「はぁ、はぁ……。ここまで来れば……」
私は森の中を走る。
森は危険なところだ。
大人でも入っちゃいけないと言われている場所もある。
山菜採りや小動物の狩りをする時も、行動範囲は限られていた。
「これからどうしよう……」
私は、そのまま少し開けた場所に出た。
そこには泉があった。
「……きれい」
私は思わずつぶやく。
森にこんな場所があったなんて……。
泉の水面は、キラキラと輝いている。
「お母さんもいっしょに来たかったな……。うぅ、お母さん……」
私は思わず涙ぐむ。
そんな時だった。
ゴポッ……!
「きゃっ!」
私は思わず、飛び上がってしまう。
泉の水面が膨れ上がったのだ。
バシャアッ!
そして、何かが泉の中から飛び出してきた!
「な……なに!?」
それは、魔物だった。
スライム状の魔物が、泉の中から現れたのだ。
「きゃあああっ!」
私は叫ぶ。
慌てて逃げようとして……転んでしまった!
そんな私に、スライムが襲い掛かる!
「あ、ああっ! そこはダメぇ!!」
私の服の中に、スライムが入り込んで来る。
そして、私の胸やお股を這いずり回る。
「いやああっ! やめてぇっ!」
私は叫ぶが、スライムは離れようとしない。
私の体を包み込んでいく。
「んんっ……! くぅっ……!!」
私は必死に抵抗するけど、スライムの勢いが強く、引き離せない。
それどころか、徐々に服を溶かされ、裸にされていく。
「いやぁ……誰かぁ……!」
スライムはどんどん私の中に入ってくる。
そして、ついには顔まで覆いつくした!
「んんーっ! んぐぅっ!!」
もう息もできない。
苦しい……。
誰か助けて……。
「んんーっ! んんーっ!」
私は必死にもがくが、スライムは離れてくれない。
もうダメ……。
私なんかじゃ何もできない……。
そう思ったときだった。
「……あれ?」
いつの間にか、体からスライムの感触がなくなっていた。
私は恐る恐る目を開ける。
すると、そこには私の前に佇む1人の男の姿があった。
「ふむ……。俺の魔力に驚いて、飛び退いたか。スライムにも多少の知能はあるようだな」
その男の人が何かをしてくれたみたいだ。
スライムは私から少し離れたところにいた。
彼は、スライムに対して静かに刀を構える。
そして……スライムを一刀両断した!
「あ、あなたは……?」
私は思わず尋ねる。
彼は刀を収めた後、静かに答えた。
「俺か? 俺は……高橋高志。流浪の侍だ」
それが、私と高志様の出会いだった。
***
「初めて見る魔物だったが、特に苦戦するような相手ではなかったな」
俺は刀を収める。
スライム状だったので、物理攻撃が効かない可能性もあるかと思っていたのだが……。
特にそんなことはなく、普通に倒すことができた。
「さて……。さっきも名乗ったが、俺は高橋高志だ。君は?」
俺は泉に視線を移す。
すると、そこには少女がうずくまっていた。
「……紅葉です」
「もみじ? ……ああ、紅葉か。きれいな名前だな」
俺は彼女の名前を呼ぶ。
少女はうなずいた。
どうやら、言葉は通じるようだ。
「どうしてこんな森に1人で?」
「それは……」
少女は言葉に詰まる。
俺の質問に答えたくなさそうだな……。
まぁ、人には言えないこともあるか。
「ああ、別に無理に答えなくていいさ。ただ、こんな森に1人でいるのは危険だ。村まで送ってあげようか?」
「む、村には帰りたくありません……」
少女は言う。
その表情は暗いものだった。
「ふむ……。何かあったのか?」
「えっと、その……」
少女の表情がさらに曇る。
そして、少し経ってから静かに語り始めた。
「……私の村には、村長の息子がいます」
「村長の息子……。そいつは、君の恋人か何かだったり――」
「おらおらっ! こんなところにいたか! 見つけたぞ、紅葉!!」
「む?」
俺が少女と話していると、そんな声が聞こえてきた。
声のした方を見ると、そこには一人の少年が立っていたのだった。
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