「ここが天守閣か」
俺は階段を昇り終えた。
4階から5階への階段には、特に細工はなかった。
おそらく、ここまで侵入者が来ることは想定していないのだろう。
スムーズに最上階の天守閣にたどり着くことができた。
「さて、いよいよ桜花景春との対峙だ……。奴の首を獲れば、ミッションクリア。どんな面をしたクソ野郎かは知らんが、ここまで来たからには容赦せん」
俺は天守閣の襖を勢いよく開ける。
「なっ!?」
「き、貴様は……!?」
目の前には2人の男がいた。
彼らは俺を見ると、驚愕の表情を見せる。
そして、すぐに刀を抜いて構えた。
「侵入者というのは貴様だったか。よもや、ここまで来るとは……。雷鳴流を打ち破っただけはある」
「偽物の記憶を植え付け、我らを欺いていたようだな。無月殿まで籠絡するとは、想定外であった」
男たちが俺に向けて言う。
その口ぶりは、俺を知っているかのようだ。
もちろん、俺も彼らのことをよく知っている。
「確か……雷轟と金剛だったか? 桜花七侍の……」
「ほう? 儂らの名を覚えておったか」
「貴殿のような強者に名を覚えられているとは、光栄だ」
俺の言葉を受け、雷轟と金剛が笑う。
彼らは桜花七侍。
桔梗の件で、俺と敵対した奴らだ。
あのときは、あっさりと撃破してやったのだったな。
場の成り行きや桔梗の嘆願もあり、命までは奪わなかったが……。
「せっかく拾った命だ。もっと大切にした方がいいぞ? 自殺願望があるのなら話は別だがな」
俺は挑発的に言ってみせる。
確かに彼らは強い。
だが、チート持ちの俺ならば余裕で勝つことができるだろう。
「ふっ。もちろん、自殺願望などない」
「我は駒。与えられた使命を全うするまで。景春様の命により、貴殿とは友好関係を――」
「断る」
2人の侍の言葉を、俺は遮る。
「お前たちは敵だ」
そう断言する。
そして、闘気と魔力を開放した。
「うぐっ!? な、なんという……」
「ま、待て……! 我々は貴殿と……うぁ……」
「お前たちとは、戦うだけ無駄だ」
俺は2人の侍を威圧する。
彼らは俺の闘気と魔力にあてられ、動けなくなってしまったようだ。
2人とも、武器こそ構えたままだが……
「眠ってろ」
「「がっ!?」」
俺はトドメに、闇のオーラを開放して威圧を強めた。
2人はそれに耐えきれず、意識を失った。
「バカめ……。復活怪人が活躍できるとでも思ったか? 俺も舐められたものだな」
一度は敗北した者が、再戦して勝利を収める。
それは、確かに王道の展開だ。
しかしあくまで、主人公側・正義側の話である。
悪側視点において、そんな展開はあり得ない。
戦隊モノやRPGなどでも、復活した序盤の敵はあっさりとやられるものだ。
「さて、これで邪魔者はいなくなった」
せっかく天守閣の間に入ったというのに、2人の侍のせいで無駄な時間を過ごした。
俺は改めて、奥に視線を向ける。
天守閣の間は、なかなかに広い空間のようだ。
奥の壁には、桜花家の家紋が描かれた掛け軸がかかっている。
風通しのいい構造になっており、天守閣の最上階から城下町を一望できるようだ。
「そして……あいつが景春か」
奥には2人の人物がいた。
片方は、40代くらいの妖艶な女性。
そしてもう片方は、10代前半くらいの若い少年。
さぁ、紅葉たちを救い出すとしよう。
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