【コミカライズ】無職だけど転移先の異世界で加護付与スキルを駆使して30年後の世界滅亡の危機に立ち向かう

~目指せ! 俺だけの最強ハーレムパーティ~
猪木洋平@【コミカライズ連載中】
猪木洋平@【コミカライズ連載中】

1257話 エリオット王子

公開日時: 2024年1月7日(日) 12:31
更新日時: 2024年1月8日(月) 11:34
文字数:1,891

 俺が治療岩(治療院)で軽傷者の治療をした数日後――。


「ふむ……。貴殿がナイトメア・ナイト殿か。このたびは、人魚族の戦士たちの傷を癒やしていただき、心より感謝する」


 俺が滞在している『海神の大洞窟』にて、1人の青年人魚がそう告げる。

 彼はなかなかに立派な鎧を身に着けており、気品ある雰囲気を漂わせていた。


「エリオット兄様……」


 メルティーネが小声でつぶやく。

 兄様?

 つまり、メルティーネのお兄さんか。

 確かに顔立ちや雰囲気が似ている。


「ああ、俺はナイトメア・ナイトだ。好きに呼んでくれ」


 俺はそう名乗る。

 本名はタカシだが……。

 この里の人たちには、既にそう名乗ってしまっているからな。

 今さら訂正するのも面倒だし、このままでいいや。


「それで、エリオット殿下はどうしてここに?」


「もちろん、貴殿の様子を見に来た。父上やメルティーネからも話は聞いているが、人族が人魚族の里で滞在しているというのは実に興味深い」


 エリオットが言う。

 人魚族は、人族への偏見や嫌悪感が強いはずだが……。

 エリオットはそうでもないのか?

 どうして……。


「不思議そうだな。人魚族の俺が、人族の貴殿に敵対心を向けていないことが」


「あ、ああ……。エリオット殿下は俺に対して、特に偏見や嫌悪感を示さなかったからな……。メルティーネも同じだったし……」


 俺は少し驚きながらそう言う。


「人族への警戒心は、教育によって叩き込まれていたものだ。幼い子どもや無茶な若者が、無闇に人里へ行かぬようにな」


「ふむ……?」


 エリオットが説明してくれる。

 そういえば、メルティーネの侍女リマも同じようなことを言ってたな。


「現時点で20歳以上の者は、そういった教育を色濃く受けている」


「ならば当然、エリオット殿下やメルティーネもそうなのではないか?」


 俺はそう指摘する。

 エリオットは、間違いなく20歳を超えているように思う。

 メルティーネは微妙なところだ。

 大人っぽい17歳……という可能性もあるが……。

 普通に見れば、20歳ちょいぐらいかな。


「確かにそうだ。しかし、俺たちは王族だぞ?」


「うん?」


「王族である俺たちは、幼少期から護衛を与えられていた。単独で人里に向かってしまうリスクは小さい。それに、為政者としてより正確な歴史を知っておく必要がある」


「ああ、なるほどな……」


 教育というのは、子どもをより良く育てていくためのもの。

 一般住民の子どもに対する教育であれば、『人族はとにかく危険な連中だから近づいてはダメ』と教えておけばいいだろう。

 自分から人里に向かってしまうリスクさえ低減させておけば、特に問題はないからだ。


 しかし、将来的に為政者となる王族に対する教育であれば……そういった教育は不要となる。

 護衛の目があるため勝手な行動をするリスクは小さいためだ。

 それに、成長後の統治判断において、偏った知識で判断を下すことは好ましくないという事情もある。


「先代国王は、一般住民に対する教育を徹底しすぎたと悔いておられた……。現国王――父上は、人族への歩み寄りに前向きだ。とはいえ、大歓迎というわけでもないがな」


「ふむ……。それはそうだろうな……」


 こういうのは、理性だけではどうにもならないことが多い。

 先代国王の世代では、実際に人族からの被害も出ていたはずだ。

 現国王の世代に変わって被害はなくなったようが、記憶が風化するにはまだ早い。

 さらなる融和は、エリオットやメルティーネの世代になってからのことになるか……。


「実を言えば、俺の同世代の戦士どもにも人族を嫌う者は多くてな……」


「ほう」


「連中の鬱憤を抑えるために、『海神の憤怒』という組織まで立ち上げてやったほどだ。人族に鉄槌を下す練習をさせて、怒りを発散してもらっている。今となっては、その組織をどうしたものか持て余しているのだがな……」


 エリオットは苦笑いしながら言う。

 どこかで聞いたような組織だ。

 いや、あれは『海神の怒り』だったか。

 少し違うな。


「ずいぶんと内情を話してくれるんだな。王族なのに、内情をペラペラ喋っていいのか?」


「貴殿にはそれだけ期待しているということだ。そもそも、これらの情報は融和に向けては重要な一方で、里全体としては大した情報ではない」


 エリオットがそう言う。

 彼が漏らした情報は……人魚族の教育方針の転換や、『海神の憤怒』という組織についてか。

 確かに、国として絶対に秘匿するべき情報でもなさそうだ。


「では、そろそろ本来の目的に戻ろう。ナイトメア・ナイト殿、貴殿は治療岩にて軽傷者の治療をしてくれたそうだな」


「ああ……まぁな……」


 話が一周してきた。

 エリオットがここに来た『本来の目的』とは、いったい何なのだろう?

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