【コミカライズ】無職だけど転移先の異世界で加護付与スキルを駆使して30年後の世界滅亡の危機に立ち向かう

~目指せ! 俺だけの最強ハーレムパーティ~
猪木洋平@【コミカライズ連載中】
猪木洋平@【コミカライズ連載中】

1062話 こんな…に…困るな…

公開日時: 2023年6月24日(土) 12:05
文字数:1,785

 俺はリオンを撃破した。

 そして、人魚メルティーネと出会った。

 彼女は、かつてリオンに捕らえられていた人魚らしい。

 憎い相手を倒した俺に、感謝している様子だ。


「まぁ、『ナイトメア・ナイト』ですか。人族の名前は変わっておりますのね」


「いや、これは……」


 あくまでコードネームなんだけどな……。

 しかしそれを伝えれば、次こそは本名を名乗らざるを得なくなる。

 ここは彼女の誤解を放置するしかない。


「ふふっ。では、ナイ様。この男をやっつけてくれたお礼に、私たちの里へご招待しますわ」


「里……だと……?」


「はい。盛大な宴をさせていただきますわ」


「……いや、今回は遠慮しておこう」


 人魚の里。

 気になる。

 いろいろと珍しい道具や素材があるかもしれない。

 リオンの口ぶりからしても、この機会を逃せば一生行くことはできないかもしれない。

 だが、俺は断った。


「あら? どうしてですの?」


「実は、急ぎの用事があってな。とても残念だが……またの機会にさせてほしい」


 これは本当だ。

 俺にはヤマト連邦へ向かう使命がある。

 オルフェスに残しているモニカとニム、それにラーグで待機している他の面々を放っておくわけにはいかない。


 そこらの普通の村に行くだけならまだしも、人魚の里だからな……。

 貴重な体験である一方、予測不能の事態が起きないとも限らない。

 例えば、里で1日を過ごしている間に地上では1年が過ぎていたり……。

 まぁそこまで極端なことはなかったとしても、油断はできない。

 数週間程度のタイムラグでさえ、ヤマト連邦の任務が控えた今ではキツイものがある。


「そうなのですか。それならば仕方ないですの」


「ああ」


「なら……せめてものお礼をいたしましょう。もっと下に来てくださる?」


「む? ……わかった」


 俺は重力魔法の出力を調整し、素直に海面へと近づいていく。

 人魚のお礼か。

 いったい、どんな素晴らしいものが――


「ふふっ。近くで見ても、素敵な殿方であることがわかりますわね」


「世辞は要らんぞ」


「お世辞ではありませんの。これが私の初恋でございます。そして――」


 ちゅっ。

 次の瞬間、俺の唇に柔らかい感触が伝わった。


「な……!?」


「うふふ。私のファーストキスを差し上げますの」


 メルティーネが妖艶な笑みを浮かべる。


「……な、何をする!」


「あら? 感謝の気持ちを行動で示しただけですのよ?」


「……」


 俺は言葉を失う。

 まさか、人魚がここまで積極的だとはな。

 正直、予想外だ。


「人魚のファーストキスには、人族にとって特別な意味と効果がありますの。ナイ様に幸運が訪れることを祈っておりますのよ」


「い、いや……。俺は――」


「それでは、失礼いたしますの。いつかまたお会いしましょう」


 そう言うと、メルティーネは優雅に身を翻す。

 そして、海中へと消えていった。


「……」


 俺は呆然と空中に佇むことしかできなかった。

 お礼というのが、まさかのキスとはな……。

 それも、人魚から――


「はぁ~……」


 俺は大きなため息をつく。

 まさか、こんな形で人魚とのファーストコンタクトを果たすことになるとは思わなかった。

 人生は何が起こるか分からないものだな。


「さて、とりあえずリオンを回収して戻るとするか……」


 俺はリオンを回収するべく、彼の元へと向かう。

 俺とメルティーネが会話をしている間に、少しばかり流されていたようで、彼は遠くの方に浮かんでいた。


「おい、リオン! 生きてるか?」


「……」


 返事がない。

 ただの屍のようだ。

 ……というのは冗談として。


「生きているんだろ? 闘気の量が戻ってきているじゃないか」


 ズタボロ状態だったはずなのに、ちょっと会話をしている間に回復するとは。

 やはり英霊ベテルギウスの力は侮れない。

 まぁ、その効力も間もなく切れるはずだが……。


 ビクンッ!

 水面に浮かぶリオンの体が跳ねた。


「……ん? なんだ?」


 俺は警戒する。

 大ダメージを受けて痙攣でも引き起こされているのだろうか?

 あるいは、英霊纏装の副作用か……。


「こんな……に…………困るな……」


 リオンが何か言っているようだが、聞き取れない。

 ただ、意識を取り戻しているのは間違いなさそうだが……。


「こんな奴に負けてもらっては困るな。我が力の使い方を見せてやろう」


 リオンの声が急にはっきりしたものになった。

 そして――

 ドッゴォーーン!!

 彼の闘気が瞬時に膨れ上がり、周囲の海水を吹き飛ばした。


「なにっ!?」


 俺は慌てて距離を取る。

 水しぶきの中、姿を現したのは――

読み終わったら、ポイントを付けましょう!

ツイート