俺は桔梗の体を堪能する。
決して、情欲に溺れたわけではない。
ただ、俺は彼女のことが大切で……。
そして、愛しく思っているのだということを、行動で示しておきたかった。
「桔梗……。いいよな?」
「う、うん……。高志くんの好きにして……」
俺は彼女の服に手をかける。
さらに深い行為に及んでいこうとした、そのときだった。
「待てぃ!!」
「ッ……!?」
「きゃっ……!?」
俺と桔梗は、その声によって我に返る。
声のした方向を見ると、そこには1人の男が拘束状態で寝転んでいた。
「お前は……雷轟!? 覗き見してたのか!?」
「ふざけるなっ! そもそも、ここは儂の私室だ!!」
雷轟は叫ぶ。
そう言えばそうだった。
ここは雷鳴流道場の敷地内であり、稽古場の奥にある雷轟の私室だ。
「仕方ない。続きは今度にしようか、桔梗」
「う、うん……」
せっかく盛り上がっていたのに、少し微妙な空気になってしまった。
まったく、雷轟にも空気を読んでほしいものだ……。
「くっ……! 貴様ら、好き放題やりおって……!!」
「いやいや、事の発端はお前らの蛮行だろうが」
「どうして流浪人風情があれほどの強さを……。計算外だった!」
雷轟が歯噛みする。
ま、彼ら視点ではそうなるか。
俺というイレギュラーな存在さえいなければ、雷轟たちの計画は成就していたはずだ。
雷轟にとってのライバル流派である武神流を潰し、その剣術を吸収する。
さらに、藩主の景春にとっての目障りな元・桜花七侍の発言力を低下させる……という一石三鳥の完璧な計画だったはずだ。
だが、俺が金剛、無月、雷轟を倒してしまったため、その計画は全て破綻してしまった。
「それほどの力を持っているのに……どうしてこれまで無名だったのだ!? 流れの侍にしても、あまりに情報が無さすぎる!!」
「ふっ。仕方ないな、種明かしをしてやろう」
俺は告げる。
奴の疑問なんて、無視しても良かった。
だが、『流れの侍がやたら強い』という噂が広まり過ぎると、俺の悪目立ちが加速する。
ここは少し釈明しておいた方が良さそうだ。
「最初俺は修行する数か月前……。桜花藩を覆う妙な妖力で妖術を阻害されていることに気付いてから城下町に来てから対抗するのに修行したんだ」
「つまり……修行したということか!?」
「その俺の師匠の武神流師範代の桔梗や師範の剣術は俺の今身に付けた武神流の技術があって妖力を封じられても俺の今の剣術の力はそれとは別の力で……」
「待て! 説明が下手すぎる! 今、登場人物が増えたのか!?」
「その真髄は剣術・妖術・闘気の3種の力があって最初俺は闘気に妖術の力を組み合わせる修行によって、闘気だけでは妖術に及ばないが武神流剣術の修行は俺の眠っていた剣術の才能を妖術の力が発動する領域に対抗する実力を持つために引き出した!」
「入ってこない……! 説明が頭に入ってこないぞ!!」
雷轟が絶叫する。
俺の完璧な説明を理解できないとは……。
雷鳴流というのは脳筋集団だったようだな。
「この説明下手め……! よくも『種明かしをしてやろう』とか言えたな!」
「いや、俺はちゃんと説明したぞ」
「どこがだ!? 何一つ説明できていないではないか!!」
雷轟が叫ぶ。
まったく、うるさい男だ……。
「続けよう。武神流剣術は最初元々武神流師範が言っていたのが……」
「いや、もう説明はいい! うんざりだ!!」
「遠慮するなって。俺は説明をするのが趣味みたいなものなんだ。最後まで聞いてくれ」
俺はその後も、雷轟に俺の事情を説明した。
もちろんフェイク情報だ。
偽の情報を流すことで、多少の時間は稼げるだろう。
桜花七侍を3人も倒した今、『目立たないまま城攻めの準備を進める』という作戦を継続するのは難しくなっている。
そろそろ、城攻めの具体的な作戦を考えていかないとな。
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