「さて、これからどうするべきか……」
俺は桜花城の城下町を歩きながら思考する。
今後の予定についてだ。
繰り返しになるが、俺は記憶喪失である。
局所的な記憶は時々取り戻せたりもしているが、全体的にはまだまだ穴だらけ。
何かのきっかけが欲しい。
そこでヒントになりそうなのが、ミッションである。
ミッション
桜花城を攻め落とし、支配しよう
報酬:加護(大)の解放
スキルポイント10
記憶が定かではないとはいえ、この『ミッション』が特別であることくらいは分かる。
ミッションの内容が……ではなく、ミッションという存在そのものが、だ。
この指示に従えば、記憶に何かしらの好影響があるかもしれない。
だが……。
「桜花城を攻め落とすには、情報も戦力も不足しているんだよなぁ……」
城下町に来てから、怪しまれない程度に町人たちから情報を集めている。
また、数日前には思い切って桜花城そのものに侵入したりもした。
そのおかげで、多少の情報は集まっている。
だが、まだまだ足りない。
特に、桜花藩の主戦力『桜花七侍』の情報が不十分だ。
どれくらい強いのか、全くの未知である。
俺1人でも7人を一蹴できるほど差があるなら恐れるに足りないが……。
その可能性は低いだろう。
今の時点で現実的に考えるなら、まず7人のうち3人ぐらいが不在のときを狙いたい。
そして、残り4人のうち3人を俺が相手取り、1人を紅葉と流華に担当してもらう……。
これが現状におけるベストか。
だが、前述の通り『桜花七侍』の情報が不足しているのが問題だ。
桜花城に、通常は何人ぐらいが詰めているのか?
城の外で活動する頻度は?
加護(微)を持つとはいえ、紅葉と流華の2人で1人を相手取れるだろうか?
不確定要素が多すぎて、まだ判断できない。
「しばらくは情報を集めつつ、様子見だな……。紅葉と流華には鍛錬を続けてもらって……」
より詳細な情報が集まれば、桜花城攻めの作戦も立てられる。
紅葉と流華が強くなれば、桜花七侍を相手取ったときの勝率が増すだろう。
今は宿屋で留守番がてら、室内でもできる鍛錬をしてもらっている。
マジメな2人は、確実に成長を続けている。
加護(微)から加護(小)に上がれば、一足飛びに強くなるはずだ。
「ん? あれは……?」
俺が考え事をしながら歩いていると、前方に寂れた道場が見えた。
看板には『武神流・剣術道場』と書いてある。
俺はこのあたりの地域の事情に疎い。
武神流とやらが、どれほどの影響力を持つ道場なのかはよく分からないが……。
「とりあえず入ってみるか」
俺は興味を引かれ、武神流の門を叩くことにしたのだった。
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