「まだまだ行くぞ! 【満開・桜槍閃】!!」
「【桜の舞】!」
「【八重桜】!」
景春と双子の声が重なる。
もうかなりの時間、彼らの攻撃を受け続けている。
いつ階下の侍たちがここに駆けつけてきてもおかしくない。
そうでなくとも、いずれは俺のMPが尽きる。
魔法の源であるMPが尽きれば、いよいよ打つ手がなくなってくる……。
「もういい」
俺の中で、何かがプツンと切れた。
俺はその場に仁王立ちし、刀を鞘に収める。
「ははは! どうした!? ついに諦めたか――んぺっ!?」
景春の言葉が途中で止まる。
俺の闘気弾を顔に受けたからだ。
彼には『散り桜』があるので、ダメージはないが……。
「俺も舐められたものだな。ガキども」
「「ひっ……!?」」
俺の怒気を受け、双子が後ずさる。
「な、なんだ? 雰囲気が……」
景春が戸惑う。
俺は今、かなりイライラしている。
殺気満々だ。
実際に殺す気で攻撃しようとすれば体が動かなくなるのだが、殺気だけは隠せない。
「景春……お前にはいくつもの分岐点があった。最初に交渉した時、俺にお前の攻撃が通じないと知った時、俺の攻撃が『散り桜』を突破できると分かった時、幼い双子を戦闘に引きずり出された時……。そのどこでも、お前には降伏という選択肢があった。だが、お前は降伏を選ばなかった」
「な、何を言って……?」
「聞こう。お前……絶対に人を噛まないと確信できる獰猛な竜に会ったことはあるか?」
「え……」
「俺はないな……」
俺はそう呟く。
そして、景春の返事を待たず、殺意の波動と共に駆け寄っていく。
「なっ……!? う、うぅ……!?」
景春が怯えた様子を見せる。
だが、もう容赦はしない。
「武神流奥義――」
「ひっ……。や、やめ……」
「――【大震閃】」
俺は刀を抜く。
そして、彼を上半身と下半身の真っ二つにした。
「あ、あああああああぁっ!?」
「ねぇさまぁああああ!!」
双子が悲鳴をあげる。
強い殺気と共に、俺は景春を一刀両断にしたのだ。
トラウマものの光景だろう。
俺としては本当に殺しても良かったのだが、残念ながら……
「はぁ、はぁ……! くそっ! ば、馬鹿にしよって……!!」
真っ二つにされた景春が、のそのそと起き上がる。
そうなのだ。
彼には血統妖術『散り桜』がある。
魔力や闘気が不十分な斬撃は、無力化されてしまう。
まぁ、だからこそ俺は自身の呪いに打ち勝って攻撃できたのだが。
「ね、ねぇさま?」
「よくぞご無事で!」
「うぅ……! 許さん……! 桜花家を侮ったこと、後悔させて……うぁっ……」
景春が立ち上がる。
しかし、すぐに体の一部が花びらとなってその場に崩れ落ちる。
やはりそうか。
強い精神的ダメージを与えれば、こうして『散り桜』の制御が不安定になるらしい。
「思い知ったか? 俺が本気なら、お前たち程度はいつでも殺せるんだ」
「「「ひっ……」」」
「確かに、俺には不殺の呪いがある。だが、それはいつ解けてもおかしくないものだと心得ろ。お前たちの態度次第では……桜花藩自体を滅ぼしてやってもいいんだぞ」
俺は言う。
景春と双子は強い恐怖のためか、気を失った。
揃いも揃って股間部から液体を漏らしているし、意識を取り戻してももはや脅威ではあるまい。
これでようやく勝利と言っていいだろう。
あとは……階下から迫ってきている侍たちを蹴散らして、紅葉たちの無事を確認して……。
仕上げに、城下町全体に向けて勝利宣言をするのもアリだな。
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