【コミカライズ】無職だけど転移先の異世界で加護付与スキルを駆使して30年後の世界滅亡の危機に立ち向かう

~目指せ! 俺だけの最強ハーレムパーティ~
猪木洋平@【コミカライズ連載中】
猪木洋平@【コミカライズ連載中】

1539話 闇の螺旋

公開日時: 2024年10月17日(木) 12:46
文字数:1,243

「さて、夜の行動だ。屋根伝いに桜花城の方面へ向かうか」


 俺は1人呟く。

 日中とは服装が違うし、俺は『気配隠匿』のスキルも持っている。

 そもそも、夜のため人通りが少ない。

 普通に歩いても大きな問題にはならないだろうが、目立たないに越したことはない。


「よっと」


 俺の姿が、夜の街へ溶け込むようにして消えていく。

 いや、実際に消えているわけではないが……。

 そこらの一般人に存在を察知されることはないだろう。

 隠密に行動するには最高のスキルだな。


「…………」


 俺は静かに屋根の上を走る。

 日中の活動時よりも、さらに隠密性を意識して動いている。

 下手に存在を気取られるわけにはいかない。

 まぁ、『気配隠匿』を見破るような相手がいたなら、殺せばいいだけだが。


「おい! どこに行くつもりだ、てめぇ!!」


「っ!?」


 静かな夜の街に響く、大きな声。

 一瞬、俺が見つかったのかと思ったが……


「なんだ、酔っぱらいか……」


 俺は屋根の上で小さく息を吐く。

 スキル『気配隠匿』を看破したわけではないようだ。

 大声を出したらしき男の近くには、他の男たちが集まってきている。

 喧嘩か?

 いや、あれは……


「や、やめて……」


「げはははは! いいじゃねぇかよ!!」


 酔っぱらい風の男たちが、嫌がる女性を組み伏せている。

 どうやら、強姦の現場のようだ。

 さっきの『どこに行くつもりだ、てめぇ』というのは、女性に向けての言葉だったんだな。


「ま、俺とは関係ないな。先を急ぐか……」


 俺は女性を見捨て、先へ向かうことにする。

 彼女がどうなろうが、どうでもいい話だ。


「……ん? いや、待てよ……?」


 俺の中で、1つのアイデアが思い浮かぶ。

 別に、気が変わって女性を助けるつもりになったわけではない。


「【闇の螺旋】」


 俺は女性を襲っている男たちに手のひらを向け、闇魔法を発動する。

 これは攻撃魔法ではない。

 対象から闇を吸収する魔法だ。

 男たちから瘴気が出て、螺旋状になって俺へと向かってくる。


「な、なんだ!? うっ、頭が……」


「俺たち……どうしてこんなことを……!?」


「す、すまねぇ! 悪酔いしちまったみたいだ……!!」


 一瞬のうちに、女性たちを襲っていた男たちの人格が変わった。

 中には、自分の行いに戸惑いを感じている者すらいる。

 劇的な変化だな。


 闇の瘴気は素晴らしいものだ。

 欲望に忠実になり、行動の思い切りが良くなる。

 闇を俺に吸収されてしまった今、酔っぱらいたちの人格は弱々しいものになった。

 あれでは、何かしらの欲望があっても踏ん切れずに終わってしまうだろう。


「ふ、ふふふっ……。こいつぁいい……! 闇がこんなに素晴らしいものだったとは……。今までの俺はどうかしてたぜ」


 男たちから吸収した闇を、俺は体内に取り込む。

 桜花城までの道中で、思わぬ拾い物をしたな。

 酔っぱらいと女の間には、まだひと悶着あるかもしれないが……。

 俺には何の関係もない話だ。


「さぁ、桜花城が見えてきた。今の俺なら、いつもとは違ったアプローチができそうな気がするぜ。くくく……」


 俺はニヤリと笑う。

 そして、夜の街を静かに駆けていくのだった。

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