【コミカライズ】無職だけど転移先の異世界で加護付与スキルを駆使して30年後の世界滅亡の危機に立ち向かう

~目指せ! 俺だけの最強ハーレムパーティ~
猪木洋平@【コミカライズ連載中】
猪木洋平@【コミカライズ連載中】

1716話 ミティの進化

公開日時: 2025年4月13日(日) 12:10
文字数:982

 風がミティの髪を優しく撫でる。

 その風の中にも、戦いの名残がかすかに渦巻いていた。

 目に見えない熱――魔力と妖力の入り混じった気配が、まだこの場に留まっている。


「ふぅ……。今の私なら、火魔法――いえ、火妖術の真似事ぐらいはできるわけですか」


 小さく息を吐きながら、ミティは手を見つめた。

 手のひらの表面には、火傷ともつかない淡い痕が残っている。

 それは、彼女の中で何かが変質し始めている証。

 痛みは不思議とない。

 ただ、感覚だけがやけに鮮明だった。

 火の妖獣が放った熱を参考に、己がMPを妖術に活用し、一撃に込めた。

 無茶とも言えるぶっつけ本番の応用――しかし、それは確かに結果を生んだ。


「……これが、私なりの進化」


 呟きは、己の存在を確認するようなものだった。

 誰に聞かせるでもなく、しかし誰かに伝わってほしい想いがそこにはあった。


「ビッグ・ボンバー……。タカシ様との冒険でも、幾度となく助けてくれた必殺技でした。しかし……」


 振り返ると、かつての戦いの記憶が脳裏をよぎった。

 全力で大槌を振り下ろし、大地すら穿つその力。

 腕力と質量、勢いに任せた豪快な技は、確かに強力だった。

 だが、それだけでは倒せない敵もいる。

 大和連邦への渡航前、聖女リッカに敗北したのは記憶に新しいところだ。

 あの日の悔しさと絶望、そしてタカシへの思いが彼女を突き動かしている。


「レオ・ボンバー。……いい名前のはずです。タカシ様なら、きっと褒めてくれるでしょう……」


 呟いた名に込めたのは、尊敬する者への報告、そして小さな誇り。

 レオ――それは古き言葉で「獅子」を意味する。

 そんな古代語の響きが、ミティの中で力強く鳴り響いていた。


 ビッグ・ボンバーに、妖獣の熱を。

 爆発的な推進力を。

 そして、何よりも自分自身の中に眠る獣性を。

 すべてを注ぎ込んで作り上げた新たなる技、それがレオ・ボンバーだった。


「……ふふ。まだまだ、こんなものでは終わりませんよ」


 呟きと共に、彼女の瞳は遥か地平の先を捉える。

 ここに来たのは、力を磨くため。

 そして、美帝としての名を大和に知らしめるため。


 仲間と再会する目処が立たなければ、このまま南西へと抜け、桜花藩を目指すのもいい。

 だが今は、死牙藩の北東――山林と湖畔が交錯する地に、たった一人で足を踏み入れたばかりだ。

 この地でミティは新たな必殺技をいくつも身につけ、その実力を飛躍的に伸ばすことになるだろう――。

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