バァン!
俺は稽古場に勢いよく駆け込む。
そこには、10人近い男たちが待ち構えていた。
彼らは俺に向かって刀を構える。
その中のリーダー格と思しき男が口を開いた。
「よくぞここまで来ましたね。あなたの名は?」
「流浪の剣士、高志だ」
俺は名乗る。
すると、リーダー格の男は大きく頷いた。
「やはりそうでしたか。近頃、藩内で不穏な動きをしているという噂の……」
「俺はただ、桔梗を救いたいだけだ」
「ふむ。ならば急いだ方がよろしいでしょうね。今頃は奥の部屋で……くくく」
リーダー格の男は薄気味悪く笑う。
彼が視線を向けた方向には、襖があった。
ここで、位置関係を整理しておこう。
広い意味での『雷鳴流道場』の敷地は広く、中庭、食堂、休憩所、稽古場などが存在している。
その中でも稽古場は敷地内の奥に配置されており、そのさらに奥には師範の私室があるらしい。
おそらく、そこに雷轟と桔梗がいるのだろう。
「急ごうか? 決着はすぐにつく」
「くくくっ。それはどうでしょうか?」
リーダー格の男は再び笑う。
そして、刀を構えた。
「あなたは強いと聞いていますが……私は雷鳴流の準師範! そして……」
「俺たちは、序列一位から十位までの門下生……。通称『雷鳴の十傑』!!」
「我ら『雷鳴の十傑』を倒さねば、奥に進むことはできんぞ!!」
「どこから流れてきた侍かは知らぬが、俺たちに勝てると思うな!!」
男たちは宣言する。
そして、俺を取り囲むような配置についた。
「ならば、全員倒すまでだ」
「ほざけ!」
「十傑の力を舐めんなよ!!」
「身の程を知るがいい!!」
男たちは一斉に襲いかかってくる。
なかなかのスピードだ。
俺はそれを迎え撃つ。
「はあッ!!」
俺は刀を振るう。
だが、男たちはそれを回避し、逆に刀を振るってきた。
「むっ……!」
俺はそれを受け流す。
ギリギリで頬をかすめたのか、頬から血が流れた。
「やるじゃないか」
俺は呟く。
門下生レベルを相手に、まさか傷を負うとは思わなかった。
まぁ、この程度のかすり傷なら戦闘に何の支障もないけどな。
「ふんっ!」
俺は傷を意に介さず、そのまま反撃に転じた。
刀を振るうが、男たちはそれを巧みに回避する。
「なるほど……。一人ひとりが、かなりの手練れだな」
俺は呟く。
やはり、門下生とはいえトップ10に入るような実力者は違うらしい。
1対10の集団戦というものあるが、そう簡単には勝てないようだ。
「臆したか、流浪人!」
「所詮は勢いだけの男よ!」
「我らの雷の如き剣速に敵うはずがない!」
男たちは口々に言う。
碓かにその通りだ。
このままではジリ貧だろう。
……普通ならな。
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