

 ドッゴーン!

 そんな爆発音とともに、ミリオンズ一行の足元が爆ぜた。


「くっ……」


「きゃっ!?」


 爆風で吹き飛ばされるダメージを負うミティやアイリスたち。

 そんな彼女たちに対して……カゲロウが言う。


「やはりとんでもない強者たちだね。呪符を用いた最高火力に耐え抜くとは。……だが、これで終わりだ」


 カゲロウはミティたちに手を向ける。

 それと同時に、地面に魔法陣のようなものが現れた。


「君たちのような強者を正攻法で無力化することは難しい。巫女様には申し訳ないが、完全な無力化は諦めるしかないね」


 カゲロウが言う。

 ほどなくして、地面に出現した魔法陣が光り輝き始めた。


「ぐっ……! こ、これは……?」


「ミティ様! これはマズイかもしれません……! 転移魔法系の波長です!!」


 レインが叫ぶ。

 ミリオンズ一行は、この場から離脱しようとした。

 だがしかし、先ほどの爆発ダメージが小さくないようだ。

 それに、『長い船旅』『鏡像カウンターアバターズとの互角の戦い』『大量の式神との戦い』と、連戦に次ぐ連戦で消耗しているらしい。

 致死性のダメージを負っている者はいないようだが、疲労や蓄積ダメージは大きかった。

 思うように動けないのも無理はないだろう。


「レジスト……しきれませんわ……!!」


「これほどの出力……! いったいどれほどの呪符を用いているでござる……!!」


「これで里の安全を買えるのなら、安いものさ。ふふ……。では、さらばだ」


 カゲロウが笑みを浮かべる。

 そして――

 シュンッ!

 ミリオンズ一行はその場から姿を消した。


 ミティたちが『霧隠れの里』から消えた後も、カゲロウたちは警戒態勢を継続する。

 しばらくして無事に転移魔法が発動したことを確信してから、ようやく緊張を解いた。


「…………くっ! はぁ、はぁ……」


「カゲロウ様! 大丈夫ですか!?」


 カゲロウが膝をつく。

 すると、部下たちが駆け寄ってきた。


「問題ないよ。……と言いたいところだけど、さすがに肝が冷えたね。何なんだ、あの超人集団は? 里の戦力を総動員した上、呪符の備蓄を使い切ることになるとは……。土地も散々たる状態だ」


 カゲロウが周囲を見渡す。

 そこには、これまでの戦闘により変形した土地があった。

 それに、式神使いや陰陽師たちも著しく消耗している。


「しかし……、あの超人的な強さの集団を強制転移させられたのは僥倖だな。不幸中の幸いと言えよう」


「ええ。確かに……。これで、あの集団は戻ってこれないでしょうね」


 部下の言葉にカゲロウがうなずく。

 カゲロウは『霧隠れの里』を束ねる者だ。

 里の者たちは、彼女の手足となって働く。

 そんな部下の一人が言う。


「しかし……カゲロウ様? 討伐や捕縛でなくてもよろしかったのでしょうか?」


「よろしくはない。巫女様にも文句を言われるだろうね」


「ならばどうして……」


「仕方ないじゃないか。あんなのと正面からぶつかったら、間違いなく里は壊滅する。かと言って、見逃すわけにもいかない」


「そ、それは確かに……」


 カゲロウは、里の中ではトップだ。

 しかし、里の外にはより上の立場の者が存在する。

 その者たちの意向に正面から逆らうようなことはできない。

 かといって里を危機に晒すわけにもいかない。

 バランス感覚が要求される地位である。


「あの者たちの転移先が、岩の中や魔物の巣であれば安心なのですが……」


「それはないだろうね。転移術には制約がある。転移先が危険な場所なら……それを本能レベルで察知して、より強いレジストがあったはずだ」


「そうでした。申し訳ありません」


 部下が謝罪する。

 転移系の魔法には制約がある。

 移動先を危険な場所に設定することによる『擬似的な即死魔法』のような使い方はできない。


「まぁでも……似たようなものかな? 異国の地で、バラバラに行動するわけだからさ。個人レベルでも脅威だが、彼女たちの真の恐ろしさはその連携力になる。別行動をとらせれば、あとは各藩での対処も可能だろう」


「だと良いのですが……」


「細かいことは考えないようにしよう。とにかく、これで『霧隠れの里』の役目はとりあえず終わった。呪符を大量に消耗したし、これからは節制が必要になるぞ。なんとか立て直していかないとね」


 カゲロウが苦笑する。

 彼女は里のまとめ役として今後の仕事に思いを馳せつつ、侵入者のことを頭の片隅に追いやったのだった。

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