【コミカライズ】無職だけど転移先の異世界で加護付与スキルを駆使して30年後の世界滅亡の危機に立ち向かう

~目指せ! 俺だけの最強ハーレムパーティ~
猪木洋平@【コミカライズ連載中】
猪木洋平@【コミカライズ連載中】

1724話 漆刃(うるは)

公開日時: 2025年4月21日(月) 12:10
文字数:1,203

(虚空島の下に広がる山脈へ、桔梗を向かわせるべきかどうか……)


 今、桜花藩の外で動かせる人材には限りがある。

 景春と早雲――それぞれ力量として申し分ないが、藩外での運用となるとどうしても制約が多い。

 桜花七侍の面々も便利ではあるが、彼らを藩外で単独行動させるには、まだ忠義の度合いに一抹の不安がつきまとう。


 そうした制約の中で、能力と忠義度の両面から信頼できる者は、やはり紅葉、流華、桔梗の三人に絞られる。

 紅葉の冷静沈着さ、流華の柔軟な対応力、桔梗の圧倒的な戦闘安定性――いずれもが、今後の局面において鍵となる。


 次点は無月だ。

 彼女の身のこなしには、忍としての研ぎ澄まされた美学すら感じられる。

 そしてその配下たち――幽蓮、黒羽、水無月。

 彼女たちもまた、若手の中では確かな腕を持つ忍者であり、流華と共に修行で汗を流してきた仲間たちだ。

 その結びつきには、簡単には揺るがない信頼が宿りつつある。


 ――余談だが、今の彼女たちには、かつてのような暗殺任務は課していない。

 善意からの判断ではない。

 俺の呪い――それが理由だ。

 あるとき、他藩の要人暗殺を命じようとした瞬間、心の内に突如として湧き上がった強烈な抵抗感。

 それは、配下への暗殺命令を取り消すには十分すぎるほどの力だった。

 直接的な戦闘で命を奪えぬのはこれまでで分かっていたが、どうやら間接的な殺意にもまた、何らかの制約がかかっているらしい。


 もちろん、それでも命じようと思えばできたかもしれない。

 しかし、そこに無理を通すほどの理由はなかった。

 俺のチート能力と、有能な配下たちの戦力をもってすれば、近麗地方の統一など時間の問題だ。

 詳細がよく分かっていない謎の呪いに対して、わざわざリスクを犯す必要はない。


 それゆえ、かつての暗部組織『闇忍』は解体された。

 代わって、新たに生まれたのが諜報専門の『漆刃(うるは)』。

 構成員は同じ。

 無月を筆頭に、かつての闇忍たちがそのまま名前を変えただけの組織。


 だが、名を変えることで、人は変わる。

 変わったと思い込むことで、重ねてきた罪から距離を取る。

 それでいいのだ。

 単なる戦術の選択ではなく、気持ちの問題だ。


 ――話を戻そう。


 翡翠湖への派遣は紅葉に決定した今、虚空島の探索任務には桔梗、流華、無月のいずれかが現実的な選択肢となる。

 山脈地帯に隠された神社あるいは迷宮の発見――それが今回の任務の核心だ。

 形式上は他藩への潜入にあたるが、山中にまで天上人の影響力が及んでいるとは考えにくい。

 最大の脅威は、大自然の脅威、そして妖獣ぐらいなものだろう。


 その点を踏まえると、今回の任務には安定した近接戦闘力こそが求められると言える。

 流華や無月の潜入能力も魅力ではあるが、剣術レベル5の桔梗こそが最適任だ。

 彼女の刀が振るわれるとき、敵は一太刀のうちに沈むだろう。


「分かった、桔梗に任せよう。補佐役は考えているのか?」


 俺はそう問いかける。

 彼女は確信を宿した頷きを見せた。

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