【コミカライズ】無職だけど転移先の異世界で加護付与スキルを駆使して30年後の世界滅亡の危機に立ち向かう

~目指せ! 俺だけの最強ハーレムパーティ~
猪木洋平@【コミカライズ連載中】
猪木洋平@【コミカライズ連載中】

218話 ハルクの娘 サリエの治療

公開日時: 2021年2月22日(月) 20:44
文字数:3,331

ラーグの街を出発して数日が経過した。


「さあ、見えてきたぞ。あれが儂の治める街だ」


「なるほど。あの街が……」


 なかなか立派な街だ。

馬車に乗ったまま門を通り、そのまま街中を進んでいく。

大きな邸宅の前で馬車が止まった。


「これが儂の屋敷だ。さあ、申し訳ないがさっそく娘を看てくれないか」


「わかりました」


 ハルクの案内のもと、俺とアイリスで屋敷内を歩いていく。

ミティ、モニカ、ニム、ユナには応接室で待機してもらう。

まあ、あまり大人数で病人の部屋に押しかけるのもな。


 歩みを進めていく。

とある部屋の前まで来た。

おそらく、ここが彼の娘の部屋だろう。


 部屋の中に入る。

部屋の中では、ベッドの上で寝ている人がいた。

傍らには、メイドのような人が控えている。


 ハルクが口を開く。


「サリエ。帰ってきたぞ。具合はどうだ?」


「はあ、はあ……」


 ベッドで寝ているのは若い女性だ。

彼女がハルクの娘か。

苦しそうにしている。


「つらそうだな。だが、もう安心だ。優秀な治療魔法士さんを連れてきたぞ」


「はあ、はあ……。ありがとうございます。お父様……」


 サリエがそう言う。

ハルクがこちらを向く。


「サリエは、数年前に病を発症してな。とは言っても、体調の良い日には庭を散歩するぐらいの元気はあったのだ」


 ハルクがそう言う。

ひと呼吸置いて、言葉を続ける。


「しかし、ここ1年ほどで、急激に病状が体調が悪化してきた。特にこの1か月ほどは、ほぼベッドから動くことができていない」


 ベッドから動けないレベルの病か。

ダリウスやマムと同じか、それ以上の重病と言っていいだろう。


「わかりました。さっそく、治療魔法を試してみます」


「よろしく頼む」


 俺は治療魔法の詠唱を開始する。


「……彼の者に安らかなる癒やしを。リカバリー」


 癒やしの光がサリエを覆う。

彼女の息が少し落ち着いてくる。


「はあ、はあ……。……少し楽になりましたわ。ありがとうございます。治療魔法士様」


 サリエがそう言う。

確かに、少しは病状が改善したようだ。


「まだだよ。まだ完治はしていないみたいだ」


「そうだな。あと何度か治療魔法をかけてみよう」


 アイリスの言葉に、俺はそう答える。


「うん。それもいいけど、ボクとタカシで合同魔法を発動しよう。今までにも練習してきたでしょ」


「ああ、合同魔法か。そうだな。それが良さそうだな」


 合同魔法。

複数人で力を合わせて、魔法の威力や効力を増幅させる技術だ。

ゾルフ砦の防衛戦では、リーゼロッテ、リルクヴィスト、コーバッツの3人で水魔法の合同魔法を発動していた。

また、ゴースト戦やヘルザム戦では、俺とアイリスの2人で聖魔法の合同魔法を発動したこともある。


「じゃあ、いくぞ。アイリス」


「うん。いつも通りに息を合わせよう」


 アイリスとともに、治療魔法の詠唱を開始する。

合同魔法は、発動者同士の波長を合わせる必要がある。

集中して、詠唱を続ける。


「「……彼の者に安らかなる癒やしを。リカバリー」」


 大きな癒やしの光がサリエを覆う。

彼女の息がさらに落ち着いてくる。

顔色も、こころなしか良くなってきているように見える。


「……あら? 苦しみがなくなってきましたわ」


「おお! サリエ!」


「お父様!」


 ハルクとサリエが抱きしめあう。

無事に治療できたようだ。

2人で抱き合って喜びを噛みしめている。

しばらくして、彼らがこちらに向き直る。


「タカシ殿。本当にありがとう」


「ありがとうございます。治療魔法士様がた」


 ハルクとサリエがそう言って、頭を下げる。

サリエの俺に対する視線が少し熱い気がする。


「いえ。体調は改善されたようですが、体力が戻るまでは時間がかかるでしょう。しばらくは慎重に様子を見てください」


 俺はそう言う。


「わかった」


「気をつけますわ」


「では……。今日のところはこれで失礼します。経過観察も必要ですし、しばらくはこの街に滞在していますので」


 俺はそう言って、立ち去ろうとする。


「待ち給え。せっかくだし、我が屋敷に泊まっていくといい。もちろん、君のパーティメンバーのお嬢さんがたもいっしょだ」


 ハルクがそう言う。


「えっ。この屋敷にですか?」


「いいんじゃないかな。もしサリエさんに何かあれば、すぐに対応できたほうがいいだろうし」


 アイリスがそう言う。


「それもそうか。……わかりました。お言葉に甘えて、お邪魔させていただきます」


 俺はハルクにそう返答する。


「おお。では、案内させましょう! おおい! セルバス!」


「お呼びでしょうか?」


 ハルクの呼びかけに、1人の老人が答える。

執事のような雰囲気の人だ。


「タカシ殿たちを客室へ案内してくれ。くれぐれも失礼のないようにな」


「ははっ。承知しました。……タカシ様。こちらへ」


 セルバスの案内に従い、屋敷の中を歩いていく。

俺の自宅もなかなかの豪邸だが、この屋敷はさらに広い。

やはり町長で貴族ともなれば、いいところに住んでいるな。


 途中でミティたちとも合流した。

俺、ミティ、アイリス、モニカ、ニム、ユナ。

セルバスの案内のもと、屋敷内を進んでいく。


「こちらでございます。どうぞ我が家のようにくつろいでくださいませ」


 セルバスに通された部屋は、大きな客室だった。

部屋の中に、さらに小部屋がいくつかある。

ベッドは全部で6つ以上ある。

俺たち全員でこの部屋に泊まることができる。


「いい部屋ですね。ありがとうございます」


「いえ。お客様に対して当然のおもてなしでございます。……では、私はこれで失礼致します。定期的に様子をうかがいに参りますが、何かご用向があれば、そちらのベルにて連絡をお願いします」


 セルバスが一礼し、去っていった。


「きゃっほー!」


 アイリスがそう叫び、ベッドにダイブする。

ニムもそれに続く。


「ふかふかのベッドだー!」


「や、やわらかいです。いい気持ちです」


 アイリスとニムがそう言う。

貴族様の屋敷に泊まることになったというのに、緊張感の欠片もない。

まあ俺も特に緊張などはしていないが。

なんだか旅行で、いい旅館に泊まることになったような気分だ。


「タカシ様! 部屋に備え付けの浴室もありますよ。それも結構大きいです」


 ミティが浴室をのぞき、そう言う。

俺も見てみる。

確かに、かなり広い。

ラーグの街の自宅の風呂や、ガロル村の秘湯にも引けを取らない広さだ。


「おっ。いい浴槽だな」


「ふふん。悪くないわね。魔石でお湯をはれるみたいね」


 俺とユナがそう言う。


「後でみんなで入りましょう!」


「そうだな! ぜひみんなで入ろう!」


 ミティの提案に、俺は二つ返事でそう答える。

みんなでお風呂ふたたび。

ガロル村の温泉では、俺は目隠しをしていた。

アイリスが特に恥ずかしがっていたからな。


 今では、俺とアイリスは結婚した。

目隠しなしでの入浴も、許してもらえるかもしれない。

いよいよ、本当の意味での男のロマンが成し遂げられるというわけだ。


「いいけど。あんまりジロジロは見ないでね」


 アイリスからの許可が出た。

夜の入浴が楽しみだ。

そう思っていたが。


「えっ。みんなで入るの? 私の聞き間違いかしら。あなたたちはみんな、そういう仲なの?」


 ユナがそう言う。

そうだ。

彼女が居たのだった。

事情を説明しないと。


「ええと。俺とミティ、それに俺とアイリスは結婚している。そういう仲だ」


「ふふん。まさか、2人と結婚しているなんてね。あとの2人は?」


「モニカとニムとは結婚していないぞ」


「でも、私も考えてはいるけどね」


「わ、わたしもです!」


 モニカとニムがそう言う。


「ふふん。そうだったのね。これはさすがに予想外だわ。……計画を練り直す必要があるかしら。いや、逆にこれはこれで……。4人も妻を娶ろうとしているほどの男という味方もできるし……」


 ユナが何やらつぶやいている。

一夫多妻が認めれれているこの国でも、やはりあまり外聞はよくないのかもしれない。


 ユナの心象を悪くしたかもしれない。

そう思って彼女の忠義度を確認してみたが、むしろ少し上がっていた。

30半ばになっている。


 なんでだ?

女性にモテていること自体が、一種のステータスみたいになっているのだろうか。

正のスパイラルだ。


 そんなことを考えつつ、ハルク邸の客室でゆっくりとくつろぐ。

夕食はなかなか豪勢なものが振る舞われた。

その後、お風呂でちょっとしたドタバタもあったのだが、それはまた今度の話としよう。

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