俺とベテルギウスの激しい戦いが続いている。
龍神の力は脅威だが、炎精サラの力を得た俺もそうやすやすと負けるつもりはない。
「――【獄炎球】!!」
俺の右手から、特大の火の玉が放たれた。
「その程度か! 同じ技は通用せん!!」
ベテルギウスが拳を振るう。
すると、その拳から凄まじい衝撃波が発生し、火の玉を打ち消した。
「ちぃっ!!」
俺は舌打ちをする。
同じ魔法でも、多めの魔力を込めておいたんだけどな。
(ベテルギウスの奴め、さっきよりも強くなっていやがる……)
俺という掘り出し物を見つけて、やる気満々になった影響か。
だが、こちらも負けてはいない。
元より俺は、火魔法を最も得意としている。
そんな中、俺は新たに炎精サラの力を借りて纏装術を発動した。
今の俺は、まさに火のスペシャリスト。
自分で言うのも何だが、俺を止められる奴はそうそういないだろう。
「――炎あれ。わが求むるは豪火球。【千本桜】!!」
俺は右手を掲げ、詠唱する。
直後、俺の周囲に大量の炎の桜花弁が出現する。
「なっ!?」
ベテルギウスが驚く。
だが、すぐに冷静さを取り戻して叫んだ。
「無駄だ! 数だけ多くとも、矮小な威力で我が闘気を貫けると思うな!!」
ベテルギウスがそう言うと同時に、彼の身体から闘気が溢れ出す。
そして、そのまま防御態勢を取った。
俺はそれを見てニヤリと笑う。
「矮小な威力かどうか……試してみるがいい!!」
俺は右手を突き出した。
「散れ! 【千本桜・鳳凰乱舞】!!」
俺の号令に合わせて、炎の桜花弁が一斉にベテルギウスへと殺到した。
「ぐむっ!? 一発一発の威力が想定以上に高い……。――くそがぁあああっ!!!」
ベテルギウスが絶叫する。
だが、俺は手を緩めない。
「まだまだいくぞ! ――炎よ燃え上がれ。天高く舞い上がり、我が敵を焼き尽くせ! 【炎魔煉獄覇】ぁ!!」
俺は超火力の魔法を放つ。
ベテルギウスを中心に、巨大な炎の柱が立ち昇った。
「おのれぇえっ!! 調子に乗るなぁあああっ!!」
ベテルギウスの闘気がさらに膨れ上がった。
炎が次々とかき消されていく。
「なにっ!?」
「【龍撃・神威】!!」
ベテルギウスが全身に闘気を纏う。
そして、炎柱を強引に突き破って突進してきた。
「くっ!!」
俺は咄嵯に防御姿勢を取る。
炎化している今の俺に物理攻撃は効かないはずだが……。
嫌な予感がしたのだ。
そしてその予感は正しかった。
「ぐぁっ!!」
俺はベテルギウスの攻撃により、大きくふっ飛ばされてしまう。
何とか重力魔法で体勢を立て直したが、それでもかなりのダメージを受けてしまった。
「はぁ……はぁ……」
「くっくっく……どうだ? 己の無力さを実感できたか?」
「……何の魔法だ? 今の俺に物理攻撃を通すとは……。それに、その前の火魔法も、そう簡単に突破できるものじゃないはずなんだがな」
「今の一撃で理解できなかったのか? まあいい。教えてやる」
ベテルギウスが不敵に笑う。
そして、言葉を続けた。
「我は龍神ベテルギウス。魔法については詳しくないが、魔法使いへの対策くらい心得ている」
「対策だと?」
「そうだ。闘気の質を変えれば、特定属性への耐性や貫通力を上げることができるのだ」
「闘気にも……質が……?」
聞いたことのない話だ。
いや……あれか?
アイリスやエドワード司祭の得意技法に『聖闘気』というものがある。
俺はてっきり『聖なる闘気』ぐらいに思っていたが、『聖魔法系の属性に変質させた闘気』だったのかもしれない。
今回の場合、ベテルギウスは通常の闘気を『火闘気』に変質させてきたわけか。
詳しいことは検証が必要だが、その可能性はある。
「ふん。貴様の火魔法には驚かされたが、それだけだ。所詮は人間。一属性を極めるのが精一杯といったところであろう。我の敵ではなかったな」
「なるほど……。熟練の闘気の使い手……龍神ベテルギウスの力は凄まじいな」
「そういうことだ」
ベテルギウスが得意げに胸を張る。
そして、そのまま言葉を続けた。
「では、続きを始めようか。次は我の番だ。久方ぶりの運動として、貴様をボコボコにしてから帰るとしよう。なに、心配せずとも命までは――」
「――だが、残念だったな。お前は一つ、勘違いをしている」
俺はベテルギウスの言葉を遮り、口を開く。
「勘違いだと?」
「俺はまだ、全ての力を出し切ったわけではないのだ」
「なに? 何を言っている? 貴様の力は、既に見切ったぞ。負け惜しみはよせ、見苦しい」
「それはお前の勝手な思い込みだ。今、証明してやろう」
英霊に勝てば、良い経験になりそうだ。
人を殺す心配もないし……。
ヤマト連邦への潜入作戦前に、ちょうどいい肩慣らしになる。
俺はそんなことを考えながら、魔力と闘気を練り上げたのだった。
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