数日が経過した。
今は、ハイブリッジ邸の庭でゆっくりしているところだ。
農業改革や西の森の開発などで日々頑張っているし、たまにはこうして息抜きする時間も必要だ。
近くにはCランク冒険者の花もくつろいでいる。
「ん~。美味しいね~。このクッキー」
「そ、それは良かったですぅ。たくさん食べてくださいぃ」
メイドのリンが用意したクッキーを食べ、花は幸せそうな顔をして喜んでいる。
リンは、最近お菓子作りにハマっている。
最初は俺のために作ってくれていたようだが、最近は自分の趣味も兼ねて作るようになったらしい。
「こっちのケーキも素晴らしい。スポンジ生地がふわふわだぞ!」
「そう言ってもらえると嬉しいですぅ」
リンの作るスイーツは絶品だ!
彼女には加護(小)を付与済みで、清掃術レベル2を持っていることは確認できている。
しかし、この様子だと、料理術もレベル2ぐらい持っていてもおかしくない。
俺は紅茶も飲みつつ、お菓子を堪能する。
「本当においしいね~。のんびりできて最高~。がんばったかいがあったよ~」
花がしみじみとそう言っている。
「そうだな。俺もここ最近で一番の癒しの時間を過ごせている。ありがとうな」
「どういたしましてぇ。こちらこそぉ、いつもありがとうございますぅ」
「のんびりするのっていいよね~。ずっとこんな時間が続けばいいのにな~」
花はゆっくりするのが好きなタイプだ。
その点、上昇志向があり名誉や権力を欲する月や、寡黙ながらもちゃっかりしており金銭欲が強い雪とは異なる。
三姉妹でも、結構性格が違うのだなと実感させられる。
「俺もこういう時間は好きだな。まあ、いろんな街を旅するのも興味深いが……」
「そうだね~。花ちゃんも、たまにはそういうのもいいと思うよ~」
「わ、わたしはいつか旅もしてみたいですねぇ」
俺たちはそんな雑談をしつつ、穏やかな時間を過ごす。
しばらくして、リンはメイドの仕事に戻っていった。
俺と花は、引き続きゆっくりする。
もう成り上がりやハーレムは十分だ。
こうして余生を過ごすのも悪くない。
……と言いたいところだが、そうもいかない。
30年後……いや、正確に言えば28年後に世界滅亡の危機が訪れるからだ。
それに立ち向かうために、加護の対象者をガンガン増やしておいた方がいい。
当面の目標は、ミッションを達成して加護(微)を開放することだ。
そのためには、あと1人の加護(小)の対象者を得る必要がある。
リンには既に付与済みだ。
ここは……。
「なあ、花。ここ最近はこのラーグの街を拠点に活動してくれているが、今後もしばらくここに居てくれるのか?」
「うん。もちろんだよ~! ここでの生活は楽しいから好き~」
花は嬉しそうに答えてくれた。
「そうか。では、少しお願いがあるんだが……」
「何? タカシさんの頼みなら、前向きに考えてあげるよ~」
「実は、花の事をもっとよく知りたいと思ってるんだが……。今夜、俺の部屋に来ないか?」
ちょっとダイレクト過ぎたか?
だが、花は以前から俺の妾に立候補しているしな。
単刀直入に聞くのがいいだろう。
「えっ!? タカシさんの部屋に? それは……その……あの……」
花は顔を真っ赤にして俯きながらモジモジしている。
あれ?
意外だな。
てっきり喜んで飛びついてくると思ったのだが……。
「駄目か?」
「う、嬉しいけど~。まだ心の準備が~」
恥ずかしそうに照れている。
「ああ、無理しなくていいぞ。いきなり部屋に来いなんて言われて困るのは当たり前だからな」
「ち、違うよ~。別に無理とかじゃなくって、ただびっくりしただけだよ~。花ちゃんの悠々自適ライフのためにも、ここは踏ん張りどころだよね~」
花がやや慌て気味にそう言う。
「そうなのか? それなら、よろしく頼むぞ」
悠々自適な生活を送るために、貴族である俺にその身を差し出す。
もっと自分の身は大切にしろと言いたいところだが、その相手が俺なのだから俺からは何も言えない。
まあ、彼女の忠義度も30台後半なので、別にお金や地位だけが目的というわけでもないはずだ。
世界滅亡の危機に立ち向かうという大義名分もあることだし、おいしくいただいてしまって問題はないだろう。
……と、そんなことを考えつつ、夜を迎えたのだが……。
「あうう……。や、やっぱり緊張するね~」
花が顔を真っ赤にしてそう言う。
「そんなに固くならないでくれ。別に乱暴するわけではないのだから」
しかし、やはり意外だ。
花がここまで緊張するとは。
普段の泰然自若とした態度からは想像できない姿だ。
堂々と妾に立候補するぐらいだから、てっきり経験豊富なのだと思っていたが。
「さあ、スカートを脱いでもらうか」
俺はそう言いつつ、ベッドの上で花を押し倒すような体勢になる。
「わ、わかったよ~。よ、よーし、やるよ~!」
花はやや上ずった声でそう言って、おもむろに自分の服に手をかける。
そして、一気に脱ぎ去った。
「おお! 素晴らしい!!」
花はその大きな胸と綺麗な肌を露わにしている。
俺はその姿を見て、思わず声を上げてしまった。
彼女は俺の視線を感じて、やや頬を赤く染めている。
そんな花が可愛らしい。
俺のマグナムがビッグマグナムになっていくのを感じる。
気配を感じ取ったのか、花の視線が俺の股間に向かう。
「え? わ、わわわ……。こんなに大きくなるの~?」
「そうだ。これが男のモノだ。花も見たことあるだろう」
「な、ないよ~……。見たことない。こ、こんなに大きいとは思わなかったよ~」
花は若干引きつっている。
まさかの未経験だったとは。
重ねて言うが、意外である。
畑で俺がスカートの中を覗いた際にも、さほど動じた様子はなかったのに。
「ふふふ。このビッグマグナムが、花を気持ち良くさせてあげるのだ。楽しみにしておけ」
俺はそう言って、モノを強調するように仁王立ちする。
そして、彼女の頭に優しく手を添え、こちらに誘導した。
まだ慣れていないようだし、焦らずゆっくりするのがいいだろう。
俺はそう思った。
しかし……。
「や、やっぱりダメ~!!」
ドゴオン!
花の強烈なパンチが俺のモノに直撃した。
「ぐはあっ!?」
あまりの痛みに、俺は倒れ込む。
「な、なんで……」
「そ、それは……だって……。ご、ごめんね……」
花は真っ赤になりながらそう言う。
半べそになっている。
どうも、彼女には早すぎたようだ。
「すまん……。急かしすぎたな。俺が悪かった……」
俺は倒れ込んだ状態のまま、そう謝罪する。
「ううん。元はと言えば、花ちゃんが誘っちゃったんだもん。タカシさんが悪いわけじゃないよ」
確かにそうだ。
ハイブリッジ杯の頃から、彼女は妾に立候補していた。
てっきり、彼女もその気なのだと思っていた。
まさか、こんな反撃をされるとは。
「いや、俺がもう少し気を使っていればよかったんだ」
妾に立候補している者だからといって、好きに襲っていいわけではない。
やはり、1人の女性として尊重し、大事に扱わなければならない。
そんな当たり前のことを、俺は忘れていた。
「ううん……。ごめんね。花ちゃんが悪いんだよ。きっと、次はちゃんとするから……」
「焦る必要はない。いつまでも待つ。それに、妾云々は別としても、花の能力には助けられている。好きなだけハイブリッジ邸でゆっくりしてくれればいいさ」
俺はモノの痛みに堪えながら、キメ顔でそう言う。
そうして、花との初めては失敗に終わったのだった。
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